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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
生徒会の野良アプリ対策開発
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泣いた我孫子

 ――放課後、体育館裏に恋


 というメールを受け取った。最初は体育館裏に恋人同士(リア充)がいるから爆発しろ!という意味かと思ったが、「来い」の誤変換だと気がついた。

 一気に本文の意味が変わる誤字である。ちなみにこのメールは我孫子からいただいた。


 紀子が生徒会長を辞め、誰が引き継ぐかという議題になったとき、我孫子以外の役員は全員辞退したのだそうだ。

 なんでも、そこまでの内申点はいらないとか。


 そして、我孫子は生徒会長兼会計という我孫子以外の全員が嫌がる仕事をやることになった。


 スーパー優秀な我孫子は紀子の代わりに生徒会長業務をこなしているらしい。あの紀子が出来ていたぐらいである。我孫子なら余裕であろう。


 紀子は鳳さんの会社に頻繁に来るようになった。神絵師として順調なキャリアを進んでいた。それでいいのかどうか知らないが、紀子がいいならいいんじゃないだろうか。


「しかし、我孫子はこんな呼び出しメールで俺が行くと思ってるのか」


 行くわけがない。


「今日は確かミニゲームのブレストだったな」


 最近では俺も重要な会議というか、アイデア出しの場に出してもらえるようになった。俺の職種はPMOなので、クリエイティブな仕事は回ってこないのだが、あまりにも覇気が見えなくなった俺を見て、鳳さんが気を使って参加させてくれるようになったのだ。


 アルバイトがものすごい楽しみになった。クリエイティブな仕事というのは相手との頭脳戦である。どちかが優秀なアイデアと実現可能性が高いか競いあうのである。それは全部の駒の性能を知りつくし、すべての可能性を探った上で最高の手を打つ。これに勝る喜びはなかった。


 俺が学校から帰ろうとすると、校門で我孫子が待っていた。


「なぜここにいる?」


 一応聞いてやる。なんてやさしいんだ。


「体育館裏に来いと言えば絶対に校門を通ると思ったからだ」


 くそ。裏をかいたつもりが裏の裏をかかれてしまった。


「なんの要件だ? 俺はバイトに遅れるわけにはいかないんだ」


「歩きながら話そう」


 これだからコミュニケーションスキルが高い奴は困る。


「今、この学園で野良アプリが流行っているのは知っているか?」


 俺が無視して帰ろうとすると、我孫子は当然のように俺のとなりで話しかけた。


「知らん」


「その野良アプリだが、どうもチェーンメールの送信を行っているようなんだ」


「削除させろ」


「図書部の受付アプリを使って呼び掛けているが一向に収まる気配がない」


 危険性を示唆しても消えないなんて、どうやっているか知らないがすごいアプリだな。


「そんなん、俺にどうしろと?」


「企業にも依頼するつもりだが、緊急性を要するのだ」


「チェーンメールで何か被害でも出ているのか?」


「直接的な被害はない」


「じゃあ、放っておけよ」


「それが、流されている噂が問題なんだ」


「噂?」


「僕と宗川が恋人同士だというものだ」


「放っておけよ」


 俺は二次元が恋人なので、リアルで誰と噂になろうとも構わん。

 大体、野良アプリまで、つくって流す噂かよ。


「そうなんだが、宗川と恋人同士だから予算に便宜を図っていると流れているんだ。このままではコンピュータ同好会の予算を維持できない」


「なんでだよ。正当な手続きに乗っ取って予算貰ってるだろ?」


「あれは月次の時限立法になっている。正式な取り決めにするには来月の予算会議で通さなければならない。それまでは毎月生徒会長の承認が必要になる。今までは清華さんがやってくれていたが、今回は僕が承認することになる。そうなると前の話に繋がるんだ」


 コンピュータ同好会に特別な便宜を図っていると言われると、我孫子は時限立法を承認しにくいのだろう。

 しかし、それは今さらだろう。紀子は俺の幼なじみで、しかも俺のことを好きだと公言してあるいていた。まあ、コンピュータ同好会を潰そうとしていたけどり

 あとはコンピュータ同好会の予算を狙った話にしては手が込んでいる気がするが、最近風紀部の手伝いをしたばかりだからな。誰から狙われているかわからん。


 しかし、コンピュータ同好会などどうでもいいのだ。何しろ俺にはアルバイトがある。


 最初はコンピュータ同好会の活動費の足しにしようと思って始めたアルバイトだったが、今はこちらの方が重要だ。


「一応、忠告はしたぞ。今月末が期限だからな」


 まあ、つぶれたところで部長は俺ではない。何が困るということもなかろう。


 そう結論付けた。


「我孫子はコンピュータ同好会が潰れてもいいと思っているのだろう?」


 俺がそう訪ねると我孫子は首を横に振る。


「ここ最近のコンピュータ同好会の実績はかなり評価できる。このまま潰してしまうにはおしい」


 意外な言葉が帰って来た。


「それに清華さんはコンピュータ同好会に入ったのであろう? 潰したとなれば嫌われてしまう」


 珍しく正直な気持ちを吐露する我孫子に、俺は紀子がエロゲのイラスト描いていることを伝えたくなるが、辞めておいた。もしかしたら、我孫子は激おこになるかもしれん。


「まあ、気にするな」


 俺は言葉を濁して我孫子と別れた。

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