表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

童話シリーズ

どうしても独りになりたくなかった女の子の話。

昔々、あるところに美しい女の子がいました。


彼女は、金細工のように美しい髪と夏の空のような青い潤んだ瞳、陶器のような白い肌を

持っていました。

小さい頃は、妖精のようだと周りにちやほやされて育ちました。

ある程度育ってからは、沢山の男の人たちに女神のようだと褒められ、求愛されました。

女の子は自分が成長し、美しくなる度に群がる数が増えて行く周囲の人達を見て心底思ったのです。

皆は、私の見た目に惹かれて集まってくるんだと。


女の子は、とても寂しがり屋だったので周りに人が沢山いることは喜ばしいことでした。


けれど、女の子はふと思いついてしまったのです。

若いうちは自分の周囲から人がいなくなることはないだろう。

けれども、年をとって自分の容貌が衰えたら、人々は自分に見向きもしなくなるだろうと。

誰にも振り向いてもらえず、誰にも話しかけてもらえない、ひとりぼっちの自分を

想像して女の子は心底怖くなりました。


女の子は、何日もの間悩みました。

そうして自分がいつまでも若く美しくいること、つまり不老不死を望むようになったのです。


そうして女の子は、古今東西のあらゆる書物を読むようになりました。

そんなある日のこと、女の子は古びて表紙が錆びた血の色のようになった本を見つけました。

その本には、魂と引き換えに願いを叶えてくれる悪魔を呼びだす方法が記載されていました。

女の子は、半信半疑になりながらも、そこに書いてある方法を試してみました。

そうして成功してしまったのです。

悪魔は永遠の若さと美しさを確約し、女の子は大喜びしました。


初めは、何年たっても変わらない美貌の彼女に周囲の人達も喜びました。

ですが、余りにも見た目が変わらない彼女に段々気味が悪くなっていったのです。

それは特に、女の子と毎日一緒に生活している両親が顕著でした。


やがて、女の子の悪い噂が流れるようになりました。

若い女を殺して、その血を飲んでいるから見た目が変わらないのだとかいう根も葉もない噂話です。

それでも女の子の家族は町の人々から酷い目に遭うようになりました。


そうして、女の子の両親は彼女を奴隷市場に売り払いました。

そこで、女の子はとびきり着飾らされるとオークションにかけられました。

女の子は、太った貴族のおじさんにとても高い値段で買い取られました。


貴族のおじさんは、彼女をお人形さんのように着飾ることを好み、時に寝室に引きずり込みましたが、

女の子が本を読みたいとねだると書斎のかぎを寄こしてくれました。


そこで女の子は、村で得た自分の知識がほんの一握りでしかないということを知りました。

それから、貪欲に知識を吸収していきました。


女の子は高価な品をおじさんにねだるところから始めました。

女の子がわがままを言ったことは殆どなかったので、貴族のおじさんは大喜びしました。

そして、沢山のドレスや宝石を与えました。


次に、人のいいメイドさんに外のお話を知りたいのと声をかけました。

元々、この美しい女の子に同情していた彼女は私でいいならと快諾しました。

女の子の情報網はそこから始まりました。

やがて、貴族のおじさんに夜会に連れて行ってもらうようになるとそれは爆発的に範囲は広がりました。

そうすると、盗難されたはずの王家の所有物である宝石が美しいものに目がない貴族のおじさんの屋敷に

あることが分かりました。


美の化身のような彼女は、愛人だと蔑まれながらも社交界では知らない者はいませんでした。

なので、簡単に王子様がやってくるお茶会に参加できました。

そこで、自分を引き取ってくれた恩のある貴族の方が、盗難されたはずの王家の宝石を持っていることを

王子様に打ち明けました。


女の子の望みどうりに貴族のおじさんは処刑にされました。


行き場のなかった女の子は、貴族のおじさんに貢がれた沢山の物を

ばれないように少しずつ換金していたので、当分生活に困らないだけのお金は持っていました。

これでやっと自由になれる、と女の子は思いました。


ところが、女の子を王子様が気に入ってしまい妾としてしまったのです。

王子様は、自分の生活を失う危険性を犯しても王家への忠誠を示してくれた美しい女子に

酷く執着しました。


そして、最も信頼されていた家臣に裏切られ、暗殺されかけてからというものの、

王子様が耳を傾けるのは女の子だけになりました。


それは、王様となり妃を持っても変わりませんでした。

沢山の家臣が彼女におもねりましたが、変わらない外見をもつ彼女は王を誑かす

悪い魔女だと噂をされました。


その状況に我慢ならなかったのは、お妃様です。

世間知らずだった彼女は、女の子が魔女だと真剣に考えました。

なので、神父様に相談し、聖水を手に入れたっぷりとナイフにかけました。

そうして、お妃さまは女の子をぶすりと刺したのです。

悪魔によってかけられていた不老不死の魔法は聖水によって霧散してしまい、

彼女はあっけなく死んでしましました。


女の子は、気がつくと魂だけになって悪魔の側にいました。

彼女は、私を食べるのかと悪魔に尋ねました。

悪魔は、いいや永遠に手元に置くといいました。


それから、幾ら月日を重ねても悪魔は振り返って話をしてくれました。

なぜなら、女の子は悪魔のたった一人の道連れだったからです。


女の子は、自分の本当の願いがようやく叶ったのを知りました。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お気に入りありがとうございます。 どうしても独りになりたくなかった女の子の話。読ませた頂きました。世界の空気感や童話ならではの濃淡というのでしょうか。そういうのが表現されていたと思います。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ