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第25話 ユアの真実

 最高の笑顔を浮かべるユア。しかしセイヤには聞かなければならないことが一つだけあった。


 「ところでユア、聞いていいか?」

 「うん……」


 セイヤが改まった声で尋ねると、どうやらユアも覚悟しているらしく、真剣な表情になる。


 「あの力ってやっぱり……」


 あの力、それはユアが白虎を仕留め、瀕死のセイヤを救った白い魔力。元来、レイリア王国の魔法体系に白い魔力は存在しない。


 だがレイリア王国の誰もがその白い魔力を知っている。けれども白い魔力を使える魔法師は存在しない。


 ユアはゆっくりと息を吐くと、自ら真実を語った。


 「あれは聖属性……」

 「やっぱりな」


 聖属性。それはこの国に存在する唯一無二の魔法。その魔法を使うものは一世代に一人、そして使える魔法師は例外なく女神として聖教会に迎え入れられる。


 事実、先代女神であるリーナ=マリアもこの聖属性を使えたことで女神となった。つまり聖属性を使えることが知られれば、ユアは自動的に女神になるということである。


 聖属性はレイリア最強の属性と言っても過言ではない。そして聖属性にもほかの属性同様に特殊効果が存在する。


 「効果の名称は……」

 「確か発生だな」

 「そう……万物を発生させる力……」


 セイヤも本でしか読んだことはないが、聖属性はあらゆるものを発生させることのできる魔法だ。それは武器でも臓器でも魔力でもなんでも。


 実を言えばユアの使うユリエルとユリアルは召喚魔法に見せているが、聖属性で生成しているのだ。そしてそこから導き出される答えはもう一つあった。


 魔法は遺伝する。


 これはすでに証明された理論だ。つまりユアの両親の内、どちらかが聖属性を使える魔法師になる。


 加えて時期的に考えれば、二十年前に女神リーナが消えてから子供を産むと、大体ユアと同じ年頃になる。


 (ユアの母親は女神リーナ……)


 セイヤの中でパズルのピースが繋がる音がした。


 (なら父親も聖教会関係者。これならすべて納得がいく)


 ユアが闇属性だけでなく、対処法までも知っていること。さらには年に似つかぬ冷静さに、実戦でも平然と戦う姿。


 無尽蔵の魔力は聖属性で発生させればよい。ユアの強さの秘密、そのすべてが明らかになった気がした。


 「だからユアはダリス大峡谷を選んだのか」

 「そう……」


 聖属性はその性質上、見つかれば自由を奪われる。そのことを嫌がったユアはダリス大峡谷を進むことで聖教会との接触を避けたのだ。


 「なるほどな」

 「怒らないの……?」

 「怒る? 何を?」

 「力を隠していたこと……」


 確かに最初から聖属性を使えば、もっと楽に攻略をできたかもしれない。しかし、だから聖属性を使えというのはお門違いだ。


 「気にするな。その力は闇属性と同じようにリスクが高いんだ。使わなかったからと言って、怒ったりはしない」

 「セイヤ……優しい……」


 セイヤのやさしさに微笑むユア。その表情がセイヤに全幅の信頼を寄せていることがわかる。


 「さて、そろそろ……」


 行くか、と言って起き上がろうとしたセイヤだったが、体が重くてうまく動かない。


 「セイヤ……?」

 「悪い。今になって疲労が……」


 白虎との戦闘に加え、瀕死からの回復。いくら肉体が戻っても、疲労だけは抜けなかった。これではセイヤが動けない。そこでユアがあることを思い出す。


 「これ……」


 ユアは懐から三本の試験管を取り出した。試験管の中に入っているのは透明な液体。


 「それは?」

 「水……泉の……」

 「いつの間に」

 「セイヤがいなかった時に採っておいた……」

 「でも試験管はどうやっ……聖属性か」

 「そう……」


 どうやらユアは聖属性で試験管を生成して水を採集していたらしい。ユアは試験管を開けると、中の水をセイヤの口に流し込む。


 するとセイヤの体の疲労が薄れていく。結局セイヤは三本の試験管全てを飲みつくし、やっと回復したのだった。


 「ユア、ありがとな」

 「気にしないで……仲間だから……」

 「仲間、か……」


 セイヤが誰にも聞こえない声でつぶやく。


 その時だった。


 突如二人の立っていた地面にひびが入ると、そのまま崩壊を始める。


 「これは!?」

 「地盤沈下……」


 二人は咄嗟に何かに掴まろうとしたが、掴むものがなく、そのまま崩壊した地面と共に落下していく。


 「ユア!」

 「セイヤ……」


 落下する二人は空中で手を取り合うと、態勢を整える。


 「ユア、行けるか?」

 「任せて……」


 ユアは頷くと、自分たちが落下する先に向かって魔法を行使する。


 「『光壁』……」


 地面に弾力性のある『光壁』を展開したことで、二人は落下による転落死を回避した。『光壁』に落下の衝撃を殺させて地面に降り立った二人は辺りを見渡す。


 「ここは……」

 「最深部……?」


 二人の前に広がる光景。それは湖だった。


 正確に言うのであれば、二人が降り立った地面が孤島のように真ん中に位置し、周りをすべて水に囲まれた場所だ。


 しかもその水はとても澄んでおり、何百メルあるのかわからない水底まで容易に見える。そこは綺麗というより、奇妙な場所だった。


 「上が騒がしいと思ったら、こんな鼠が紛れ込んでいたのね」

 「「!?」」


 突然の声に二人は驚く。その声はどうやら二人の頭上から聞こえてきたようだ。


 「あれは……」


 セイヤはそれを見て、言葉を失う。そこにいたのは空中に据え付けられた椅子に座る女性。まるでサファイヤを連想させるような碧い髪に、人間離れした美しさを宿す蒼い瞳、そして自己主張の激しい豊満な双丘。スラッと、だが確かに肉のあるむっちりとした白い生足。


 それらを兼ね備えるのは妖艶な雰囲気を纏う女性だった。


 「なぜここに……」


 ユアはその姿を見て疑問に思う。なぜ人間がこのような場所にいるのか。ここは強力な魔獣の住処であるダリス大峡谷だ。


 人間が住めるとは到底思えない。


 ユアはそこでやっと気づいた。セイヤも同じく。


 「ユア、あれは……」

 「多分合ってる……」

 「やっぱりウンディーネか」


 ダリス大峡谷には水の妖精ウンディーネが住んでいる。どうやらその噂は本当だったらしい。二人の前に座る女性こそが、ダリス大峡谷の主にして水の妖精ウンディーネだった。


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