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とある男子大学生の目撃談かつ災難(笑)

現在不定期で連載中の「席替え*honey」のちょっと未来の話第2弾。

長文になります。ご了承ください。

 大学で知り合った島崎は、見た目がスラリとしていてクールな性格と声優もびっくりの“いい声”で、女子からの人気が高い。

 だから「島崎くんが来るなら合コンを設定してもいい」とか「絶対に島崎くんを呼んで」だの言われるので、俺は合コンに行くときは必ず島崎に声をかける。

 ところがヤツは「俺は行かない」とサクッと断る。かわいいと評判の子が来ると言っても、お嬢様大学の女の子たちとの合コンと言っても、絶対なびいてこない。

「島崎、お前彼女がほしくないのか」

「俺、彼女いるから」

「なんだ、そうなのか・・・っておい!何で今まで言わなかったんだよ」

「言う必要がない」

「一度彼女に会わせてくれよ~」

「嫌だ、減る。彼女に変なものを見せたくない」

「減らねーよ!!それに俺は“変なもの”じゃねえっ!!」

 島崎に“減る”なんて独占欲満載の発言をさせる彼女・・・俺は絶対にみてやるからなああ!!



 そんな密かな決意をした3日後、大学内のコンビニに入ると島崎を発見した。それもスイーツの棚にいる。あいつスイーツ好きなのか・・・ちょっと好奇心もあって、島崎のいる棚にこっそりと近寄っていく。

 島崎がじっと考え込みながら見ているのは、最近発売されたばかりで大人気のコンビニスイーツ「ピュアポップ」。デビューしたばかりのアイドルグループが宣伝していて、ここのコンビニでもよく売れているらしい。

 それにしても島崎とピュアポップ・・・・似合わない。島崎はいいやつだが、腹黒の雰囲気が漂うのは俺の気のせいだろうか。言えるのは絶対に敵に回したくないタイプってことだ。

 ピュアポップのコピーは“はじけるコイ……してみない?”・・・製品も似合わないがコピーはもっと似合わない。

 同時期に発売された「初恋ショコラbitter」の“ねえ、きみと甘さの先も知りたい”のほうがまだ似合ってないか?

 俺はヤツの死角から商品を探すふりをして観察を続けた。どうやら3種類の味で何にするか迷っているようだ。確か味が3種類あるんだよな。はたして島崎は何味を選ぶのだろうか。

 じっと商品を見て考え込んでいた島崎は淡い赤色を手に取ってカゴにいれ、レジに向かう。俺は島崎が会計を終えて店内を出たのを見計らってもともと買う予定だったペットボトルの会計を済ませて外に出た。

 島崎は今日の授業が終わったらしく正門のほうへ歩いていく。俺も少し離れて歩いていく。

 正門の側には大きな木があって、その周囲にはベンチが置いてあり休憩や待ち合わせにここの学生はよく使っている。

 島崎が歩いていく方向にいたのは、あごラインでそろえたふんわりとした髪型に黄色っぽいブラウスにカーキ色のクロップドパンツの女の子。本に夢中になっているらしく島崎がそばに来ても気づいていない。

 島崎、どうするのかねえ・・・・俺がそのまま見ていると、やつは女の子の隣に座ると耳元に顔を寄せた・・・・女の子は顔を真っ赤にして島崎のほうを見て、本をしまっている。

 うーわー、なんかあそこだけ雰囲気が甘いんですけど。しかも島崎の顔が、いつもの顔と違うんですけどっ。あれは本当に島崎か?!


 さっそく友人たちに教えなければ!!そう思ってスマホを取り出した俺の前に影が差す。

「・・・お前、さっきから俺に用事?」

「ひええっ、島崎!!い、いや用事なんてないぞっ」

「だったら、なんでコンビニから尾行してきて俺たちのほうを観察していたのか教えてくれないかな」

 俺たち・・・ふと見ると島崎の側にはさっきの女の子。島崎と俺を交互に見てなんだか困惑しているようだ。

 顔立ちや体型は普通の子だよなあ・・・クラスでも目立たない感じの。すると彼女の姿が消え、島崎が目の前に立つ。

「見るな、変なものが彼女にうつる」

「俺は病原体か」

「じゃあ理由を話せ」

「いや・・・その、お前がコンビニでスイーツなんて買ってるから、ちょっと好奇心にかられちゃって」

「・・・・ふうん」

 島崎の視線がすごく冷たい。視線で殺せるならとっくに俺は命を奪われてるかもしれない。

 そこに、柔らかな声が間に入った。

「悠くん、スイーツ買ったの?」

「うん。内緒で驚かせようと思っていたのに、この馬鹿に先に言われちゃったよ」

 そういえば、島崎の下の名前って悠だっけ。大学の女の子に下の名前で呼んでいいかって聞かれて、そりゃあ冷たく“呼ばれたくない”って断ってたなー。

 そっか、下の名前を呼んでいいのはこの子だけってことか。

「沙和が前に食べたいけど見つからないって言ってたでしょ」

「わ、ピュアポップ!悠くんありがとう」

「今度は初恋ショコラbitterを買ってあげるから楽しみにしててね」

「い、いいよっ。ちゃんと自分で買う」

「これくらい奢らせてよ。いつも沙和は互いに学生なんだからって俺に支払わせてくれないし」

「だって、悠くん一人暮らしでしょう。無駄遣いはだめだよ?」

 なるほど、彼女は沙和ちゃんと言うのか・・・それにしても、見事に俺を無視かよ。


 俺が咳払いをすると、島崎は俺のほうを“いたのか”という視線で見て、彼女のほうはハッとした感じで真っ赤になっている。

「お前、まだいたの」

「いたよ。彼女、紹介してくれよ」

 すると島崎はもう本当に渋々と言った感じで紹介してくれた。北条沙和ちゃん、島崎とは高校の同級生。現在はうちの大学と学部交流している私立大学に通っているそうだ。

 互いによろしく、と挨拶すると島崎が彼女を隠すように割り込んできた。

「じゃあ、俺は行くから」

 そういうと、島崎は北条さんと手をつなぐ。北条さんは目の前で手をつながれたことが恥ずかしいようで、赤くなりながらも俺にお辞儀をして2人並んで立ち去って行った。

 まったくよー、見せつけやがって・・・まあ、あれだけ気持ちを傾けてる彼女がいたら、他の女子なんかどうでもいいよな・・・いいなあ、俺にもいつかそんな出会いがあるだろうか。

 とりあえず、島崎の彼女のことは他のやつらには言わないでいようと心に誓った俺だった。

第1弾は「セカイは想いで満ちている♪」内の”彼のおねがい”です。

こちらも読んでもらえると嬉しいです。

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