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作者も知らない物語  作者: May Packman
1/1

二人の佐藤さん

あまり実のある内容は書きません。拙作の極みで御座います。お時間に隙間が空いた際などにご覧頂ければ幸いです。

※続きのストーリーは決めていません。感想などでなんらかの「キーワード」「お題」を頂ければそれを元に書きます。

 ――チアキちゃん。

 そう呼ばれるのは割合に慣れている。苗字を素直に読めば確かにそう読めるし、正しい読み方をしろという方が無理なのは承知しているからである。

 わたしは学生時代から《チアキちゃん》を快く受け入れている。

 コインの裏が出る確率同様、運良くわたしは女の子だ(この呼び方はまだ許されるだろうか)。下の名前もわたしとしては気に入っていない。そこにきての《チアキちゃん》だ。こりゃあ渡りに船だ、とばかりに飛び乗った。そのままどんぶらこ、どんぶらこと揺られて漂い続けてきた。

 そして一年前、大学を卒業して晴れて社会人となった。医療事務として病院勤務をしている今も《チアキちゃん》はわたしの呼び名となっている。同期や先輩のお姉さま方、さらには上司のおじ様たちまでも丁寧にちゃん付けで呼んで下さる。有り難いやら申し訳ないやらである。

 かくしてチアキちゃんは周りの方々から特別な寵愛を受けて、なんとかお仕事を頑張っている、つもりである。社会人とは闇の底でうごめく生き物であり、たかだか一年で全貌が見えるものではない。毎日必死になってこなしていたら、カレンダーが全てめくれてしまっていた。わたしは知らぬうちに歳をひとつ取っていた。取りすぎたからといって返せないので質が悪い。

 後輩も入ってきて《チアキさん》と呼ばれるようにもなった。

 なんだか落ち着かない四月、五月を過ごし、六月の中旬に差し掛かったある日のことである。

 わたしは外来の受付カウンターでぼうっと座っていた。外は雨で、時間は午後三時。患者さんが来るような気配はまるでない。こういう時期はままある。病院における幕間といった感じだ。やりがいはないが、ほっと一息つく貴重な時間である。

 見るともなしに、窓ガラスに付く少女の涙のような水滴を眺めていた。すると二人のお姉さま方の話声が聞こえてきた。あちらは立ってお喋りをしている。なにやら楽しそうだ。

 一人は二年上の先輩。歳も二つ離れている。目鼻立ちがはっきりとした美人さんで、部署内外で人気が高い。医事課の「佐藤」と言えばこの人だ。他の「佐藤さん」は太刀打ちできない。

 もう一人は八年上のお姉さま。御年齢は恐れ多くて訊けていない。しっかり者で面倒見が良い方である。わたしなども、幾度も窮地を救われてきた。その度に「しっかりやんな」と肩を叩かれ激励された。ははあ、と頭を下げると豪快に笑って下さる。なんとこの方も「佐藤」さんなのだ。しかし、入社して六年後に同姓のお姫様が現れる。驚きの引き際の良さで、あっさり苗字を譲ってしまった。まさに竹を割ったような性格の持ち主なのだ。今ではその性格から「お竹さん」と呼ばれている。わたしも図々しく呼んでいる。

 そのお竹さんが、わたしの視線に気付いた。

「チアキちゃん。今の話、聴いてた?」

「いえ」

「じゃあ、聴いて頂戴な」

 手招きされたので立ち上がる。佐藤さんは横でニコニコしている。そして綺麗なソプラノの声で、

「チアキちゃんは読書家だから頼りになるかもしれないわ」

「は」

 確かに以前、『本を読んでいるときが一番の至福です』と豪語したことがある。しかし、藪から棒である。

 二人の横に並ぶと、お竹さんが徐に口を開いた。

「実は少し前にこんな不思議なことがあったの」

 わたしは二人の顔を順番に見遣った。


※続きのストーリーは決めていません。感想などでなんらかの「キーワード」「お題」を頂ければそれを元に書きます。是非、あなたの手でチアキを次の物語に導いて下さい。


宜しければ他の短編、あるいは長編も御座いますのでご清覧下さいませ。

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