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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
風紀部の防犯システム開発
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PMOというお仕事

 最初の仕事はエロゲとか関係なかった。いや、関係あると言えばあるのだが、未完成の仕様書や設計書を見つけて、どれが最新か確認するだけのお仕事だった。


 どちらが新しいか判断出来ないときは、差異を抽出し、鳳さんに判断を仰ぐのだ。


「本当はプロジェクトが終わってからやることじゃないんだけどね……」


 申し訳なさそうに言っているが、俺は気分があがっていた。


 なんと、「はじめてのおにぃちゃ」の資料なのだ。


 どうやら「はじめてのおにぃちゃ」は鳳さんの会社が開発していたらしい。そして、前作の成功を受けて次回作を作るらしい。


 次回作の仕様書や設計書を書くに当たって、前作の仕様書や設計書は非常に重要なんだそうだ。


 以前のゲームがどうなっていたか調べるのにゲーム本体やプログラムのソースコードを確認するには時間が掛かりすぎる。しっかりと整理された仕様書や設計書は短時間で欲しい情報を引き出せるから、これがあるとないとでは開発スピードは雲泥の差なんだとか。


「流石に多いですね」


 神パッチが出た後の状態で設計書は書かれていた。


「神パッチはやっぱり公式で出したんですか?」


 たぶん否定されると思ったけど、鳳さんに聞いてみた。


「神パッチ……?」


「あれ、鳳さんは知らないんですか? ネットに『はじめてのおにぃちゃ』のパッチが流出していて、それを当てるとルートが分岐するようになるんですよ」


「え……知らなかった」


 この反応はマジだ。なんとなく言ってはダメなことのような気がした。


「公式で出したわけじゃないと思うよ」


「そうですか。鳳さんが知らないんじゃ、そうですよね」


 俺は資料の整理に集中する。


「それにしてもみんな仕事早いね。資料の整理に二週間はかかるかな?と思ってたけど、夕方には終わりそう」


 資料の整理では紀子が大活躍していた。


 生徒会長だからか、資料にざっと目をとしただけで、新しい順に並べてしまったのだ。


 あとは新しいものから順に見ていけば更新は楽だった。


「そしたら、明日は新しいチーム分けにするね」


 ついに来たか!


 俺はどの仕事に回されるのかドキドキしていた。できればエロゲをしたい。一日中エロゲをしていても怒られない仕事をしたい。


「まずハナちゃんはプログラマ班ね」


「はいなのよ?」


「きつねちゃんはPR班」


「拝命いたします」


「紀子ちゃんはデバッグ班」


「デバッグ?」


「ゲームをして不具合がないか確かめる仕事だ」


 俺はぶっきらぼうに説明する。俺がやりたかった……。


「宗川くんはPMO(ピーエムオー)ね」


「PMO?」


 今度は俺が説明を求める番だった。


「プロジェクト・マネジメント・オーガニゼーション。プロジェクトマネージャーが問題解決するのを手助けするチームだよ。とは言っても、うちの会社ではプロマネのヘルプとしての雑用係という面が強いけど」


 プロマネというと鳳さんのことだ。鳳さんのお仕事を手伝うということか。


「宗川くんは前作に詳しいみたいだし、前作がどうなっているかを調べるのを手伝ってもらったりするね」


「はい」


 エロゲをする仕事ではないようだが、プロマネの仕事を手伝うということは、色々な仕事のチェックをのぞけるということでもある。つまり、エッチシーンのラフ画から完成まで順を追ってみることができるということだ!


 それはそれで楽しみである。


「あの?」


 紀子が手を挙げた。


 鳳さんが続きを促す。


「私、イラストの方が得意なので、イラスト班?というのがあればそちらの方がいいです」


「え? いいの?」


 俺も驚きだった。絵が得意なのは知っていたが、まさかエロゲのイラストを描きたがるとは。


「はい」


 紀子は何の迷いもなく答える。


「じゃあ、イラストは原画・背景・イベントCG・キャラと4つ班があるので、とりあえず背景班のお手伝いをお願いします」


 鳳さんはナイスな采配をした。


「わかりました」


 紀子はちょっと嬉しそうだった。


「じゃあ、今日は切りのいいところまで作業したらおしまいにしていいよ。タイムカードをついて帰ってね」


 鳳さんが締めくくると俺たちは残された作業を片付け始めた。

 


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