橋野夫妻のとある1日
夫・誠介が、大学時代の友人たちに呼ばれて“ちょっと行ってくるね”と出かけていったのはお昼を少し過ぎた頃だった。
そして現在、夜の10時。ずいぶん長い“ちょっと”だが、私は別にそれをとがめたりするつもりはない。だって私も自分の好きなものを楽しめるし。
「やっぱりquattuorはかっこいいわ~」
私のお気に入りにはしっかり“quattuor”のフォルダがあって、そこには当然“初恋ショコラ”関連で彼らが出たCMの動画を入れているわけで。
現在オンエア中の「初恋ショコラbitter」の公式は、何度見てもため息モノだ。夏基くんの大人と子供を行き来しているような感じなのもいいし、冬芽くんのセクシー全開には悶え転がるってどういうことなのかが分かったような気がしたし。
晴広くんはこれから公開らしく、本人のコメントがアップされている。最新として公開されてるのが彰聖くんバージョンだ。
うふふふ、もう1回みちゃお・・・何度見ているんだろう私。よく飽きないなって誠介がちょっと呆れてたけど、そこはスルーだ。
カップルが黙ったままテーブルをはさんで向かい合わせに座っている。女の子は後姿で、彰聖くんの顔だけが映っている。
「・・・これをお前にやる」
そう言って彼女に袋を押し付け、中身が見える。入っているのは初恋ショコラbitter。彼女が顔を上げたのを見て、彰聖くんがちょっと困った様子になる。
「お前、これ好きだろ。誤解をされるような行動して悪かった。バカ、泣くな。は?涙が止まらない?・・・じゃあこれで止まるだろ」
そう言って彼は彼女をぎゅっと抱きしめるのだ(ここポイントその1)。
彼女を抱きしめる彼の顔はほんの少し赤く、かといって彼女を離すなんてことをするわけもなく・・・・(ここポイントその2)
「こら、動くな。苦しいからゆるめてって?しょうがないな」
ほんの少し腕をゆるめて、彼女が息をついた瞬間を狙ったように耳元に唇をよせて内緒話をするように「なあ、お前と甘さの先も知りたい」。
ここで ここで彰聖くんの声で『大人の初恋始めました-初恋ショコラbitter』とナレーションが入り、黒のケースにアザレアピンクのリボンの“初恋ショコラbitter”が映し出されてCMは終わる。
くああああーっ!!何度見ても、この女の子役がかなり羨ましいのですが!!
女性の素性は一切明かされてないんだけど、新人女優かモデルだろうと噂をされている。事務所も明らかにするつもりはないらしく“相手役に関しての質問は一切受け付けておりません”と公式にも掲載されている徹底ぶり。
彰聖くんはメンバーで一番背が高くて肩幅ひろいから、ぎゅっと抱きしめられたいタイプよね・・・特に彼のファンってわけじゃないんだけどさ。
今回は「初恋ショコラbitter」と「ピュアポップ」が同時発売で、コラボとして人気の小説家たちがそれぞれの商品をテーマに短編を書いている。
ピュアポップのほうは爽やかで可愛い作品が多く、初恋ショコラbitterは大人の恋愛を匂わせる作品が多い。
両方とも私が司書として働いている高校の図書室に置いてあるんだけど、当然ながら借りていくのはほぼ100%女の子だ。うちの図書委員いわく「CMに出てるアイドルなら誰が当てはまるだろうって考えて読むと2度美味しい」んだそうだ。
そんなもんかねえ・・・と思っていたものの、実際読んでみると確かに2度美味しかった。特に瀬戸蒼葉の初恋ショコラbitter作品は彰聖くんで妄想すると確実に萌える・・・というのは私と図書委員たちの一致した意見である。
私がうきうきと公式を楽しんでいると、鍵を開ける音がして申し訳なさそうな態度の誠介が入ってきた。
「ごめん恵理子、遅くなった」
「おかえり~」
「・・・怒らないのか?」
「ん~、誠介が友達と会って楽しかったように私も楽しんでたから」
そういうと、彼にPCを見せる。
「ぷっ、そういえば恵理子ってそうだよな。あ、そうだお土産買ってきたんだ」
ほら、と出してきたのは初恋ショコラbitter。なんというすごいタイミング。
「わー、ありがとう。でも今日はさすがに遅いから明日食べるね」
冷蔵庫に入れようと席を立った私の手を誠介がつかんだ。
「ねえ、俺と甘さの先も知りたくない?・・・・ってやっぱりこのセリフは相当なもんだよな」
「・・・そうね、一般人にはハードル高いと思う」
でも2人の間に漂う空気は、もう甘い。
これだけでも楽しめるように書いたつもりですが
結婚前の橋野夫妻の姿は「泰斗高校シリーズ/図書委員会の恋愛事情」でさくっと読めます(宣伝)。
橋野先生がなぜか一部のお姉さま方に好評のため、この2人は結構顔出し率が高いです。
前回の初恋ショコラ企画にも出てます(笑)。