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セカイは想いで満ちている♪2  作者: 春隣 豆吉
初恋ショコラbitterの裏側-CM後-
12/13

夢のような時間と彼女

 出演者が歩く場所にはレッドカーペットが敷かれ、柵の向こう側にはファンの人たちが到着を今か今かと待っていた。

 それを横目に私は社長の後にくっついて関係者パスをもらい、案内された座席に座り周囲をきょろきょろとしてしまい社長に笑われてしまった。

「佳野子さん、落ち着いてください」

「・・・すいません。レッドカーペットがあったり警備がものものしかったりと珍しくて」

「主演俳優が挨拶しますし、私たちが座っている前の席で映画を見る予定ですからね」

「えっ!!ほ、本当ですか?」

「私はこんなことで佳野子さんに嘘はつきませんよ」

 ということは。彼の姿が近いわけで・・・細かい仕草とか、匂いとか・・・落ち着くのよ、佳野子。ここで浮かれたら後で社長に何言われるか。社長は怒ると微笑が怖いんだからっ!!

「佳野子さん、深呼吸してください。彼にドン引きされてしまいますよ、いいんですか?」

 それは嫌。私は社長の言うとおりに深呼吸を繰り返し、ようやく落ち着いてきた。そうよ、挙動不審でいたら怪しい女になってしまう。いつものように・・・そう、quattuorの皆でイケメンを見慣れているんだから・・・でも彼は別格だけど。


 どうやら社長と私は早めに到着したほうらしく、次々と周囲の座席が埋まっていく。マスコミ関係の方や、出演者の事務所の方に映画会社・・・要するに芸能関係者ばかり。 皆さん、社長に挨拶するついでに珍しげに私のことを見たあと軽く挨拶をしていく。

「ほら佳野子さん。彼が映画館に入ってきたようですよ」

 私は今日着ている服をささっと見直す。週末に購入したカットソー素材とツイード素材の組み合わせのワンピースは落ち着いて見えるブラック系。靴は控えめなリボンがついたお気に入りの5センチヒールのブラックのパンプス。

 よし、靴は汚れいていないし服も変なところはなし。思わず背筋を伸ばしていると、隣にいる社長に笑われてしまった。

 スタッフに案内されてこちらに歩いてくるのは確かに彼だ。

 彼が自分の席に座る前に後ろにいる社長に挨拶をしている間、私は気づかれないように彼を観察。スラリとした体型にフィットした黒いスーツに白いシャツ、黒のネクタイがばっちり決まってすごく素敵!!

 よく見るとスーツは黒一色ではなくて同系色の細いストライプが入っている。それに、ベルガモットと柑橘系の爽やかだけど甘くない香りが彼から漂ってきてくらっとしてしまいそうだ。私は初めて自分の就職先が芸能事務所でよかったと思った。

 社長に紹介されて、挨拶したもののかんでしまった・・・うううっ。でも、そんな私に彼は微笑んで“今日は楽しんでくださいね”と言ってくれた・・・いいひとだ。

「佳野子さん、彼は性格も悪くありませんよ。まあだからこそご褒美にしたのですが」

 ・・・・社長って、人の心が読めるんだろうか。

 彼の新作映画は公式でもチェックしていたけど、恋人に振られて落ち込む会社員と彼の行きつけの定食屋に手伝いにきた女性とのラブコメディ。

 彼女の起こす不思議(というか実際にやったら犯罪だ)な行動のおかげで、少しずつ彼は失恋から立ち直っていく。この会社員が彼なんだけど、今回は男の色気より可愛さ、子犬のような目が生かされている気がしてならない。なにしろ、落ち込むあまり使って薄くなった石鹸に“なんだか痩せたね”なんて話しかけちゃう役なのだ。

 渋い色気満載の彼もいいけど、こういうのも楽しい。

 試写会が終わり、社長との約束どおり握手とスチールにサイン、そして一緒に写真を撮ってもらう。そこでもやっぱり緊張しちゃってガチガチになって社長に笑われたのはいうまでもない。そのおかげでリラックスはできたけど、社長と私のやり取りを聞いていた彼がちょっと笑いをこらえていた・・・・どっちにしろ恥ずかしいのに変わりはなかった・・・・。



「疲れた・・・でも、とっても素敵な時間だった~」

 私は部屋でのんびりとくつろぐ。食事会・・・席が彼に近い席だとは思わなかった。美味しい中華料理だったけど、正直味わうより緊張してた。でも社長が私の隣で話題をふってくれて、彼とも少し話ができた。

 映画の感想が言えてよかったな、気さくに映画の裏話や監督の話をしてくれて嬉しかった。

 つけて流していたテレビの画面が、初恋ショコラbitterのCMになった。社長は信用できるから私だってことはばれないだろう。

 私・・・リハーサルとはいえ結構すごいこと指示されてたよなあ・・・・今になって頭を抱えたくなる。そこでふと、彼がもし初恋ショコラbitterのCMをしてあの声で「ねえ、きみと甘さの先も知りたい」なんて言ったら・・・・・それだけで顔が赤くなってくる。

「私どんだけ妄想過多なんだよ~。ほんとquattuorの皆でよかった」


 明日は初恋ショコラbitterを買いに行こうかな・・・そんなことを考えた金曜の夜。

彼のイメージについては、好きな俳優さんを足して人数でわった感じです。

映画内容については、イメージした俳優さんの一人が出演した作品をもじっております。

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