第5話 抑圧者 People Who Oppressed
投稿者は倫敦1888
第1回の投稿は4月16日日曜日。被害者は4人。御手洗一家と駆けつけた警察官1名。殺害方法は斬殺。日本刀のようなもので首を一切り。殺害後の様子を撮影。撮影時間は3分程度。最後のメッセージは「y」。現場は紀宮駅前商店街の裏路地。
第2回は翌週の4月23日。もちろん日曜日。被害者は女性1人。杉村みゆき。死因は窒息死。首を跡がはっきり残らない程度の、弱い力での扼殺。これもまた殺害後の様子のみで、撮影時間は前回同様3分ちょっと。メッセージは「o」。場所は新翼市にある柰舵湖の管理されていない船小屋の一室。
第3回、第4回は同時に配信。投稿日は4月30日。一方はヨトクタワーでの歌野保育園園児大量撲殺。少し長く、5分程度。メッセージは「t」。
他方は狂犬病を発症した檻の中で、これまた園児たちが噛まれ死にゆくまでの映像。場所はまだ見つかっていない。おそらく3日か4日(もしかしたらもっとかも知れないが)かかっている。今までで1番長く、30分。メッセージは2回目と同じ「o」。
YOTO
こうくれば、オレたちにとっては続く文字が自然と予期できる。
Yotok
オレたちが住む国、パネイジの首都だ。
しかし、たとえYotokだとしても何を意味するのか全くわからない。
「(フン、何を考えているんだ。前にオルヌカン王国に行かされた時に決めたじゃないか。灰土町内の事件以外扱わないって。)」
なのにどうしてこんなにも気になってしまうのだろう… 人がたくさん殺されているからなのか…それとも秋田がずっと気にしているからなのか…
オレには手に負えないのは分かり切ってるじゃないか……
「(……はぁ…どうしたものか…)」
ガチャリと音がして事務所のドアが開いた。
そこから助手の秋田 詠美の顔が除いた。
「あぁ、また考えごとしてましたね。やっぱり気になりますか?倫敦1888。」
「フン。」
「そんなに気になるなら、自分で調査すればいいじゃないですか。ちょうど今何も依頼受けてないじゃないですか。」
「はぁ。」
そうなんだけどな……
「あれ?どうしたんだ?そのケース、ギターか?」
秋田は背中に黒い大きなケースを掛けていたのだ。
「残念、ハズレでした。これはベースよ。ほら。」
そう言って秋田はケースから(オレからしたら)大きな楽器を取り出し、コトンと言わせてケースを下に置いた。
白いその楽器はオレからしたら、
「どう見たって、ギターにしか見えないんだけどな。」
「全く…よくそれで探偵稼業務まりますね。」
「ははは」
「それじゃあ、友達と待ち合わせしてるので、もういきますね。」
「おう、じゃぁな。」
ガタンと言わせて秋田が出て行った。
「(自分で調査すればいい、か。今更オレに何ができるってんだよ。)」
バタンッ!
なんだ?と思って見ると、そこには田口 影介がいた。
「よう。何かあったのか?」そこまで言ってから気付いた。
「(そういや、こいつ、倫敦1888を捜査している刑事だったな。)」
すると、田口はソファに座らない間に言い放った。
「何があったかじゃないさ。全く、上層部は何を考えているんだっての。」
「上層部って、ホントに何があったんだ?」
「聞いてよ、春彦。実はな、ーー」
オレの名前は風立 春彦だ。なので、事務所の名前も風立探偵事務所なのだ。
「ーー上層部が急にあの動画の件の捜査を打ち切ってしまったんだ。」
「・・・っはぁ!?」田口が何を言ってるのか理解するのに数秒必要だった。
「打ち切りっていつ、どうして!?」
「先週の日曜日だよ。どうしてかはわからないけど、多分政治的圧力でもかかったんじゃないかな。」
先週の日曜って5月7日じゃないか。
「なんでもっと早く言わなかったんだよ!」
「だって、箝口令敷かれてしまって、言うにも言えなかったんだ。」
「じゃあ、なんで今ーー」
「我慢ならなかったんだ。」
「・・・・」
「はぁ、なぁ、頼むよ。俺は動けない。でも、探偵の春彦なら、政治的圧力なんて関係ない。頼む!」
「・・・・・・」
どうしたものか。オレにここから何ができるのか…
いや、何もかもできなくとも、何かはできる。警察に代わって。
「…仕方ない。わかった。」
「!!ホントか!?ホントに引き受けてくれるのか!?」
「捜査資料、まだ残っているか?」
「あぁ、ここに。」
「見せてくれ。」
オレは田口から受け取った捜査資料を開きながら、田口に尋ねた。
「なぁ、影介。政治的圧力がかかっているとして、誰の仕業か、心当たりあるのか?」
「いいや。全く。第一、政治には詳しくないしね。」
「オレは1人だけ心当たりがある。殺人事件を潰すようなやつ。」
「え!?」
「前に一度あったからな。秋田に聞けばいいじゃないか。あいつ、結構政界に関して非常に詳しいから。」
「へぇ。それで?その秋田さんとはどうなっているんですか?」
「?あいつなら、今友人とバンドか何かに行ってるんじゃないか?」
「そうじゃなくって、仲の話だよ。付き合ってないのかよ。」
「あいつとオレが?あいつのどこがいいんだよ。」
「そ、そりゃぁ、顔だって可愛いし…」
「あんな力強い女、苦手だよ。知ってっか?あいつ、去年の夏祭りの射撃大会で準優勝だぞ。」
「ははは……じゃぁな。そろそろ帰るわ。」
「もう帰るのかよ。付き合い悪いな。」
「ほっとけ。色々付き合いあるんだよ。」
「はいはい。調査しとくよ。」
ガチャン。ドアが軽快な音を立ててしまった。




