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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
生徒会の野良アプリ対策開発
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コミュニケーションスキルでは権力には歯向かえない

更新遅れました

 きつねに指示された三人のうち、二人まではなんとかろうらくできた。


 コミュニケーションスキルが皆無な俺としては凄いことではないだろうか。そして、残りの一人が藤田博子という女の子だが、きつねの調べでは桜千住学園の生徒ではないという。


 ならば、なぜ桜千住学園でユリ動画なんか見ているのか、俺としては謎なのだが、考えて他人の気持ちがわかるならコミュニケーション障害を自称しないわけであり、実際にあってみようと思ったわけだ。


 状況を考えると、こいつが犯人で間違いなさそうなのだが、きつねは最後に会うように指定してきた。


 俺は言われた通りやっているだけだが、どうやらここまではうまくいっているようだ。


 そして、どうせこいつも寂しいだけだろう。と当たりをつける。


「しかし、名門の松林原学園の子が異端児揃いの桜千住学園に来るのか」


 桜千住学園には特殊な才能を有した生徒が多い。


 龍ヶ崎を見ればわかると思うが、一般の学校では受け入れてくれないような子供を受け入れることがほとんどだ。


 先生たちもかなり先進的な考えの持ち主が多い。そうでなければ、学生に基幹システムを作らせたりしないだろう。


 対して松林原学園はかなり優秀な生徒が集まる。学業はもちろんだが、部活動も普通の学校にあるような真面目なものばかりで、桜千住学園のように「図書部」とか「風紀部」とか、それって委員会活動じゃないの?というものは含まれていない。


 俺は現時点で嫌な予感しかしなかった。何せ名字が「藤田」なのだ。その名字を名乗っている人と言えばコンピュータ同好会の創始者以外におらず、どう考えても関係者なのは間違いない。


 藤田さんが何歳なのか知らないが、鳳さんが知っているぐらいなのだから、鳳さんとそんなに年は離れていないはずである。


「ということで、なぜか区の図書館に着いたわけだが、本当にこんなところにいるのだろうか?」


 区の図書館はどう考えても学園の図書館よりヘボい。うちのよりヘボいのだから、松林原学園の図書館なんかと比べたら犬小屋ぐらいの勢いだろう。


 しかし、きつねの情報によるとこのボロい図書館で勉強しているらしいのだ。


 ますますボッチの可能性が高くなってきた。


 図書館に入り受付をしようと思ったが、どうやら誰でも自由に使えるらしく、受付がなかった。


 図書室の中にはいる。


 中には小学生らしき女の子がひとりしか居なかった。


 メガネをかけてツインテールなので、紀子を思い出す。紀子も小さい頃はツインテールの美少女だった。高校生にもなった今は痛いだけだが。


 あの子で間違いないと思うのだが、否定されたり間違っていたらどうしようと考えると、話しかけるのを躊躇する。


「あの……」


「なんですか?」


「藤田博子さんで間違いないよね?」


「誘拐?」


「違う。桜千住学園でしでかしたことについて聞きたいんだ」


 相手の弱味を殴る。これは交渉の基本だと本に書いてあった。読んだときは意味がわからんし、それはボクシングじゃないのかと思ったが、今なら分かる。俺は確実にこの少女の弱点を殴っている。


「いいでしょう」


 しかし、博子は余裕の受け答えだった。


「まず確認したいのは藤田守という名前の血縁者がいる?」


 博子は眉をしかめた。


 そりゃ、桜千住学園の中でしでかしたことに藤田さんは含まれていないだろう。しかし、恐らく鳳さんの会社の重役である可能性が高い以上、血縁者に対して失礼があった場合、俺がアルバイトを続けられなくなる可能性が高い。


 それだけは避けなくてはならない。


「叔父です」


「なるほど。叔父さん」


「叔父に言いつけるつもりですか!?」


 博子はいきなりの喧嘩腰だった。ここまで急に態度が変わるということは藤田さんにバレると不味いことがあるのだろう。


 俺は認識を改めた。


 もう少し強気に出れそうだ。


「俺は叔父さんが設立したコンピュータ同好会のものなんだけど」


「知ってます、クズでしょ」


 おおう。いきなりの反撃。


「叔父が設立した名誉あるコンピュータ同好会を辱しめる奴の筆頭じゃない」


 ぐげげ。筆頭は部長だろ?


「だいたい、あんたが変なことをするからコンピュータ同好会が滅亡の憂き目にあっているんじゃないの!」


 俺はまったく関係ないと思っていたこの少女が今回の騒動の中心人物なんだと、やっと理解した。


「コンピュータ同好会が滅亡の憂き目にあったのは、俺ではないのだが。むしろ俺が救ってやった方だぞ」


「知ってるんだから。生徒会に目をつけられて他の同好会には出ている部費を出してもらえなくなったんでしょ?」


 ものすごい正解な指摘だ。


「しかも、今だって会計の人の忠告を聞かずにコンピュータ同好会の予算を守ろうともしてないでしょ!」


 うわあ。もうダメだ。ものすごい正論である。今の俺はコンピュータ同好会なんか割とどうでもいい。


「あと、叔父の会社でアルバイトしてるのもしってるわよ」


 博子はニヤリ笑った。もちろん小学生らしくはなくった。

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