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第22話 神速の戦い

 「さあ、クライマックスといこうぜ!」

 グルァ!


 白虎の足元に紫色の魔法陣を展開するセイヤ。白虎はその魔方陣を見るとすぐにセイヤたちから距離を取る。別にセイヤは白虎が闇属性で消滅してくれるとは思っていない。


 今の攻撃は距離を取るための牽制だ。


 両者の間は約十五メル。すでに光の壁はない。だが白虎はセイヤに襲い掛かろうとはしない。いな、できなかった。


 セイヤの纏う殺気が白虎の動きに躊躇いを生じさせていた。


 「初めて使うが、どこまでいけるか」


 セイヤはそう言いながら、体内で光属性の魔力を錬成させていく。すでに『纏光』を発動しているセイヤだが、さらに魔力を錬成していき、その量を増やしていく。


 明らかに多い光属性の魔力。セイヤはその魔力すべてを纏いきると、今度は魔力の質を高めていく。


 今から使う魔法はセイヤの中でも最強クラスの魔法。実戦で使うのは初めてだが、理論上は完成している。ただそれまでは枷がなかったから使えなかった。でも闇属性を取り戻したことで、その心配はなくなった。


 だからセイヤはその魔法を行使する。


 「『纏光』限界突破オーバーリミット


 その魔法を発動した刹那、セイヤの視界から色が消えた。正確に言うのであれば、視界から無駄な情報がそぎ落とされてモノクロの世界になる。


 その魔法は一種の境地に到達する魔法。


 そしてセイヤは、神速となる。


 「行くぞ」


 ビュンという音と共にセイヤは白虎に向かって迫る。自身を活性化させているにもかかわらず、白虎はセイヤの攻撃についていけない。


 それもそのはずだった。白虎の速度はよくて高速。それに対してセイヤの速度は神速。


 速さの格が違っている。


 「くらえ」

 グラァぁぁ


 セイヤの拳が白虎の腹部にめり込み、そのまま壁に衝突してしまう白虎。 隙を与えぬ間にセイヤが白虎に近付くと、そのままホリンズで打撃を加える。


 グラァ!


 ここまで二撃を加えたセイヤだが、白虎にダメージは蓄積されるものの、致命傷には程遠い。さらにセイヤの攻撃を受けたせいで、白虎の瞳にも殺気が宿る。


 グルッ、グラァァ!


 まさに獣といった雄たけびを上げる白虎。そして変化は唐突に訪れた。


 バチバチと音が鳴り、白虎の体中に雷が纏われていく。毛並みは逆立つように立ち、白い毛が帯電していく。

 その姿は白虎というよりも雷獣に近い。


 だが驚きはそれだけではなかった。


 「ほう、この速度についてくるか」


 何とセイヤの神速について来たのだ。


 「雷を帯電して自身の細胞を強制的に活性化させたのか」


 魔法師には不可能に近い荒業を使った白虎に対し、セイヤは少なからず興味を覚えた。そして同時に、神速の世界での戦いに胸を躍らせていた。


 そんな両者を見ていたユアが呟く。


 「あの雷……」


 『単光』で上昇させた視認能力でなんとか戦いの痕跡を追うユアは、戦いに集中しながらも決定打を撃つために準備を始めるのであった。





 神速の世界に身おいているセイヤと白虎の戦いは激しかった。


 セイヤがホリンズで白虎の瞳を貫こうとすれば、白虎が避けて魔法を行使する。セイヤはその魔法を闇属性で対処して白虎の背後を取るが、そうなると白虎は自身を中心にした広範囲の放電を行う。


 その放電を防ぎつつ、ユアの方にもいかなように消滅させたセイヤが白虎の足元に紫色の魔法陣を展開するが、やはり白虎はその魔方陣から距離を取る。


 「なかなかしぶといな」

 グルルルルル


 睨み合う両者。


 下手に攻撃をしても相手に隙を見せるだけ。殺気をぶつけ合う均衡状態が続く。


 セイヤの魔法は攻撃力が低い。そのため白虎の体にホリンズを打ち付けても打撃にしかならない。


 そのため狙える場所は雷で硬化されていない瞳、もしくは鋭い牙か爪。


 雷属性は風属性から派生した派生魔法のため、特殊効果も風の効果を引き継いでいる。


 だから雷を纏う場所は硬化によって硬くなっているのだ。


 かといって、白虎が無防備にその場所を攻撃させてくれるわけがない。白虎にとってそこは弱点なのだから、弱点を守るのは当然である。


 「どうするか……」


 セイヤは白虎の全身に注意を向けながら自分の魔力量を考える。『纏光』限界突破は言ってしまえば高リスクの博打だ。


 通常の『纏光』と比べ、限界突破には上昇の上限がない。


 そのため身体能力をどこまでも上げることができる。しかし上昇しすぎた身体能力はいずれ自らの肉体を崩壊させる。


 光属性の魔力はプラスだ。


 そのプラスを一方通行で流し続ければ、いずれプラスを受け取る器が限界を迎える。ならその器も上昇させてしまえばいい。


 これが限界突破の基本原理だった。そして上昇させすぎた器が肉体を壊す。止めようにもマイナスがなければプラスを止めることができない。


 だから今までセイヤは限界突破を使おうとはしなかった。


 「最悪は闇属性でなんとかなるが……」


 しかしセイヤが闇属性を取り戻した今、セイヤはプラスだけでなく、マイナスも手に入れたことになる。光と闇は相反する二つの属性であり、お互いがお互いを消し合う。


 そのため限界突破で上昇させすぎた魔力を闇属性で消滅することは可能だ。けれどもそれにも問題があった。


 それは闇属性を使う時の魔力消費量である。


 消滅する魔力も、消滅させる魔力も、どちらもセイヤの魔力。自分の魔力を自分の魔力で消滅させることはあまりにもバカバカしい。


 そしてそんなことを何回もやってしまえば、すぐに魔力欠乏症に陥ってしまう。だからセイヤは最後の一線を超えることができなかった。


 「かっこ悪いが、ユアに任せるしかないか」


 セイヤはそう言って、再び白虎と剣を交えるのであった。

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