表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥になった俺は、ある女の子に恋をした。  作者: あまね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/11

不歓迎の来訪者

『記憶喪失少女は、それでも生きていく』番外編。


★☆本編も読んでいただくと、より楽しめます☆★


● 本編はこちら●

https://ncode.syosetu.com/n0106ke/

昼の日差しが部屋へ差し込む頃——


——コツ、コツ。


窓から小さな音がした。

そちらへ目を向けると、ジルだった。


昨日、自分の居場所は伝えておいた。

右の翼はまだ痛い。

まだ思うように飛べない。


俺は窓際までゆっくり歩いていった。

窓は閉まっている。

俺はあずかが窓を開け閉めしていた動作を思い出しながら、鍵を外した。


そして、足で少しずつ窓を押し開けていく。

ジルも外側から足で押し、やがて、通れるほどの隙間ができた。


「カイテル、大丈夫か?傷はどうだ」

ジルは俺の右の翼を覗き込んだ。


「うわっ……傷、ひでぇな」


見た目ほど深い傷ではない。

あずかは、ずっと薬を塗って、包帯まで巻いてくれていた。


「まだ痛みはあるが、数日で治るはずだ」

そう答えると、俺はジルへ目を向けた。

「おまえこそ、ここへ来て大丈夫なのか?持ち場は?」

「問題ない。マーティスが代わりに見張ってる。今は俺とマーティスの二人で持ち場を見てるからな」

「そうか。悪いな」

「おまえは酷い目にあったな。人間の姿なら、すぐ治るのに大変だな」

「……あぁ。死ぬところだったが、あずかに助けられた」

「あずか?誰?」

「異界の少女だ。この部屋の持ち主」

「へぇー」

ジルはそう言うと、部屋の中を飛び回った。


そして、本棚の前で足を止めた。


「もしかして、この絵の子?」

翼であずかの絵を指さした。

「そうだ」

「へぇー、可愛い子ね〜」

ジルはそう言うと、再び羽ばたき、あずかのベッドの隣へ置かれていた鳥かごの上へ降り立った。

「この鳥かごは?」

「……」

俺は顔を逸らした。

「穀物、水、ブランコ、止まり木、布、鏡……」

ジルの羽がぷるぷる震え始めた。

「ま、まさか……ふふっ……これ、おまえの寝床?」

「……」

「ハハハハッ!」


ジルはベッドの上で転げ回るように笑った。


「学園でも騎士団でも……ふふっ……大人気のカイテル様が……ふふっ……鳥かごで寝てるとか……ハハハハッ!」


……うっぜぇ。


「あのカイテル様をこんな風に……すげぇ……すげぇ子だな、あずかちゃんは」


ジルの笑いは、しばらく止まらなかった。


……さっさと帰れ。


ジルは散々俺を笑ったあと、

「じゃね〜、カイテル。また来るよ〜。あずかちゃんによろしく〜」


と言って、窓の隙間をすり抜けるように飛んでいった。


……この野郎。


行く前に、窓もちゃんと閉めろ。


結局、俺は一人で窓を閉める羽目になった。


開けたままでは、あずかに怪しまれてしまう。




その日は、ジルやマーティス、ファビアンが、入れ替わりで俺をからかいに来ていた。


「これは、カイテル様の寝室か~。ふふふっ」

マーティスは鳥かごの周りを一周しながら、にやにやしていた。

「帰れ」


——チリン。


俺の殺気など気にもせず、マーティスは足で鳥かごの扉についた鈴を鳴らした。

「カイテル様……可愛すぎ……ふふふっ……」

「失せろ」




マーティスのあと、ファビアンがやってきた。


「ふふふっ……黄色の鳥かご、おまえに似合うじゃないか」

ファビアンは鳥かごを軽く翼でつついた。

「このレースのカーテン、おまえの毛並みにぴったりだな」


……レースのカーテン。


あずかが古い布で作った、手作りのものだった。

鳥かごの上に掛けられている。

……恥ずかしいが、あずかが作ってくれたものだから、文句を言えない。


「あのカイテル様は、完全に飼い鳥だな」

「さっさと記録に戻れ。帰れ」

ファビアンは肩をすくめた。

「わかったわかった。じゃあ、今日の記録が終わったら、また、“飼い鳥カイテル様”を見に来るぞ。あずかちゃんに、“またあとで”って伝えておいてくれ」

「二度と来るな」



……あいつら、本当にあずかを見に来やがった。


太陽が空から消えた頃、あずかは机に向かい、小さな道具から音楽を流しながら宿題をしていた。


そっと窓の外を見ると、庭の木の上に、赤、黒、白の鳥が三匹留まっていた。

俺はそっとため息をついた。

……おまえら、任務に集中しろ。


だが、この時間帯になると、この街から人の気配は消える。

それに、イリアス隊長やジョエル隊長、エレクさん、レオンさんもいる。

門に近づく人間は、ほとんどいない。

この時間帯だけは、あいつらは少し自由に動ける。


……だからといって、この任務は重大任務だぞ。


あいつらは、窓の外で、翼であずかを指さしたり、こそこそ話したり、俺を笑ったりしていた。


……まったく。


あずかが俺の頭を撫でるたび、あいつらはさらに爆笑していた。


……くそ。


でも、あずかの手が心地よくて、離れたくない。



あいつらに笑われても——


俺はそのまま、あずかに頭を撫でられることを選んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ