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2010  作者: 篠崎彩人
1「審判の日」

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0?「愛幻親」

 人の子が現れてきた、この居住区の存在理由、主要素である、子達が。白の彼女を取り巻く蝶のそのまた周囲を取り囲むような形で彼らは現れた、蝶が群れを成して目に見えない何かに釣られ動いている様に興味を引かれたのだろう。その彼らの介入は蝶の選択肢を作った、ひょっとするとこの天国における籠の鳥である彼らの籠に収められてしまうその危険を敢えて冒して白の彼女の蜜の予感を追い続けるか、それともここでその見えざる蜜との決別をし今まで追い求めていた在り来りながら十分に己の生命欲を満たしてくれる他の花に記された魅惑の蜜の光学記号を改めて探すか、その両者だ。蝶達はほぼ半々でその選択肢を選んだようだ、半分近い蝶は子供らが蝶を眺めつつ追いかけつつその群れの整然を掻き乱そうと群れにちょっかいを出したり突進したりしている内に白の彼女を離れ何処かまた地獄の死の森や天国の未知なる花園へと消えていった。残った蝶はこれら圧倒的な強者子供の齎す恐怖と憂鬱を噛み潰しながら白の彼女の取り巻きを続けている、それほどまでにこの白の彼女は力強い生命の波動を発していると言う事なのだろう。この子供達もひょっとすると表向きにはこれら蝶の群れを面白がってここに集ってきたのかも知れないが、無意識下では、いや意識する範囲内でもこの蝶を結びつける未確認動体エネルギーを感知してそれに蝶達と同じに圧倒的に魅了されて寄って来ているのかも知れない。子供達が耐え難く惹かれる物の内簡単に連想出来る物に、親が在る。これら子は、親が居ない筈なのだ、何故なら誰も大人になる事を許されていない世界だからだ。誰も子供を辞めて彼らを養育し慈しみ彼らと微笑みを共有し合う立場、親になってくれない、だから親は彼らからすると見た事も無い空想の中の巨人でしかないだろう。御伽噺の中の巨人イコール親の世界で生きて来た彼らは、多分何かが圧倒的に惹かれていて尚且つその何かが惹かれているそれが全く分からない、見えて来ない、と言う状況に弱い、それは彼らの触れ得る世界の裏側への空想、例えば渡り鳥があんなにも大勢で羽ばたいて行く先には一体何が有るのだろうとか、蟻が懸命に餌を運んでいく地面の中には一体どんな広がりが有るのだろうとか太陽が落ちていく空の果てでは一体どんな世界が新たに光を受け朝を迎えているのだろうとかそうゆう空想を通常の親持ちの子より強烈に抱いてしまうのであろう彼らの心理構造に顕著である筈だ。彼らはそう言った何かが惹かれている、何かが目指しているその未知なる対象に、彼らにとっての惹かれる目指すべき未知なる目的物、親、それをどうしても思い浮かべてしまうのだろう。渡り鳥は緑豊かなる水辺と言う、蟻は暖かなる大地と言う、太陽は新たなる地平線の向こう側の朝焼けと言う、それぞれの場所へと帰っていく。彼らにもきっと帰るべき家は在る、だが、帰ってその帰宅を祝福してくれる存在、親は、多分その代替者に置き換えられていて存在しないのだろう。彼らは、彼らの空想の親を探しに来たのかも知れない、渡り鳥や蟻や太陽の場合と違い、蝶の目指す対象は見えないながらも彼らの手の届く範囲に確実に在るらしいのだ、彼らがそこに親的な物を期待しない方が不自然だ、論理でそれが親ではないと分かりきっていたとしても。だが白の彼女は子供達に興味を示す事は無かった、私の記憶の中の人の彼女が今の白の彼女の人格根源なのだろうから、つまり彼女自身もまた子供でしか無いのであろうから、子供に対し何かそれ程特別な愛情を抱ける訳ではないのだ。ふいに、白の彼女と五年の精神年齢差(肉体的には人の彼女がモデルだから身体年齢差は無い、と言える)が在る人の彼女を思い浮かべた、彼女の五年は、彼女をより大人に、母親のポテンシャルを持つ大人の女性に近づけただろう、天使になってしまった女性と言う性を認識出来なくなってしまった私による想像など優に超える位に。私は、そんな母親としての輝きを持った彼女の微笑みが見たい、と飢える位に願っている自分に気付いた、私もまた、親への憧憬に苛まれ続けた不運な子供の一人だった。

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