星々の希望
黙示録
十七章
第二節
大いなる魔術師が沈黙を貫きし時
魔術師を愛する不死鳥がその息吹をとりもどし
魔術師を憎む不滅の獅子がその鬣をなびかせ
消えた魔術師を追い求め、世界の破滅を探求する。
死後の世界が、『不死身』と『不滅』を迎えれるように、
愛する、憎む、魔術師のもとに行くために、
不死鳥と不滅の獅子は、世界を破滅を望み、
その果てに、死後の世界を求め歩む。
_著・ペデルト=ワルステーラオス_
辺り一帯が薄暗い部屋・・・いや、部屋とも形容しがたい、空間。
闇とも取れる黒い霧が漂う空間。そこにいるのは、ロッキングチェアに深く腰掛けた男。
腰まである金色の髪は、手入れなどしてないと雄弁に語れるほどボサボサで、髪色でさえ、なんとか金色だと識別できるが、くすんだ、という形容詞が付いてくる。
服装もなんともお粗末なもので、中世のヨーロッパを思わせるような薄汚れた紳士服だ。
おまけに、顔の上半分を巻布で隠しているその姿は、薄暗く、黒い霧の中でも異様な存在感を醸し出している。
男は、自分と同じぐらいのボロボロの本を先程からずっと読んでいる。
それも同じページを、ずっと。時折、唸り髪を掻きむしりながら、気難しい友人と話しているように。
何十分・・・いや、何時間と続いていた不毛な本とのにらみ合いを終わらせ、男は巻布で隠れている顔を椅子の背もたれに預けた。
「全く・・・・君の予言は素晴らしいよ、ペデルト」
口の端をつり上げ、そこからは愉快という感情が読み取れるが、声色からは呆れと苦々しさが聴き取れる。
本をパタンと閉じ、無造作に床に捨てるが、本は床に触れる前に、黒い霧に包まれ、消えてなくなってしまう。
本が消えると、部屋に男がロッキングチェアを揺らす、軋む音だけが響く。
「君は予言をもって最悪の未来を回避しようと思ったらしいけど・・・・・」
悲しげな声。
「人は所詮、その予言が実現するまで、それを信じたりしないものなんだよ?」
君は、最後まで、僕の考えを否定していたけどね。
椅子からおり、迷いない足取りで男はある一点を目指す。
「君の予言はここで終わりだ・・・。いや、もう予言じゃなく『事実』になっていたか」
あとは、僕のシナリオで進ませるかね・・・・・
黒い霧が男を包み込み、本と同じように、男は消えてなくなる___
暗い、黒い霧が満ちる空間。
ロッキングチェアだけが、まだ、軋みをあげながら暗い空間に存在している。
__ それはまるで、破滅の道を探す『世界』と、男と預言者との古い友情のようで、
その椅子でさえ、最後には、黒い霧に呑まれて消えてしまう __
『君の守りたい世界は、そんな世界?』