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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
生徒会の野良アプリ対策開発
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モデルという職業は精神を病むのではないか疑惑

 商店街の路地を少し入ったところにまりなオススメの喫茶店はあった。


 流行りの喫茶店と異なり、静かな雰囲気だ。カウンターにマスターらしき人が一人いるだけで、店の中に人が見当たらない。


「ここなら他に人はいないし、落ち着いてお話しできますよ?」


 まりなはなれた様子で喫茶店の扉を開けてはいると、「マスター! コーヒーふたつ!」と早速俺の分まで注文した。


 ひとの分まで注文するなんて、なんてリア充力なんだ! 俺がコーヒー飲めないとか考えないのか!


「先輩はコーヒー飲めましたよね?」


 飲める。たしかに飲めるのだが、なぜそれを知っている?


「飲める」


 疑問を解消するよりもなるべくリア充と関係を持たないように消極的な返事をする。


「ふふふ。ここのコーヒーはおいしいんですよ! なんと言っても小学生のまりなが飲めるんです!」


 ガチャーン


 マスターが同様してサイフォン落としたぞ。お前が小学生だと俺が困るから一般人には分かりにくい初等部と名乗れ。


 もちろん、心の中だけで言う。


「それで、まりなに何を聞きたいんですか?」


「お前は忙しいから知らないかも知れないが、今学園では野良アプリが生徒のスマホに感染しまくって、スパムを送りまくっている」


「そうなんですか……」


 あれ、この反応の無さはなんだ?


「お前も噛んでるんだろう?」


「いえ、学園の裏サイトの運営ならしてますけど、アプリなんて全然知らなかったです」


「そのアプリを使ってあることないこと、噂を流していると聞いたぞ」


 正確には違うのだが、かまをかけてみよう。


「そんな難しいことがまりなにできるわけないじゃないですか」


 まりなは普通に頭良さそうに見えるのだが、コミュニケーションスキルがない俺には演技かどうか見分けがつかない。


「どう見ても頭いいだろ」


 俺が心にもないことを言うと、まりなはすっと真顔になった。


「なんで気がついちゃったんですか? うちのお兄ちゃんにも気がつかれなかったのに」


 部長は俺に輪をかけてコミュニケーションスキルがないから、もし騙していたのなら一生だまし続けることが出来ただろう。


 俺だって適当なことを言ったらたまたまあたっただけだし。


「まあ、仕方ないですね。アプリは私がやりました。もちろん、作ったのは私じゃないですよ? 知り合いです」


 ちょっと心配になるぐらいの変わりようだ。はすっぱな感じがよく似合っている。


「なら、アプリを消してくれ」


「いやです」


 まりなの顔は本気で断ろうと思っている顔には見えなかった。なんか寂しくて誰かの気を引きたいときの紀子を見ているようだ。


「なら別の話をしよう。まりなはアンや椿と仲直りしたいとは思わないか?」


「思いません。保先輩。考えて見てください。私たちが理科準備室で風紀部に捕まったとき、あの二人は助けてくれませんでしたよ? 恨みさえすれ、仲直りしたいと考えると思いますか?」


 聞いていた話と違うのだが、これはツンデレというテンプレートでいいんだろうか?


「じゃあ、仲直りしたくないと?」


「そうです。他の二人がなんといったか知りませんが、私はアンと椿とはもう絶交だと思っています」


 なるほど、友達が多そうなまりなならではの考え方だな。俺だったらそう簡単に絶交なんて言えない。そもそも絶交する友達がいないからな。


「話はそれだけですか?」


 それだけではないのだが、なんか話を聞いてくれるような雰囲気ではなくなってしまった。


 そこにマスターがコーヒーを持ってくる。コーヒーの香ばしいよい香りがする。凄い腕前の持ち主だな。


「どうぞ、ごゆっくり」


 そういうとマスターはまたカウンターの中へ戻っていった。


「とりあえず!コーヒーのむか」


「そうですね」


 俺が一口すすると、口のなかいっぱいに豊かな風味が広がった。これは生クリームや砂糖で華美に装飾されたシカゴコーヒーとは違う、日本の古き良き伝統のコーヒーだ。


 最近ではアメリカに逆輸入されて、それがチェーン店になって日本に帰ってきたとか。


 そして、お値段が安い。


「これは上手いな。俺もここを行きつけにしてもいいか?」


「でしょ? 仕方ないから常連になってもいいですよ」


 まりなの許可は必要ないとはわかっているが、ここで許可してもらわないとものすごく来にくいからな。助かった。


「保先輩は味がわかる人で良かった」


 何がよかったか知らないが、少しは機嫌がなおったようだ。


 俺はもう少し話をできるなと思った。

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