楽しいことには終わりがある
初投稿です。頑張りますので宜しくお願い致します。
「突然ですが、我々には部費がない」
普段ミーティングなどしない我々だが、久々にミーティングをしてみると部長の開口一番がコレである。
部長会でもらったと言われる資料を見ると、確かに部費にゼロと記載されている。設立当初からのグラフがあるのだが、そこまで遡ってみても部費はゼロだ。
「どういうことなの? ハナ様はもうBLを窘めないというの?」
「……そういうことだ」
部長は重く頷く。
「え? 俺の『はじめてのおにいちゃ(新作エロゲ)』は買えるんだろ?」
俺の声は裏返っていた。一年前から発売延期が重なること3回。スタッフブログを毎日見続け、つい昨日『マスターアップしました!』というコメントを見て喜んでいたところなのに。
「部費がないから無理だ」
「部費がないって、今まであったじゃないか!」
毎月、きっかり十五万円。三人で五万円ずつわけて活動経費として使っていた。
「あれはな、部費じゃない」
衝撃の事実をさらりと口にする部長。
「部費じゃないってどういうこと? 部長が身体を売って作ってきたお金ってこと? BL展開キタコレでいいの??」
ハナ様は疑問を呈していらっしゃる。俺も同感だ。BLうんぬんは抜いてだが。
「あれはな、この同好会の創立者が学校の業務システムを作った時に、『コンピュータ同好会』として契約した使用料なのだ」
「ちょっと分からない。kwsk」
「詳しく説明すると、学校の生徒であったスーパーハッカーがこの学校の業務システムを一人で作り上げ、業務システムがタダでできちゃった学校側が喜んでお金を支払うといったが、税金もろもろの面で金銭の受け取りが出来なかった。ならばと思い、コンピュータ同好会を立ち上げ、業務システムを使用する限り毎月十五万円を支払うことにした。それがスーパーハッカーが卒業したあとも続いている……という経緯らしい。OBの人にヒアリングしたから間違いないと思う」
先生から事あるごとに「コンピュータ同好会は名誉ある部活動だぞ。ちゃんとやれよ」と言われてきたが、まさかそんな立派な経緯があったとは。
「ハナ様、理解できないの。BLで例えて三行でお願いするの」
「まだ続きがある」
部長はハナ様のお願いをぶち切った。ハナ様はちょっとおっとりとした可愛い日本美人なのだが、BLをこじらせて以来、BLと関連付けないと理解や記憶ができないという難儀な身体になってしまっている。
「学校の業務システムは、B-TRONを作って組まれていたんだが」
「ちょっと待って。ビートロンってなに?」
「日本産のOSでいろいろな組み込みシステムに使われているのだが、デスクトップ製品には『超漢字』があり、その思想は……」
「ストップ。OSね。分かった」
部長の脱線は話が長くなる。
「業務システムも長く使っていると色々と修復しなきゃ使えない部分ができてしまって、元々今期に入れ替える予定だったと言っていた。入れ替えたシステムは、当然我々が作ったわけもなく、システム使用料の十五万円は手に入らなくなった、というわけだ」
部長が話し終えると、俺の頭にはひとつの疑問が浮かんできた。
「なら、十五万円とは言わずとも少しは生徒会から部費が出てもいいんじゃないか?」
「本来なら同好会と言えども部費は出るのだが、我々の活動内容を熟知している生徒会長および会計曰く、」
「その活動内容で潰されないと思っているの?」
「……だそうだ」
部長の話に合わせてグッドタイミングで現れる生徒会長。後ろには会計の我孫子もいた。
「さて、コンピュータ同好会の部室は没収させてもらうわ」
スタスタと部室の真ん中に歩いてきて、腰に手を当てて宣言した。
「保! 部室がないのも寂しいでしょう? 生徒会室の隅っこにおいてあげてもいいわよ?」
と、俺の方を向いた。
「紀子」
「なに、保」
「生徒会室でエロゲしていいの?」
「い、いいわけないじゃない! バカなの? 死ぬの?」
「まぁ、そうだよな。なら断る。無論、部室の没収の方からだ。そもそも何の根拠があるんだよ。同好会が存在する限り部室は無条件で支給されるはずだろ?」
同好会を作ったことはないが、エロゲ同好会を作ろうとして設立方法を調べたことがある。人数は三人以上、五人未満、部室は支給。部費は正当な活動内容と認められたものに限り月額3万円を上限に支給される。これ以上の規模の場合、部活動に格上げ。部費の上限は撤廃される。ただし、活動内容は顧問の指導の元、かなり制限されることになる。
「それがね、今年からはそうはいかないの!」
嬉しそうに飛び跳ねる生徒会長。ツインテールがわさわさ揺れてる。
「会長、そこは僕から」
「出たな、我孫子」
我孫子は名前。苗字は常磐。人呼んで「常磐線」である。
「去年から生徒会は部室に家賃を設けることにした。毎月三万円だ。これが支払っていない同好会もしくは部は即刻廃止。部室を没収の上、生徒会が管理することにした。わが校は幽霊同好会が増加の一途を辿り、その対策だ。その代わり、部室費を生徒会予算から各同好会および部に支給。実質、無料で部室を使えることになった」
「なら、俺らも問題無いじゃんか」
「コンピュータ同好会は別だ。システム利用費から家賃を徴収させてもらっていた。よって部室費は支給されていない」
我孫子が眼鏡をクイッと持ち上げる。
「き、きたねー」
どう考えてもコンピュータ同好会を狙い撃ちじゃないか。
「どういうことなの? 家賃三万円払わないとBLを窘めないというの? ハナ様、三万円なんて大金、BLにしか使ったことないのよ」
ハナ様がオロオロし始めた。元々人慣れしてないのに、べらべら喋る生徒会長と会計が来たので、かなり不安定になっているようだ。同好会以外の場所では内向的な部長も一言もしゃべっていない。
「さて、出て行ってもらおうか」
我孫子が部長とハナ様を追い出そうとする。
俺はその手を掴んだ。
「待てよ」
そして、生徒会長の方を向いた。
「家賃の納入期限はいつだよ、紀子」
「こ、今月末よ」
「なら、まだ出て行く必要はないはずだ」
「そ、そうだけど……」
押しに弱い生徒会長のことだ。我孫子の押しに負けて期日前に没収しに来たのだろう。
「月末までに家賃三万円を用意してやる」
俺はエロゲを守るために立ち上がろうと思った。いや、エロゲをする場所を守るために立ち上がった。ここには真の自由がある。それを生徒会の陰謀で潰されてはならない。
「いいだろう。ただし、毎月三万円だからな。忘れるなよ?」
我孫子の捨てセリフに俺は我にかえる。
「あ、ちょっとまって。紀子」
「なに?」
「なんとか部室費だけでも支給してもらえないかな?」
急に弱腰になる俺。
そんな俺を見て生徒会長はニヤリと笑った。
「いいわよ。ただし、保が生徒会に入ってくれるならね。あとの二人はコンピュータ同好会として存続を認めるわ」
「な、」
なんという鬼のような条件。完全に我々の結束に楔を打ちに来ている。はっとして部長とハナ様を見ると、俺を生贄にする気、満々の表情だ。
このままでは本当に生贄にされかねない。俺だけがサンクチュアリから追放されるなんて許されない。
なんとか反論を考えなくては……。
「会長。お言葉ですが、同好会は三人を割ったら廃止です。保が生徒会に来た時点でなくなります」
我孫子、ナイスボート!
「えぇ、じゃあ、保の代わりに常磐君がコンピュータ同好会に入ってよ」
「無理です。大体、僕抜きで会計処理できるんですか!」
「保なら、できると思うんだけどなぁ」
「できない、できない。我孫子、優秀だもん。俺なんて変わりにならない」
俺は必死で我孫子を持ち上げた。我孫子は敵だが、俺をサンクチュアリに存在させてくれるカウンターパートでもある。
「ほ、ほら、宗川もああ言ってますし」
我孫子も必死だった。
「まぁ、いいか。どうせ月末には潰れてるでしょうし」
生徒会長は俺の側によると「わかっているとは思うけど、アルバイト禁止だからね」と囁いた。
俺はストーカーちっくな幼なじみに季節外れの寒気を感じた。
改行入れて、常磐の一人称を私→僕へ修正しました。