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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
風紀部の防犯システム開発
39/65

アルバイトというものをしてみるなり

「みっともないところを見せてしまったようでお恥ずかしい」


 マンガ喫茶でシャワーを浴びてさっぱりした鳳さんはもうシャキッとしていた。

 目の下に隈がある。すっぴんのようだ。

 だからと言って、先程までのヤバい感じはなく、いつも通りの鳳さんに見えた。


「今日は10時に電気街口でハナちゃんと待ち合わせなんだよね。宗川くんはどうして朝早く秋葉原にいたの?」


「ハナ様の紹介でエロゲのお仕事をすることになってまして」


 そこまで言ったところで鳳さんが固まった。


「え? ハナちゃんの彼氏って宗川くんのことだったの?」


「え? あ、はい」


 そういえば、そういう設定だったことを思いだし、うなずいた。


「そ、そうなんだ。そうだよね? ハナちゃんは美人だもんね」


 ここでは美人かどうかは関係ないのだが、鳳さんが真剣な顔をしているので黙っていた。


「あと、ふたり彼女が来るんですが、バイトの仕事はたくさんあるんでしょうか?」


「ふたり? え? え? 彼氏ではなくて彼女?」


 鳳さんは混乱しているようだ。そりゃ、この前までボッチをしていたオタク少年に急に三人も彼女が出来たと聞かされたら誰でも耳を疑う。


「ハナ様のほかに、幼馴染みの紀子と、後輩の田貫が来ます」


「幼馴染みに、後輩……え? 新しいエロゲの話?」


「いや、アルバイトの話です。四人分も仕事ありますか?」


「う、うん。仕事はいっぱいあるんだけど、すごいね。宗川くんて、モテるとは思っていたけど、リアルハーレム作るとは……」


 鳳さんの勘違いを、このままにしておくとヤバい気がしたので、訂正しよう。


「なんか、女子がアルバイトするには彼氏同伴が必要とかで、ハナ様の提案で全員俺の彼女ということにしているだけですよ」


「なるほど」


 鳳さんはすぐに信じた。


「そうだよね。宗川くんはBL(男の子)好きな男子だもんね」


 それも訂正したいが、うんうんと激しく頷く鳳さんに言っても無駄なようだ。


「でも、うちのエロゲって、女の子が好きな男の子向けだからなあ。宗川くん、楽しんでお仕事できるかな……」


 余計な気遣いをされそうだ。そのエロゲでいいんですよ。俺はその仕事をやりに来たのです。


「気が抜けたら眠くなっちゃった。九時半まで寝かせて」


 そう言い残してソファースペースまで移動していった。俺は手持ちぶさたになったので、マンガを読んで過ごした。




 電気街口につくとそこにはすでに三人が待っていた。


「お久しぶりです」


 鳳さんにあってキャラが変わるハナ様を見て、他の二人は驚いているようだ。


「はじめまして、清華紀子といいます。今日はよろしくお願いします」


 紀子は礼儀正しくあいさつした。深々としたお辞儀が好感触のようだ。


「はじめまして。ハナ様の妹の田貫きつねです」


 ナチュラルに嘘をつく田貫に俺は不安を覚える。


「なぜ嘘をつく」


「嘘ではないのよ?」


 否定するハナ様。


「面倒なので教えてなかったけど、ハナ様ときつねは姉妹になったのよ?」


 紀子が「知らなかったの?」という顔で俺を見ている。紀子すら知っていた事実を俺が知らないだと……? 当然だな。


「ハナ様のお父様が田貫のお母様と結婚されたのです。しかし、田貫は桜千住学園に通うために叔父の養子になっているため、名字は変わらないままでおりました」


「ということは、今は枝里になったの?」


「はい。昨日、ようやく!」


 それは俺が知らなくて当然の情報ではないなだろうか。紀子は大方ここへ来る途中に聞いたのであろう。


「じゃあ、もう田貫って呼べないな。今度からきつねと呼ぶよ」


 言いながらあまり変わらないことに気がついた。冗談みたいな名前から変わってしまったのは残念だが仕方あるまい。


「では、鳳さんを紹介するのよ?」


「鳳らいすです。プロジェクトマネージャーをやっています。基本的にみんな私の下で雑用をしてもらいます」


 やっぱり、偉い人だったのか。以前見せてもらった体制図

にはチームリーダーと書いてあったから出世したんじゃなかろうか。


「よろしくお願いします」


 みんな揃って声をあげた。


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