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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
図書部の受付システム開発
14/65

燃えているプロジェクトの見分け方

やったー。初ブックマークいただきましたー。

うれしいですね!

これからも頑張ります!

喫茶店につくと、もう鳳さんが座って待っていた。


「すみません。遅れました」


「大丈夫だよ。私はここでお仕事してただけだから」


 そう言いながらノートパソコンをカバンにしまった。


「あ、お仕事のお邪魔じゃないですか?」


「もう終わったから大丈夫だよ」


 その返事にひと安心し、執事さんに紅茶を頼むと、当たり障りのない話からしようと思った。


「昨日、ひどいゲームを買ったんですよ」


「え……どんな?」


「イラストやストーリーは凄いいいのに、選択肢のどれを選んでも同じ話になるんです。好感度やフラグが一切ないんですよ」


 俺が話題にしているのはもちろん「はじめてのおにぃちゃ」だ。鳳さんはエロゲが好きではないかもしれないので、エロゲであることと具体的なタイトルは避ける。


「へ、へぇ……」


「それが店売りで約二万円もしたんですよ」


「な、なにか特典がついてるんじゃないの?」


「ビックリしたことに、それがないんですよ」


「な、なるほど」


「ずっと前からスタッフブログとか見てチェックしていたんだけど、何度も発売延期繰り返して、これですからね。俺、すごいガックリしてしまって」


 なんとなく、鳳さんの顔色が悪くなっていく。同じような業界のお仕事のようだから、身につまされるのかもしれない。


「そ、それより本題は?」


「あ、それなんですけど、俺、今回のシステム開発で何も出来なくて、同好会での存在価値というか、居場所がなくなってしまってですね。鳳さんはそういうのに詳しいようなので、何かアドバイスいただけないかと思いまして」


 虫のいい話なので断られてもそれが普通だと思う。


「ちょっと考えさせてね」


 しかし、鳳さんはちゃんと考えてくれるようだ。鞄からノートパソコンを出すと、何かの資料を開いて俺に見せてくれた。

 なんか家系図みたいなもので、「プロジェクト体制図」というタイトルがあったらついていた。

 ゲームシステムチームの中に鳳さんの名前があった。リーダーと側に書かれているから、班長みたいなものなのかもしれない。


「あれ、この一番上の四角にある名前って、もしかしてうちのOBじゃないですか?」


 コンピュータ同好会の創始者である藤田さんの下の名前は覚えてないが、こんな名前だった気がする。


「え? 宗川くんは桜千住学園の生徒なの?」


「はい。高等部二年です」


「そうなんだ。プロマネも私も桜千住の出身なんだよ」


「すごい偶然ですね」


「あれ、鳳さんももしかしてコンピュータ同好会に入っていました?」


 なんとなく、なんとなくそんな気がしたのだ。あのコンピュータ同好会(だけではなく桜千住学園)に流れる空気が鳳さんと同じような気がした。


「うん。そうだよ」


「じゃあ、先輩ですね!」


 そういってニコリと微笑むと、鳳さんは赤くなって下を向いた。「ずるい」と呟きが聞こえたと思ったところで、注文していた紅茶がくる。


「そ、それじゃあ、先輩になんでも聞いてください」


 急に胸を張るもんだから鳳さんの大きな胸が揺れた。俺はその破壊力で一瞬頭の中が真っ白になりそうになったが、なんとか理性でこらえた。

 危なかった。もう少しでスマホのカメラを起動して連写するところだった(あとでGIFにするために)


「俺たちの状況から話しますと……」


 状況をかいつまみながら、しかし、正確に伝わるように説明した。俺が説明している間、鳳さんは静かに聞いていた。


「うーん、最近似たような状況にいたから、私も偉そうにはできないんだけど」


「大丈夫です。俺は未経験者ですし、経験者の話はなんでも参考になります」


「本当は、『成功例』だけ学んだ方が成長は早いんだけど」


「『失敗から学ぶ』ってよく言われますけど……」


「それは嘘だよ。成功例だけ見続けて、学んだ人の方が間違いが少ない。やっちゃいけないことを学ぶのではなく、やらなきゃいけないことを学ぶ方が正解なの」


 鳳さんはやさしく諭すように俺に言う。俺はすぐに理解できないまでも、鳳さんに言われたことを忘れないようにスマホにメモした。


「宗川くんの今の状況だと、現実的な機能にまで落とす必要があるね。お金がもらえないと心配になるかもしれないけど、システムが『動く』状況と『動かない』状況だと、お金もらえるのは前者なのよ」


 そこで鳳さんは言葉を切った。俺の反応を待っているようだ。


「よくわかりました。飲み込めていないところもありますけど、問題を解決するには『動く』システムを作らないとならないということですね?」


「そう。宗川くんはやっぱり自頭がいいね」


 すごくうれしかった。自分でもびっくりしたが、この年齢になっても大人にほめられるというのはうれしい。


「ありがとうございます」


「宗川くんならできるかもしれないから、とっておきの秘策を教えるわ」


 心の中で鳳さんのことを『師匠』と呼ぼうと決めた。


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