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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
風紀部の防犯システム開発
35/65

ハーレムフラグ、回収される

「では、キスすのよ? 保」


 ハナ様は真面目な顔でキスをせがんでくる。

 俺はちょっと考える。

 このままキスをしてしまったら、俺の身に何が起こるのだろうか。

 第一に田貫に殺される。

 第二に紀子に殺される。

 第三に部長に殺されるかもしれない。

 第四に龍ヶ崎にボコボコにされる。


 結論としてはハナ様とキスしてもいいことは何もない。


「断る」


「どうしてなのよ? ハナ様がファーストキスをあげるといってるのよ?」


「その対価が我孫子とのキスというのは、俺にとってハードルが高すぎる。我孫子とキスは無理だ。男の娘化していたとしても無理だ」


「我孫子くんとキスするというのは大変魅力的な申し出ではあるのだけれども、ハナ様はそんなことを望んでいないのよ?」


「じゃあ、どうして?」


「ハナ様も真実の愛に目覚めたのよ? ハナ様は保が好きだったようなのよ?」


 ハナ様は混乱している。

 俺はハナ様をバシッと強めに叩いてみた。


「痛いのよ? ハナ様はそういう(SM)は求めていないのよ?」


 まだ混乱しているようだ。


「なあ、ハナ様が俺のことを好きになるフラグなんてあったっけ?」


「あったのよ? ハナ様は保が好きだからコンピュータ同好会へ誘ったのよ?」


 高等部一年になったばかりの頃、ハナ様はまだ普通の女の子の振りをしていた。このころにはBLにずっぽりはまっており、自分の持っているスマホにスキャンしたZIPファイル(BL本)を山ほど持っていたのだ。

 たまたまそれを見てしまい、ハナ様の正体を知るわけだが、俺もこのころにはエロゲにずっぽりつかっており、美人な幼馴染を見ても何も感じないぐらいには教育されていた。

 そんなこんなで、共通の目的があってパソコンを自由に使えるコンピュータ同好会に入ったわけだが、その過程でハナ様が俺を好きになるフラグなどなかったのである。


「ふむ。ハナ様は大好きなBLの発展場がなくなってしまったのがショックなんだな。だから、自分を壊してしまおうと、普段なら絶対にしないことをしようと思った。そう考えるとつじつまがあう」


 なので、俺は逃げることにした。


「あ、そうだ。鳳さんからLIME来てたぞ」


「え? 神から?」


 ハナ様がスマホを確認しようとする隙に部室を出て図書館へ向かった。




 図書館では斉藤と姉葉が仲良く本を見ながら勉強をしていた。何の本かと思ったら百合百合しい詩集のようだ。

 仲良さそうなので俺は無視して書架の奥に進む。


 書架の奥には俺が見つけた秘密の場所があった。めったに動かさない書棚があり、これを少しだけ開いてその奥にできたスペースに隠れると、もう誰にも見つからない隠れ家になるのだ。


 もしかしたら図書部の誰かは知っているかもしれないが、ほこりの積もり方からするとたぶん誰も知らない場所だと思う。

 なんといっても風紀部の監視カメラがないのがいい。


 俺はスマホを取り出すとリモートデスクトップを開いて部室にあるパソコンを操作する。

 そこには開いたままのエロゲが表示されている。

 スマホなので画面は少し小さいが、俺のスマホは4Kの解像度を誇るので顔を近づければ細かな文字も見える。パケットもそれほど使わないのでとても便利だった。


「戦略級び情緒魔導士の育て方」はマルチエンディング形式のため、まだ見ていないエンディングや育成パターンがある。トゥルーエンディングだけ見てもこのゲームの面白さは味わったことにはならない。

 俺は無人島で少女と関係を持つ場面の先で何が起こるか見ようと思っていた。


「こんなところで何をされているんですか?」


 誰かの声に俺はビクリとなって周りを見回した。

 するとちょっとだけ開いた書架の間から田貫が顔を出している。


「なんでここが……」


「田貫は宗川先輩がどこにいるかひとめでわかるのです」


 そう言いながら自分のスマホを見せてくれる。そこには主要な人物がどこにいるか分かるマップが表示されていた。


「GPSは無効にしているはず……どうしてここが……」


「WiFiからMACアドレスをたどれるのです。この学園内ならどの辺にいるのかすぐにわかります」


 田貫は大国のスパイにでもなるつもりなのだろうか。


「で、何かようか」


「ハナ様が探しておられました」


「ハナ様が俺のことを好きとか言い始めたからな。うざいので隠れてる」


「存じております。今回、田貫は宗川先輩の味方です。ハナ様が正気に戻るまで匿いましょう」


 ありがたいことだが、ここで了承すると絶対に監禁されるフラグである。


「断る」


「そうですか。では、田貫はハナ様のもとへまいります。そして、宗川先輩に接触しないようそれとなく誘導することとしましょう」


 最初からそうしてくれればいいのに。

 俺は田貫がいなくなると再びゲームをし始めた。


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