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第2話 妊娠

 私がパデリック(魔王)のことを世界に認めさせてやると決めてから、半年が経過した。

 そして、私のお腹はそれなりに膨らんできている。

 今は安定期と言って、それほど辛くない時期だ。

 ⋯⋯そう。私はパデリックのことを認めさせるどころか、妊娠してしまって、初めての妊娠に戸惑い困惑し、侍女たちに介抱してもらいながらなんとかここまで持ちこたえている。

 だから、何も出来ていない。この半年もの間、ただただパデリックの子を授かれたことを嬉しく思い、絶対に産んでやると決めている。

 突然だが、この世界は魔力量で寿命が決まっている。

 パデリックは大魔導士に近い魔導士だから、恐らくあの間抜けな大魔導士の次に長命だろう。

 それに比べて私は魔術師。天と地ほどの差がある。

 けど、問題ない。

 お互いの体を預け合い、致すことで寿命を延ばすことが出来るからだ。

 魔力というのが一番含まれているのが、精巣と卵巣だと言われている。そこから分泌される、精液や愛液と言ったものに魔力が多大に含まれており、体の体内に直接取り込むことで、魔力量の多い方に染まるというようになっている。

 この場合、私よりもパデリックの方がより大きな魔力を持っているため、私の魔力量が少なくとも、こうすることで今では同じ寿命となっているはずだ。

 これは永続的な効果があり、妊娠するということはつまり、最大値に達したということを意味している。


 これを逆手にとって、生きながらえようとする人も世界には溢れているけど、魔力量が多ければ多いほど基本的に強いので——元勇者な私は例外的な強さを持っている——双方合意の元、行われる。

 無理やりしようとすれば、命にかかわってくるのだから当然と言える。


「王妃様、お体の調子はどうですか?」


「問題なさそう。これならパデリックのところへ行けるわね」


「無理はなさらないでくださいね」


 そう言って微笑を浮かべる。

 この専属侍女は良くできた人だ。私のすることなすことに全て良し悪しをつけてくれる。それをしては妊婦の体に障るだとか、そう言ったことだ。

 恐らくそれなりに長生きしてるのだろうと思う。

 見た目は30代にしか見えないが。

 彼女の髪は青く、緑である私と近い色だ。青緑と言ったほうが正しいかもしれない。

 瞳もそれと同色で、その中にはやさしさと厳しさが入り混じっている。

 身長は170ほどもあり、私より10センチも高い。

 羨ましい⋯⋯。

 パデリックとの身長差は30センチもあって、彼は190センチもある。

 せいぜい胸辺りまでしか届かないから、少し悲しい。

 だけど、そんな私を見ると、パデリックは頭を撫でてくれたりするので悪いことばかりでもない。


 私はフレイア(専属侍女)と一緒に、仕事をしながらでもつまめるように一口サイズの様々な形のクッキーを焼いた。

 こうしたことは一通り王立学術院で学んでいるから、大抵のことは一人でできる。

 王立学術院と言うのはエルフの国にある、王族は6歳から12歳まで在学する学び舎のことだ。

 私は12歳で卒業と同時に勇者として選ばれ、13歳でパデリックの元へ辿りつき、その後今に至る。

 パデリックは34歳で私は23歳。

 10歳以上の年の差なんて、魔力量が基本的に多いエルフではよくあることだ。

 だから、そこらへんはあまり気にしていない。



「パデリック、いる?」


 扉をノックして声をかけると、中から返事が返ってきたので入室する。後ろにはフレイアも控えていて、私はずんずんと部屋の中に入っていった。


「体は大丈夫なのか?」


 いたわるように瞳を揺らしながら問いかけてくる。最強の魔王なのに、と思ってクスリと笑ってしまう。


「大丈夫。安定期に入ったのですよ」


「そうか⋯⋯よかった」


 パデリックは視線を移して私の持つバスケットの中を覗き込み、クッキーを一つぱくりと口に放り込んだ。


「んむ。甘くて美味いな⋯⋯やはりサトウキビの栽培を優先的にさせるか」


 パデリックは小さい頃から甘いものが好きらしく、甘いものを食べると幸せな気分になれるのだとか。

 だから、いつも差し入れを持ってくるときは甘味と決めている。


「いけません。確かに、サトウキビは砂糖の原料ではありますが、もっと他にやることがあるでしょう」


 パデリックの隣に影が現れ、その容姿を見た瞬間咄嗟に後ずさった。本当は跳んで下がりたいけど、身重な私では出来ないようだ。


「何故、あなたが!」


 声を荒げ、その人物を見る。

 黒衣に身を包み、漆黒の髪に漆黒の双眸。それはまるで異世界から着たと言っていた勇者と似ている⋯⋯が、これは違う。

 これは元々こういう容姿で恰好なのだ。


「落ち着くんだ。フォルテ」


 一瞬で私の隣に移動したパデリックから甘い声が届き、トクンと心臓が跳ねて緊張の糸が切れた。


「⋯⋯ごめんなさい。だけど、どうして生きているの?」


「俺がそう易々と殺されるわけないでしょう。王妃様、俺を殺すには魔王様を10人は連れてこないと」


 けど、倒したのだ。

 あの時確かに、この手で。

 黒衣を斬り裂き、真っ赤な血が飛び散った。

 あの時の光景は今でも目に焼き付いて離れない。


「そんなの、嘘。あの時確かにこの手で⋯⋯」


「残念ですけど、本当です。魔王様10人でも足りないかもしれませんがね」


 そう言ってケラケラと笑う。

 どこまで本当でどこから嘘なのか、全くつかめない。


「こいつのことは気にするな。俺でも本気で戦えば負けるだろうからな」


 そんなっ!

 最強だから魔王なんじゃないの?


「フォルテ⋯⋯こいつはちょっと特別なんだ。お前が気にするようなことじゃない。だから、忘れろ」


「⋯⋯っ!忘れたくありません!私は、あなたのことをもっと知りたい。だから、あなたの側近のことも、教えてほしいのです。⋯⋯今でなくても構いません。いつか、話してもいいと判断したら、で構いません。だから、その忘却の魔法をおさめていただけませんか⋯⋯?」



とりあえず2話目はかけた(ホッ

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