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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
図書部の受付システム開発
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コンペティションは蜜の味

 今日も図書受付システムの打ち合わせをするために、我々の部室に行くと、部室から女子が出てきた。制服からすると中等部のようだ。初等部から高等部まで同じキャンパスにあるので、様々な年代の児童や生徒が行き交うとはいえ、それは違和感があった。

 俺が訝しみながら部室のドアを開けると、部長がただ一人、椅子に座って呆けているだけだった。いつもはこんなだらしない顔はしない。そして、どことなく幸せそうな顔をしていた。


「部長、どうしたんですか?」


「宗川くん」


「はい」


「君は運命を信じるか?」


 気持ち悪いことを言い始めた。これはオタク特有の何かにはまったときの症状だ。


「なんの運命なのか詳しく定義してもらえます?」


「恋、恋だよ!」


 すごい形相で俺の肩を揺さぶる部長。びっくりしたあまり俺はアッパーカットをお見舞いしていた。すっとぶ部長。眼鏡もいい具合にすっ飛んだ。


「彼女はすごいやさしいんだよ。こんな(それがし)なんかの手を握って『素敵です』と言ってくれるんだ」


 おいおい。誰だよ。どう考えても部長を騙す気満々じゃないか。部長のどこをどうとったら素敵に見えるっていうんだよ。

 まあ、部長をだましたところで何か得があるとは思えないけどな。


「はいはい。どうでもいいんで、ハナ様が来る前にアプリ部分の打ち合わせしましょうよ。我々がJCを出し抜くにはその機能しかないんですから」


 部長がアプリを作れるということで、よくあるバーコードリーダーによる管理を取り入れようとしていた。特に本のタイトルのデータベースを手で入力するのは無理があるため、バーコードを読み取ってインターネット上にあるデータベースからデータを取得して使うことにしたのだ。

 同時に生徒にもアプリを配ってQRコードを表示させ、本の貸し出し管理や返し忘れの通知ノーティフィケーションに使う。

 我々は月額三万円に見えるように機能を追加していくことにしたのだ。この時は、これが最善だと思っていた。月額三万円が用意できなければ我々の部室はなくなってしまうのだからと、視野狭窄に陥っていたのだろう。




 なかなか忙しく準備を終え、ついにコンペの日が来た。今日の放課後に図書受付システムをどちらに開発してもらうかが決まるのだ。

 正直、自信はある。中等部女子コンピュータ部で作る予定のシステムを上回る機能を搭載したシステムの提案なのだ。あっちが量産型汎用機(ザク)だとしたら、こっちは指揮官用専用機(シャアザク)ぐらいの違いはある。


「中等部の女子コンピュータ部の方たち、遅いですね」


「まだ15分はありますよ」


 コンペ会場となる教室にはすでに生徒会から紀子と我孫子が、図書部から部長の木本さんが、我々の中から部長と俺が来てスタンバイしていた。3Dエロゲのために買ったハイスペックなノートパソコンを持ってきて、今日はこれでプレゼンテーション資料をプロジェクターで投影しながら説明する予定だ。


「遅れました!」


「すみません!!」


 開けっ放しのドアから中等部の女子が二人、顔をのぞかせる。一人はこの前会った妹川で、もう一人はどこかで見たことがあるような子だった。


「じゃあ、準備して。くじ引きで女子コンピュータ部から発表するということになったから」


「はい!!」


 俺の知らない方の女子が返事をした。状況からすると、こっちが姉葉さんなのだろう。さて、いよいよだ。我々の聖域(サンクチュアリ)を守る戦いの第一歩が始まる。

 気合を入れる横で、姉葉さんを見て部長の顔色が悪くなるのを俺は気が付かなかった。


「まず、はじめに今回図書部のシステムを担当するメンバーを紹介します。システムの相談にのるコンサルタントの姉葉とも子です」


「プロジェクトのマネージメントをする妹川朝臣(あさおみ)です。よろしくお願いします」


 妹川はちらっと俺の方を見ると、えへへと笑った。敵同士だというのに緊張感のない子だな。それに比べると、姉葉さんの方はキリっとして、できる子って感じだ。木本さんも自分に似た雰囲気を感じ取ったのか、親近感が沸いているようだ。


「私たちの提案する図書部の受付システムですが、大きな特徴はクラウド上にデータを保管し、どの端末からでも貸出・返却・登録・削除・編集を可能にします」


 妹川さんから聞いた通りのシステムだ。我々の提案するシステムにはこの先がある。これは勝てる!と思った時だった。


「さらに」


 姉葉さんの言葉が続く。そして、我々の部長の方を見た気がした。わずかに口元が上がっている。


「スマホアプリによるバーコード読み取り機能で、登録時のデータをインターネット上のデータベースから取得、貸出・返却などの操作は生徒のスマホにインストールしたアプリでバーコードを読み取るだけで完了します」


 木本さんが「すごい」とつぶやく。俺はそのつぶやきを聞いて苦々しい顔になった。このアイデアは俺が部長に説明したものとまったく同じものだったからだ。部長の方を見ると、青い顔をして姉葉さんを見ていた。姉葉さんはドヤ顔で胸を張っていた。

 俺は気が付いてしまった。気が付かなかった方が幸せだったのだろうが、気が付いてしまったのだ。

 部長が姉葉に我々のシステムの情報を漏らしてしまったのだ。あの気持ち悪い部長を思い出すと、どう考えても色仕掛けで迫られている。


「ということで、このシステムの開発期間は約半年です。メンバーは私のほかに二人プログラムを作成する人がいます。ただ各々の機能は段階を追って使えるようにいたします。具体的には二か月ごとにバージョンアップしていきます」


 どうしようか対策を考えているうちに、妹川さんがまとめに入っている。


「月額利用料は、木本先輩に確認したところ三万円でよいということでしたので、このような大きなシステムを提案できることになりました。長い時間をかけて開発するのは初めてなので至らない点もあると思いますが、良いものを作っていきますのでよろしくお願いします」


 姉葉が締めくくり、二人が頭を下げる。

 俺は対策が立てられないまま、発表の順番が来たことでお腹が痛くなってきた。


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