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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
風紀部の防犯システム開発
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デフォルトは三十分前行動

 龍ヶ崎によると、理科準備室にいたのは初等部三名だったという。

 いずれも女子でたまたま(・・・・)クラウドストレージにアクセスでき、動画を発見したと言う。


「とても信じられないな」


 田貫からの報告を聞いた俺は「たまたま」という部分に疑問をもった。


「宗川先輩のおっしゃることは当然です。私も疑問を抱いてさらに調べているところです」


 田貫が調べるなら真相はすぐに解明されるのだろうが、手加減してやれよとしか思えなかった。


「それにしても初等部とは……」


「全員、女子だったようです」


「え?」


「急に綺麗になった斉藤さんに注目していてお姉さまと読んでいるとか」


 え? 桜千住学園て、ミッション系だっけ?


「動画も大事なところをダウンロードする前にすべて押さえましたので、この件はなんとかおさまりました。先輩のおかげです。私にできることならなんでもいたしましょう」


『なんでもする』って割と言われることが多いけど、これは俺が変なことを頼まないだろうという信頼の明かしでもあるんだろうな。


「田貫、つきあってくれ」


「よろこんで」


 即答である。


「ハナ様はいいの?」


「なんだかハナ様は先輩とお付き合いするとか。生徒会長も同時に付き合うみたいですので、私も仲間にいれていただければ幸いです」


 ハーレム三人目である。


「じゃ、一緒にエロゲの仕事しようか」


「エッチなポーズとかさせられるんですか?」


 それじゃ、マンガみたいじゃないか。現実の会社でそんなことを依頼しようもんなら労働基準局に駆け込まれる。いや、よく知らないんだけど。


「明日、秋葉原電気街口で待ち合わせね」


「存じております」


 ちょっと怖いな。これは誘わなくてもあとをつけてきたって言うことだよな。


「楽しみですね」


「それについては俺も依存はない」


 実際に雇ってもらえるかはさておき、とりあえず連れていってもいいだろう。




 朝になる。俺はすでに電気街口にスタンバイしていた。


「ちょっとはやく来すぎたかな?」


 待ち合わせは10時だが、今は6時だった。

 実に四時間前行動である。

 オタクのデフォルトは30分前行動だが、実にその八倍の安全率を取った。

 これで電車が遅れても安心である。


「さすがに早すぎたか」


 仕方ないので近くにあるマックで休もうと歩いていく。


 マックにはいるとコーヒーを頼んで啜る。


 しかし、エロゲが仕事になるなど、今の時代はいい意味でおかしい。

 よく考えればエロゲは大のおっさんたちが性欲をもて余した青少年たちの性の捌け口になっているわけだ。

 あ、よく考えたら気分が悪くなってきた。この考えは封印しよう。喜ぶのはハナ様しかいない。


 マックから目の前の道をぼーと眺めていると、鳳さんが歩いていた。ちょっと足取りがフラフラしている。

 俺はコーヒーはそのままに鳳さんを追いかけた。




「鳳さん!」


 俺が呼び掛けると鳳さんはしばらくキョロキョロして、頭を降って再び歩き始める。どこから呼ばれたのかわかっていなかったらしい。


「鳳さん」


 今度は肩を叩いて呼び掛ける。


「あれ? 宗川くんの幻影が見える」


 鳳さんは焦点があっていない。


「どうしたんですか? こんな朝早くから」


「ちょっとお仕事で……」


 仕事が忙しいんだろうか。


「3日もシャワー浴びてないから流石に我慢の限界で……」


「え?」


「マンガ喫茶でシャワーだけ浴びてこようと思って」


 なんかヤバい感じがする。


「や、休んだ方がいいですよ!」


「そうだね。でも、今やすむと前のプロジェクトみたいに炎上しちゃうからさあ……」


 俺は声がでなかった。言葉なんて頭の中に浮いても来ない。


「そういえば、ハナちゃんが今日からアルバイトに来るから、今日は案内とかで少しは休めるかも~」


 そう言いながら、俺に寄りかかってくる。


「ごめんね。マンガ喫茶まで肩かして」


 俺は無言で頷くとマンガ喫茶まで鳳さんを抱き抱えて歩いた。


遅刻する恐怖に比べれば三十分前行動は余裕です。

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