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第8話 落ちこぼれの仲間

 冷たい。セイヤはそう感じた瞬間、一気に意識を覚醒させる。


 目を覚ますと、周りには無機質な材質でできた壁と鉄格子が見える。


 「ここは……」


 気を失う前のことを思い出そうとしたセイヤは、周りで倒れているザックたちを見つける。ザックたちもセイヤ同様、手足を手錠で拘束されている。


 「ザック君! ザック君!」


 セイヤはすぐにザックたちのことを起こす。


 「うっ……」


 意識を取り戻したザックたちは、自分たちが拘束されていることに気づくと、すぐにセイヤに詰め寄り説明を求める。


 「おい、アンノーン。てめぇなにをした? ここはどこだ?」


 この状況をセイヤの犯行だと決めつけたザックがセイヤに跳びかかる。セイヤは慌ててザックのことをなだめながら説明する。


 「ザック君待って! 僕は何もしてないよ」

 「あぁ? 信じると思っているのか?」

 「本当だよ。僕だってつかまっている」

 「あぁん? どうせお前が仕組んだだろぉ」


 ザックが怒りの声を上げるが、ホアとシュラは冷静だった。


 「おいザック! どうやら俺ら捕まったみたいだぞ。ほらこの手錠をみろ。それにここの作り……」

 「おかしいな~魔法が使えないよ~」

 「なに、魔法が使えないだと? どういうことだぁ? おぃアンノーン」


 ザックは魔法が使えないのも、セイヤの仕業だと思っている。


 「待って、僕にも分からないよ」

 「ちっ」

 「ザック、どうやらアンノーンの言っていることは本当みたいだ。この手錠はおそらく魔封石でできている」

 「魔封石だと、それは本当か、ホア?」

 「ああ、間違いない。一度実物を触らしてもらったことがあるが、この手錠はその時に触った魔封石と同じだ。おそらく犯人は……」


 魔封石とはその名のとおり魔法を封じる鉱石である。


 本来は聖教会などが罪を犯した魔法師を逮捕するためなどに使われているのだが、一部の裏社会では誘拐などに使われていた。


 希少性が高く、簡単に手に入るほど安くもないため、個人の魔法師が扱うことは不可能だ。


 「となると、これは朝に先生が言っていた人攫いってやつか。ちっ、面倒くさいのに巻き込まれたな」

 「そうなるな。それも魔封石を使っていることを考えると、犯人は相当大きな組織だぜ」

 「どうする~?」


 現状が人攫いによるものだとやっと理解したザック。


 さすがにセイヤが魔封石を手に入れるのは不可能なため、ザックもセイヤが無関係だとわかる。しかしセイヤが犯人でないとなると、状況がさらに悪くなる。


 「この件には聖教会も動いていると言っていたが、おそらく現状で助けが来る確率は低いな」


 ザックの顔はいつものいじめっ子ではなく、まじめな中級魔法師一族の顔だ。その顔を見たホアとシュラに緊張がはしる。


 いくら魔法師といえど、中身は子供だ。この状況から助かるには全員の協力が不可欠。そしてこの場合、一番地位の高いザックが指示を出すことになる。


 「どうするの、ザック君?」

 「脱獄するしかないだろうな」


 いつもと違い、セイヤの質問にもちゃんと答えるザック。


 今は助かることが最優先事項であり、そこに私情はない。この場から全員で助かることが中級魔法師一族であるザックの責任だ。


 「脱獄するってどうするんだ?」

 「そうだよ、ザック~」


 不安になる二人だが、二人も魔法師だ。多少の荒事には慣れておかなければならない。


 「まずは四人で協力して、脱獄するチャンスを伺うぞ。」

 「ああ」

 「そだね~」


 今の状況を考えれば、ザックがセイヤのことを仲間扱いするのは、当然のことだ。しかしザックの協力という言葉にセイヤは内心うれしく思う。


 もしこのまま全員で脱獄できれば、僕たちは窮地を共にした友達になれるのではないか、とセイヤはついつい考えてしまう。


 「脱獄と言ったって、まずはこの手錠をどうにかしないと」

 「ああ、そうだ。アンノーン、敵はどういうやつだった?」

 「えっと、はっきりとは見えなかったけどガタイはそんなに良くない男たちで、手には拳銃を持っていた。僕たちはその拳銃で撃たれて気を失ったんだ」


 セイヤの説明を聞き、考え込むザック。


 「拳銃か……となると相手は非魔法師団体の可能性が高いな」

 「たしかに~」

 「じゃあ、この手錠がなくなれば?」

 「ああ、俺たちの勝ちだ」


 もうザックの顔はいじめっ子ではなく、セイヤたちの命を預かったリーダーだ。緊急事態に対し、すぐに切り替えられるというところは、流石は中級魔法師一族である。


 そんなザックの姿にセイヤたちは自然と信頼を寄せていく。


 「問題はどうやって手上のカギを取り戻すかだが……」

 「まさか見張りが腰につけてきたりはしないだろうな」

 「まさか~」

 「そうだよ、ザック君。まさかそんなマヌケな……」


 ジャラジャラ。


 そんなときだった。ジャラジャラと鍵のようなものを腰につけた体つきの良い男が二人と、やせ細った不健康そうな白衣を着た男が姿を現す。


 「どうやら起きたようだな」

 「「「「キタァァァァァァァァーーーーーーーーーーーー‼‼‼‼‼‼」」」」


 白衣の男がそんなことを言いながら薄汚い笑みを浮かべるが、セイヤたちの視線は鍵にしか向いていない。


 そんなセイヤたちをみて、白衣の男は首をかしげる。


 「どうかしたか?」

 「てめぇ、どうゆうつもりだ? ルニアス家に手を出すとはいい度胸じゃねーか?」


 白衣の男に対してザックは自分の家柄を示す。それは一種の威嚇行為であり、何かあれば中級魔法師一族が動くぞと言う警告でもあった。


 「ルニアス家? そんな一族は知らんな。それとお前らは私の実験道具だ。あまり騒ぐべきではないぞ」

 「実験道具だぁ? ふざけるな。今すぐ出せ!」

 「うるさい奴だ」


 白衣の男に実験道具扱いされ逆上するザックだったが、白衣の男がポケットからリモコンのようなものを出し操作をすると、急に苦しみ出す。


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 ザックの大きな悲鳴が牢屋内に響く。


 「次騒いだら今の二倍の苦痛がお前を襲う。鼠は鼠らしくしてろ。ついでに言うと、ここはフレスタンであって、ウィンディスタンの常識は通じない。それだけは覚えておけ」

 「「「「なっ……」」」」


 フレスタン、それは三人にとってあまりにも絶望的な言葉だった。

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