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突然ですが、我々には部費がない  作者: 小鳥遊七海
図書部の受付システム開発
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本格開発開始!

 部長は今日も絶好調だった。なぜなら、本を読みに来ている斉藤さんがいるからだ。斉藤さんは眼鏡をかけているわけでもなく、運動に適していない髪型をしているわけでもなく、表情も面倒くさそうなので、普通に見たら美少女ではないのだが、部長にとっては些細な問題のようだ。


「ああ! 良いところで終わってる!」


 斉藤さんが急に大声を上げる。


「ハナ様! これの続きはないんですか?」


「何言っているのかわからないのよ? 保、翻訳するのよ」


 ハナ様はパソコンに向かって真面目な顔をしていた。鳳さんとあった日以来、ハナ様はシステム開発に全力を注いでいる。元天才プログラマと言うこともあり、システムは順調に組上がっているようだ。


「斉藤さん。同人誌だからほぼ百パーセント、続きはないよ」


「そんな! こんな落ち無しの漫画なんて酷いよ……」


 それがヤオイ本の語源とも言われているからな。落ちは期待しないものだ。


「作者脅して描かせるとかしてどうにかならないんですか?」


 この子、完全に本性出てるよね? 中等部なのに、すでに我々にタメ口だし。


「気になるなら、自分で続きを描くのよ?」


 ハナ様が正論を言う。しかし、難易度の高い解決方法だな。


「え? ……なるほど」


 なぜ納得したし。斉藤さんは暫く考えると、ポンと手を叩いた。


「でも、エンドの色んな可能性を考えると、これ、ゲームにするしかないんじゃない?」


 俺は嫌な予感がした。


「呼んだかい?」


 呼ばれていない部長が斉藤さんの前に進み出る。


「ゲームと言えば、Unity。Unityと言えばゲーム。そのゲーム、(それがし)と一緒に作ってみないかい?」


 何いってるんだ、このキモオタめ! お前の担当分は半分も終わってないだろ。そんなゲームなんか作っている暇はないはずだ。

 俺が止めようとすると、斉藤さんが部長の手をとった。


「名作を作りましょう!」


 何やる気になってるんだ、斉藤! いつもやる気ないのに、こんなときだけやる気になるなよ。俺は斉藤の頭をひっぱたいた。


「アイタ! 何するんですか、先輩」


「遊んでいるだけならいいが、システム開発を邪魔するなら木本さんに言って担当を変えてもらうぞ!」


 斉藤は「はっ!」と我に返ったようだ。


「私、コンピュータ同好会に入ります!」


「歓迎しよう!」


「アホか!」


 斉藤はそもそも中等部だろ!と思ったが、あれ?図書部ってなんで中等部もいるんだ?


「保くん、部活動は中等部も参加が許されているんだよ。もちろん、同好会もね」


 いやいやいや、それならハナ様の後輩はなんで入ってないんだよ。


「ハナ様も反対なのよ。人数が増えたら活動費の分け前が減るのよ?」


 なるほど、それが理由か。だから部長が卒業するまで、ハナ様の後輩は入ってこないのか。


「何をいう。もはや、我々には活動費などないのだぞ!」


 部長の言葉を聞いてシーンとなる室内。


「そうだったのよ!」


「そうだった!」


「え? そうなんですか?!」


 叫ぶ俺とハナ様。斉藤さんは目をぱちくりしている。そりゃ、部費がないのは我々だけだからな。


「ならいっそ、図書部の部費を回しましょうか?」


 斉藤さんが変なことをいい始めた。その部費を回してもらうために、部長とハナ様が絶賛システム開発中なんだが。


「確か、部費は一人頭十万円ぐらいあったので、その範囲なら私の権限で出せます」


 一瞬、耳を疑った。中等部の小娘が十万円だと……? え? いつから我々の学校は富裕層のお嬢様学園になったわけ?


「そ、その金があったら、我々はシステム開発しなくてもいいのでは?」


 至極当たり前のことを確認する。


「あ、でも、年間十万円ですよ。四人の部活動にしてはちょっと少ないですよね?」


「ゲームを作る上で十万円あれば十分だ」


 また部長が暴走を始める。


「では、貰ってきます!」


 斉藤はノリノリで部室を出ていく。部長はそんな斉藤をほほえましいと言った顔で見送っていた。


「部長、先に釘を指しておきますが、ゲーム製作は図書部のシステム開発が終わった後にしてくださいよ?」


「いや、某はゲーム開発の方が得意だからな、ゲーム開発終わってから図書部の方に取りかかっても問題ないだろう」


「それなら、図書部のシステム作ってからでもいいじゃないですか」


 部長は急に真剣な顔をする。糸目になって、表情が読みにくくなる。


「某は今、恋を取るか友情を取るかの狭間にいる。そして、この先、恋などしないのだから、今にかけたい。わかってくれるな、保くん」


「は、はい」


 部長の迫力に押されて返事をしてしまった。気を取り直して、「絶対に納期に間に合わせてくださいよ?」と念を押す。部長は力強く頷いた。


 こうして我々は時間もないのに、BLゲームの本格開発に入ったのであった。

laravelがphpのフレームワークで圧倒的にNo.1という記事を見て、何年も前から使っていた俺は勝ち組!と思うなど。それは冗談ですが、本当に便利だよね

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