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第3話 出産

「王妃様!頭が出て参りました!もう少し、もう少しです!」


 魔王のアレが出たり入ったりしていたところから、赤ちゃんが出てくるなんて予想だにしていなかった。

 そんなの、学術院では教わらなかったんだ!


「んぐぅぅぅうう!!」


「フォルテ!俺はここにいるからな!絶対、側を離れたりしないから!」


 パデリックも珍しくあわあわしている。

 それを見られただけでも……なんて気を緩めている場合ではなかった!


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!


「魔王様!もう少し近寄ってあげてくださいませ!」


「む、む!こうか!?」


「そうです!」


 パデリックが更に近くに寄ってきた。

 その顔は今にも泣きそうで、私と私から出てくる赤ちゃんを見て必死に声援を送ってくれる。

 だから、頑張ろう。そう思えるのだ。


 けど、ただ1人、空気を読まない奴がいる……。


「うっ……グロい。生命の神秘だから見たかったけどこれはないわー……なにこのグロさ。グロコンテストで満点取れるわー……」


 くぅっ!!

 この人絶対に許さないんだから!!


「マキト」


「はいはい、なんですか?魔王様」


「お前は少し黙っておれ!」


 パデリック……ありがとう。

 やっぱり、私にはあなたしかいないわ……。


「ですが、やはり生命の誕生は神秘なわけで、どうしても見たい。……あぁ、魔王様がこの穴を使っていたんですね。そして、そこからお二人の赤ちゃんが産まれると。素晴らしいですね。これぞ愛の育み。先人は偉大な言葉を残していたようです」


 マキト!絶対に許さない!これが終わったら牢獄に入れてやる!


「マキト様、あまり邪魔をなされるのでしたら出て行っては貰えませんか?」


 ナイス!流石専属侍女のフレイア!

 だけど、マキト……もとい魔王の側近として巷に知られている黒衣に身を包み、漆黒の髪と漆黒の瞳を揺らしている、正確な立場は魔王の相談役。

 憎き大魔導士だ。

 その大魔導士が、なにやらよくわからないことを言い始めた。


「フレイア、腹の上に乗ろうとするんじゃない。それはダメだ。最悪赤子が死んでしまうし、王妃様も死んでしまう」


 私は力を入れ続けながらもポカンとした。

 赤子が死ぬのは、それは弱いから仕方のないことよ!

 腹の上に乗って押し出さないと赤ちゃんって出ないじゃない!


「少しどいていろ」


 フレイアの肩をひっつかんでマキトが私に手のひらを向ける。

 そこに魔力が集まって行き、それは展開された。


『リ・コール』


 もうこんな人無視よ、無視!

 赤ちゃんを早く出してあげないと、いけないのに!この人は呑気に魔法なんて使って……!


 何が相談役。

 何が大魔導士だ。

 ただの役立たずじゃないか。


 目を瞑って思い切り力を入れていく。すると、フレイアだけではなくパデリックからも「なんだこれは……」と呆然とした呟きが聞こえた。

 とても気になってしまい、力を緩めないように注意して目を開くと、そこには無数の、待機中(・・・)の魔法陣があった。


『リ・フィッシング』


 マキトが二つ目の魔法を使った。それは、あの待機中の中から選ばれた一つなのだろう。

 あまりにも凄い光景だったので、力が緩みかけた。

 だからまた目を瞑って力を入れまくっていたので、どれを使ったのかはわからない。


 だけどその瞬間、するすると私の中から赤ちゃんが出てきた。


 ……わけがわからない。


 でも、赤ちゃんは産声を上げてその命を声高らかに宣言した。

 あぁ、私の役目は、終わったんだ。

 そう思い、力が抜けていく。




 気がつくと、ベッドの上で寝ていたようだった。


「お目覚めになられたのですね。フォルテ様、こちらがあなた様のお子様になられます」


 渡された我が子を優しく抱く。

 あぁ、なんて愛おしいの。

 体が小さく、と言っても、今でもあそこから出てきたなんて信じられないくらいの大きさはある。それに、軽い。

 将来もっと大きくなるんだよ、と心の中でエールを送る。


「フォルテが目覚めたとは本当か!」


 ドカンと扉を吹き飛ばして入ってきたパデリック。

 吹き飛ばされた扉は私に一直線に向かってきている。


 パデリック!?私を殺す気!?


 私の魔力量と展開速度では、魔法で回避することは難しい。

 かといって体は動けないほど怠く、重い。


「何やってんですか魔王様……」


 そこへ呆れたようなため息と共に魔法陣が一つ、私の前に現れた。

 展開された魔法は、一言で言えば闇。

 底の見えない、恐怖すら感じさせない底なしの闇。


「す、すまん。つい……」


「俺がいて良かったですね、王妃様」


「確かに……出産の時も、そうだったわね。今更だけど、助かりました。ありがとう」


 あのままだと、どのくらいかかっていたかわからない。

 頭が出てからが異様に出てこなくなっていたから。


「これが、俺の子か。なんと……男ではないか!よくやったぞ、フォルテ」


 頭をワシワシと撫でられる。

 だけど、本当にいいのかな。

 だってその子は……。


「ハーフエルフ、か?」


 私の内心を見透かしたかのようにパデリックが言った。


「……はい」


「心配いりませんよ、王妃様。ハーフエルフというのは二つの種族の力を受け継いでいるのですから」


 そう、他種族と子を成せるのは、エルフしかいない。

 そして、他種族との子はハーフエルフと呼ばれている。

 ハーフエルフは……ある国では奴隷対象だ。



3話目!

2000文字はやっぱり書きやすいですね。


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