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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
図書部の受付システム開発
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部長がハーレムを築く日

「お邪魔します」


 妹川さんの声が聞こえたかと思えば、部長が部室のドアをスチャっと開けた。凄いスキルである。これだけで異世界を無双していけそうである。


「ようこそ! コンピュータ同好会へ」


 どこかのアニメで聞いたことのある台詞で迎える部長。完全に別人である。


「その節は大変失礼しました」


 部長を見るなり姉葉が謝罪する。深々と頭を下げた。


「い、いや、そ、某は、き、気にしてないでござるよ」


 どもりまくって圧倒的に普段の部長に戻ってしまった。斉藤で慣れたかと思ったけど、美少女を前にすると、全然別のようだ。


「平川部長に償いをしたいと思っています。私にできることでしたらなんでもおっしゃってください」


 それは部長に言ったらだめじゃないかな。調子に乗って「太もも触らせて!」とか言いかねない。

 俺はいつでも止められるように緊張した面持ちでまっていたが、部長は目を閉じて何かを考えていた。


「姉葉さんは某とちゃんと話をしてくれた。手まで握ってくれた。たとえ、それが我々のシステムを探る目的だったとしてもうれしかった。手を握ってくれとは言わないが、また普通に話をしてくれないか」


 あれ……俺がおかしいような気がしてきたぞ。部長がまともに見える。


「はい。よろこんで」


 姉葉はにっこりと笑って部長の手を取って握手した。くそ。行動がイケメンだな。

 手を握られた部長はすごくうれしそうだ。


「はいはい。ストップ。分かれてください」


 そこに斉藤が割って入る。


「目的のためなら人の心を弄ぶビッチは、平川部長に近づかないでださい!」


 ちょっと待て。どの口が言っている。部長の心を弄んでゲーム作らせているのはどこのどいつだよ?


「話は聞いてますよ、斉藤さん。確か平川部長が中等部女子に弱いことを利用して、図書部の受付システムより先に自分だけのゲームを開発させているそうじゃないですか。しかも、図書部の予算を横領して」


 姉葉の目が細くなる。怖い。ハナ様もかくやという冷たい目だ。茶髪でショートカットの美少女だけに、男もびっくりの迫力である。


「そ、それがどうしたの? 傷ついた平川部長を慰めたのは私なのよ!」


 そうだっけ? 明らかに嘘とわかることまで言いはじめて、斉藤のHPはもうゼロじゃないかなってぐらい動揺しているのがわかる。あっという間の勝負だったな。


「私は平川部長をお慕いしているのです。だからコンピュータ同好会を潰して、女子コンピュータ部に吸収しようと思っていました」


 姉葉の衝撃の告白に斉藤は言わずもがな、俺もハナ様も驚いた。当人である部長に至っては、よく理解できていないようだ。


「平川部長は、女子コンピュータ部の中では人気ありますよね」


 妹川さんがそういうと、一緒に来ていた女子四人が「うん。割りと好きだよね」「うんうん」などと同意し始めた。

 あれ? 俺、この流れ知ってる。みんなで俺が俺がと手を上げて、一番最後に手をあげた人に「どうぞどうぞ」って譲るやつだよね。


「す、好きな気持ちだったら、私だって負けてないもん!!」


 流れに気がつかず乗ってしまう斉藤。いいのか? このままでは部長と付き合うことになるぞ。


「では、平川部長に決めていただきましょう」


「望むところよ!」


 俺の予想とは反して、女の熱い戦いになってきた。部長のモテ期が今この瞬間に三重に来てしまった感があるぞ。部長の良さは俺にはわからないが、中等部女子に響くなにかがあるんだろう。


「平川部長、どちらを選ぶんですか?」


 部長は少し引いている。女子にそんな迫り方をらせたら、俺でも裸足で逃げ出すと思う。


「さあ!」


 二人に迫られた部長は、何かを思い付いたかように頷いた。


「そこまで言うのなら、某が選ぶ方法を決めよう」


 みんな、ゴクリと喉をならす。


「某が脇の下をペロペロして、長時間耐えられた方を」


 スパコーン!


「そこまでだ! このくずめ!」


 部長が最後まで言い終わる前に、俺は部長をどついた。部長は不意をつかれてバランスを崩し、部長に迫っていた姉葉と斉藤に突っ込む。

 二人は慌てつつも部長を受け止めていた。俺は避けるかと思っていたが、受け止めるとは……。二人とも割りと本気で部長に好意を寄せているのかもしれない。


「なにするんですか、宗川先輩!」


「そうですよ、平川部長が怪我したらどうするんですか!」


 変態を庇う二人を俺はゴミを見るような目で見下ろした。前々から思っていたが、こいつらは俺と反りが合わない。原因はよくわからないが、部長をクズだと思っている俺と価値観があわなくて当然だろう。


「じゃあ、部長に脇の下を舐められろ」


 俺は突き放す。変態から守ってやったのに、アホかと。

 二人は顔を見合わせる。そして、真っ赤になりながら「どうしよう」「どうしよう」と慌てる。


「脇の下を洗ってきてもいいですか?」


「わ、わたしも!」


 信じられないことに、二人とも舐められる気満々のようだ。どうするんだよ、これ。


「二人の覚悟はわかった」


 部長は二人から離れると、メガネをくいっとかけ直した。


「某は、女子と付き合ったことがない。選ぶにしても君たちのことをよく知ってからにしたい」


 正論だ。俺にどつかれて正気に戻ったのか?


「わかりました」


「私もそれでいいです」


 なんだかよくわからないうちに部長ハーレムが築かれた。俺は、はっとなって残りの女子コンピュータ部のメンバーを見る。

 他のメンバーは首を必死に横にふった。どうやら、脇をなめられたいのは姉葉だけらしい。

 ほっと胸を撫で下ろした。


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