表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/31

第15話 異端の成長


 翌日、ダリス大峡谷は思いのほか早く着いた。


 太陽が昇るとともに活動を開始した二人。それから一時間くらいだろうか、ダリス大峡谷が二人の前に姿を現す。


 「ここがダリス大峡谷……」

 「そう……そしてこの先がアクエリスタン……」


 セイヤの前に広がるのは断崖絶壁。下を覗こうにも、地面を見ることはできない。かといって、飛び越えようにもかなりの距離がある。


 しかし驚くのはそれだけでなく、峡谷の向こう側には大きな山がそびえ立っており、その先は遮られて見えない。大きな山が放つ威圧感に加えて、そこに見えない深い谷底の恐怖。まさにそこは泣く子も黙るダリス大峡谷だった。


 「それで、どうするんだ?」

 「決まってる……」


 セイヤが尋ねると、ユアは迷いなく谷底に向かって歩き始める。


 「おい、まさか……」

 「行くしかない……」

 「勘弁してくれよ……」


 今にも谷底に向かって飛び降りそうなユア。つまりユアは飛び降りて谷底に向かおうとしているのだ。


 「本気か?」

 「うん……」


 セイヤの行きたく無いオーラを無視して、ユアはセイヤの袖をつかむ。


 「お、おい……」

 「問題ない……」


 次の瞬間、ユアはセイヤのことを引っ張り、そのまま谷底に向かって足を踏み出す。そして二人は暗い谷底に姿を消したのであった。


 「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」


 谷底に向かって飛び降りた二人。三十秒近く経ってもまだ地面が見えない。視線の先に見えるのは暗い谷底だけ。


 「ユア、どうするんだ!?」

 「大丈夫……」


 時間が経つごとに不安の増していくセイヤ。この速度で地面に衝突すれば、いくらセイヤでも無事ではいられない。というより、生きていられない。


 闇属性で落下速度や重力を消滅できないかと思ったセイヤだが、手に触れることのできないものは消滅させられない。


 ホリンズを壁に突き刺して減速も考えたが、それもこの速度では不可能だ。かといって、地面にクッション性の高いものを召喚する魔法なんて使えない。


 まさにセイヤは史上最大の危機だった。


 「あれは、くそ!」


 落下を続ける中で。視線の先にうっすらと地面が見えてくる。だが次の瞬間には目前へと迫っていた。


 終わった。セイヤが心の中で確信したその時だった。


 セイヤの袖を掴んでいるユアが呟く。


 「『光壁シャイニングウォール』」


 ユアが魔法を行使し、地面に黄色い壁を展開させる。だが『光壁』は防御魔法であり、速度を減速することはできない。むしろ体が硬い壁に強く打ち付けられる、はずだった。


 だがセイヤの体を襲った衝撃は硬いものにぶつかったようなものではない。むしろ柔らかい何かに体を包み込まれるような感覚だった。


 「これは……」


 セイヤは自分の体の下を見てその正体を理解する。


 地面に体を打ち付けられる衝撃から身を守ったのはユアの行使した『光壁』だ。しかしそのクッション性はセイヤが見てきた中で一番柔軟性がある。


 セイヤは一瞬その魔法が本当に『光壁シャイニングウォール』なのか疑った。


 それほどまでユアの魔法は緻密にコントロールされている。果たしてレイリアにこれほどまで魔法のコントロールに長けてる魔法師はいるだろうか。


 セイヤは心の底からユアの実力に驚愕していた。


 今までの戦闘はセイヤが請け負ってきたが、もしかしたらユアの方が自分よりも強いのではないかという疑念が過る。


 同時に、ユアとならダリス大峡谷を攻略できるのではないかとも思った。


 「凄いな」

 「うん……」


 セイヤに褒められ、少しだけ嬉しそうなユア。


 「それで、次はどっちに向かうんだ?」


 ダリス大峡谷の谷底に到着した二人。谷底は左右を断崖絶壁に挟まれた一本道であり、進む方向は前か後ろだ。どちらを通っても過酷な道に違いないが、通るなら少しでもアクエリスタンに近い方がいい。


 「セイヤはどっちだと思う……?」

 「俺か? そうだな、こっちじゃないか?」

 「どうして……?」

 「こっちの方がレイリア側に進んでいるから」

 「同じ意見……」


 セイヤが選んだ方向は進行方向。ダリス大峡谷の谷底はアクエリスタンとフレスタンの境界線とほぼ平行に伸びている。つまりレイリア側に進めば、おのずと近道になるということだ。


 「じゃあこっちで行くか?」

 「うん……」


 意見が一致した二人はそのまま一本道を進んでいく。だが問題はすぐに発生した。


 「セイヤ……」

 「ああ、魔獣だな」


 歩くこと数分、二人の前に姿を現したのは虫型の魔獣。


 その大きさは約一メルほどで、数は全部で十五匹。ブーンとは音を立てながら一瞬にして二人に事を取り囲むように飛行する。


 「どうする……?」

 「俺がやる」

 「そう……」


 セイヤがそう言うと、ユアは一歩下がり、セイヤのことを見守る。その様子は少しだけ不満そうだが、セイヤは気づかない。


 十五匹の魔獣を見据えたセイヤは自分の頭上に紫色の魔法陣を展開する。行使する魔法はいつも通り『闇波』。けれども消滅させるのはもちろんセイヤではない。それに今回は足元に魔法陣を展開していない。


 そもそも闇属性初級魔法の『闇波』は魔法陣から発せられた闇の波動を使って触れたものを任意で消滅させる魔法だ。


 セイヤが対象を消滅させるときに頭上と足元に魔法陣を展開したのは二つの魔法陣から発せられた闇の波動が対象の一部で合成され、一時的に威力を高めるためである。


 そのためセイヤは同時に二つの魔法陣を展開しているのだ。


 だが今回の相手は今までの相手よりも体が小さい上に飛行している。個体別に狙っていてもすべて消滅させることができない。


 だからセイヤは今までとは攻撃方法を変える。


 「『闇波』」


 セイヤが魔法を行使した刹那、魔方陣を中心にして真横に発せられた闇の波動が虫型の魔獣に襲い掛かる。

魔法の有効範囲はセイヤの頭上以上にあるもの。つまり飛行している魔獣たちだけだ。


 魔獣は一瞬にしてその身をこの世から消滅させられて絶命する。


 「流石闇属性……」

 「ありがとな」


 お礼を言うセイヤは魔獣を倒した中で、少しずつ闇属性の魔力が自分の体に馴染んできていることを感じる。それは初めて闇属性を使った時から顕著だった。


 (これは慣れというより……体が思い出しているのか……?)


 自分の中で加速する何か。それがいいのか悪いのか、今はわからない。


 しかし闇属性が自分の体に馴染んできていることは今の段階ではプラスに働いている、おかげで魔獣との戦闘で費やす魔力の量は戦いを重ねるごとに減っている。


 セイヤは効率的に魔獣と戦うことができていた。


 そして魔獣との戦いはその後も続き、セイヤはさらに成長するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ