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第7話 ニート

「平和ですね~母様」


「そうね」


「フォルテ様、じきに中間地点へ到着します」


「そうね」


「フォルテ様、ヴァイス様。こちらに美しい花が見えますよ」


「あら、本当ね」


「「「「⋯⋯⋯⋯⋯」」」」


 平和。

 平和すぎる!!

 何も起こらない。

 街によって、ごろつきに絡まれたり⋯⋯なんてこともなかった。

 この馬車の見た目が思いのほか影響しているのだろう。私でも手を出すことも躊躇うほどの豪華さだから、仕方ない。

 私たちが魔国の首都・マジッカー大鍾乳洞を出てから早くも半月が経とうとしている。

 そして、天候にも恵まれて足止めを食らうことなく順調に進んでいるから、あと数時間ほどで中間地点である人の国・ラジカン帝国の首都・ラジコン大盆地だ。

 ここまで二つの小国を通過してきて、ラジカン帝国はここらでは二番目に大きな国となっている。

 魔国の者が入るのに問題はないのかと言えば、大ありだ。

 だけど、私とヴァイスは見た目エルフだし、そもそも見た目にそこまで違いがあるというわけでもない。

 なので、言わなければばれないのだ。


「暇ね」


「母様⋯⋯そればっかりですね」


「ヴァイスも暇でしょ?」


「それはそうですが⋯⋯」


 ほら。

 ちらっとフレイアを見ると、歳をそれなりに取っているからかのんびり過ごすことも好きなのだろう、外に視線を移して花畑を堪能しているようだ。

 ケンを見れば、20歳と若いからか貧乏ゆすりまでしている。

 二人とも、魔王の家族の専属に選ばれるだけあって相当な実力者ではあるので、心配は必要ないだろうが。

 それから数時間。

 やっぱり平和なままラジコン大盆地までやってきた。


「身分証を」


「はい」


 街を囲っている壁には門が4つあって、平民用と王侯貴族用と分かれており、入り口出口と二つずつある。

 私たちはこんな馬車であるからして王侯貴族用を通るほかない。

 平民用であれば、身分証を提示しなくてもいいというのに。


「⋯⋯っ!これは失礼いたしました!」


「いいのよ。通してもらえるかしら?」


「どうぞお入りください!」


「ありがとうね」


 渡した身分証を受け取って中へ進む。

 私の身文章は、もちろん魔国のものではなくエルフの国のものだ。

 魔力を登録して本人確認もできるので別の人が持っていればすぐにばれてしまう。

 そして、私の身文章とはすなわりエルフの王族という身分を示すもの。

 つまり、ここ王侯貴族用の門兵をしているのが彼のように伯爵の位を持っていようと、姿勢を正すのだ。


「ここがこの辺り一帯の小国を傘下に収めている国の首都、ラジ、ラジコ⋯⋯ダメです母様。笑いが止まりません」


 ヴァイスはよくわからないところで笑ったりする。これはいつものことなので、まぁ、放っておけばどうにでもなる。


「宿はどうされますか?」


「そりゃあ、貴族用よ。王族用なんて使ったら身元がばれてしまうかもしれないでしょう」


「そうですよね、わかってました」


 ならどうして聞くんだ。

 フレイアが馬車から降りて、先に宿を確保するらしい。


「私たちはこのまま、ヴァイスが行きたがってた教会へ行くわね。気を付けるのよ」


「はい。では、宿が取れ次第そちらへ向かいます」


「ええ。待っているわ」


 フレイアが軽く会釈して離れていく。

 それと同時にケンが手綱を取って、まずは馬車を預けに行く。

 預屋と呼ばれるところへ行けば、馬と車を預かってもらえるのだ。


「では、確かにお預かりしました」


 預屋は大きさにもよるが、1台およそ3500ニートだ。


 私たちはそこからは徒歩で移動することとなった。

 預屋から十分離れたところで、私は口を開く。


「ほんと、預屋はぼったりくりね」


「そうですね。俺が街の外でお預かりするという手もありますが⋯⋯」


「それだと本来の仕事ができないでしょう?」


「⋯⋯はい」


 ケンの仕事はヴァイスの護衛も含まれている。だから、ヴァイスから基本的に離れることは許されない。ましてや、この子には戦う力がないのだから。


「母様、それほどに高かったのですか?僕はまだお金のことを知らないのですが⋯⋯」


 あら?ヴァイスはまだ教わっていなかったのね。

 なら、今教えておくのもいいかな。


「ヴァイス様。世界共通通貨と呼ばれるものと、国家共通通貨と呼ばれるものがあります。それぞれ、世界で通用するものと、それぞれの国内でしか通用しない通過のことです。この旅では世界共通通貨しか使わないので、国家共通通貨は国へ戻ってから説明致しますね」


 私が説明をしようとしたらケンが請け負ってくれた。

 ヴァイスには⋯⋯というより、子どもたちにはあまりいいところを見せられていないので、私が物知りだと印象付けたかったのだけど、どうやらそれは叶わないらしい。

 ヴァイスが頷いたのを確認し、ケンは説明を始めた。


「世界共通通貨はこちらの銅貨、金貨、銀貨、ヌル鉱石が使われております。銅貨は一番小さなもので、準に上がっていきます。ヌル鉱石1つにつき、およそ銀貨1300枚とされています。世界共通通貨の単位はニートでして⋯⋯「ぶふぉっ!⋯⋯けほっ⋯⋯あ、あぁ。ごめんなさい。続けてください」は、はい。銅貨1枚で1ニート⋯⋯「ぶっ⋯⋯あ、ごめんなさい。気にしないで」はぁ⋯⋯?銅貨100枚で金貨1枚となっていまして、金貨1枚は100ニート⋯⋯「ごほっ⋯⋯」大丈夫ですか⋯⋯?「問題ない」そうですか?続けますね。金貨50枚で銀貨1枚となっておりまして、銀貨1枚は5000ニート⋯⋯「っん⋯⋯」となっています。以上ですね」


「ありがとうございます。ケン」


「いえ。⋯⋯それより、本当にお体の方、ご無事ですか?風邪でしょうか⋯⋯」


「本当に大丈夫なので、気にしないでください」


 本当に、ヴァイスは一体どうしたのかしら⋯⋯。

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