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鳥になった俺は、ある女の子に恋をした。  作者: あまね


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8/11

君のいない部屋

『記憶喪失少女は、それでも生きていく』番外編。


★☆本編も読んでいただくと、より楽しめます☆★


● 本編はこちら●

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晩ご飯の時間になると、ありがたいことに、鳥かごの中ではなく、

あずかが俺を食堂まで連れていってくれた。


食卓の一角に、小さな布団があり、俺はそこへ座らされた。


目の前には——

花柄の餌入れ。

花柄の水入れ。


……はぁ。


俺は意を決して、その容器の中のご飯を食べ始めた。


ご飯は……まずかった。

……硬い穀物ばかりだ。


ジルやマーティス、ファビアンがここにいなくて、本当によかった。

でなきゃ、絶対に笑われる。


食堂には、あずかの両親と兄もいた。

会話は、ほとんど俺のことばかりだった。


「ソラはね、すごく頭がいいよ。私が話したこと、わかったみたいに頷いたりするの!」

あずかは俺の近くの席で、ご飯を口に運びながら話した。


「へぇー、じゃあ、何か言ってみろよ」

兄が面白そうに言った。


あずかは俺に顔を向けた。


「この四人の中で、誰が一番かわいい?」


……聞くまでもない。


俺はあずかを見つめた。

「あずかだ」


「ほらね!私だって言ってるよ!」


あずかの両親は顔を見合わせ、くすっと笑った。


「勝手に鳥の鳴き声を訳すな」

兄は鼻で笑った。


「じゃあ、ご飯、おいしい?」

あずかは俺に尋ねた。


……すげぇまずい。


それでも、俺は仕方なく首を縦に振った。


「ほらね!」

「タイミング良すぎだろ!」

兄はゲラゲラ笑った。

「こんな頭いい鳥、テレビに出れそうだな」

あずかの父親はそう言った。


……てれび、は何だろうか。


「だめ!ソラは私のだよ!」


……楽しい食卓だな。


あずかも、あずかの家族も、温かい人たちだ。

気付けば、俺は羽を震わせがらあずかの家族の会話を聞いていた。


この世界には魔法はないと、文献にはそう記されていた。

けれど、実際は違うのではないかと思い始めていた。


夕食の後、あずかは俺を抱きながら、四角い箱を見ていた。

その箱の中では、人間たちが喋っていた。


俺はできるだけ、その箱へ近づいてみた。

だが、特に魔力を感じない。


ときどき、あずかは小さな道具を手に取り、指で何かを操作していた。

そして、ときどき、その道具を耳に当て、誰もいないのに、一人で話し始めたりもした。


後になって知ったことだが、あずかは友達と話していたらしい。


……いつの間に?

……俺の世界と違う種類の魔法か、何かなのだろうか。


……異界とは、まったく意味の分からない世界だった。



あずかは明るくて、おしゃべりな子だ。

あずかと一緒にいると、退屈なんてなかった。


寝る前、あずかは俺を……

というより俺が入っていた鳥かごをベッドの隣に移動させた。


寝室の電気を消し、ベッドにもぐりこんだあずかは、それでも俺に話しかけ続けた。


「昨日ね、ソラを飼うことになったから、友達にいろいろ話したの。

気づいたら、真夜中だったんだよね。

だから、今朝寝坊しちゃったの」

あずかは何度も欠伸をしていたが、寝ようとしなかった。


「明日、めいりちゃんがここに来るんだよ。ソラを見に来たいんだって。

ソラが珍しい、黄色い鳥だって話したら、『見たい!』って言ってたの……

ソラに……私の友達を紹介するね……」


気づけば、あずかの声は止まっていた。

どうやら、我慢の限界らしい。


あずかが眠かったせいか、鳥かごの扉をきちんと閉めていなかった。

俺が翼でそっと扉をつつくと、ふわりと開いた。


俺は鳥かごを出て、あずかの枕元へ歩いていった。


しばらくあずかの寝顔を眺めたあと、俺はあずかの額へそっと口づけた。


「お休み」




翌朝。


あずかとの生活の三日目。


俺は目を覚ました。

あずかはまだ気持ちよさそうに眠っていた。


……しかし。


——ピリリリリッ!


俺が鳥かごの中であずかを眺めていると、突然、小さな道具から甲高い音が鳴り響いた。

全身の羽が逆立った。


「なんだ!敵か!?」


そう思った瞬間——

あずかは寝返りを打ちながら、顔を布団に埋めたまま、手探りで音を止めた。


そして、再び布団へ潜り込んだ。

部屋は静まり返った。


……だが、あずかは起きない。


しばらくすると、


——ピリリリリッ!


また、あの道具が鳴り始めた。


あずかは眠そうに手を伸ばし、再び音を止めた。

それを何度も繰り返していた。


……寝坊か。


どうやら、あの道具はあずかを起こそうとしているらしい。

見慣れない光景に、俺は小さく体を震わせた。


……あずかは、自然で可愛らしい。


そして、ようやく、あずかはゆっくり起き上がった。

ベッドの上で、ぼんやりと座り込んだ。


「……ソラ……おはよ……」


あずかは欠伸をしながら、俺へ顔を向けた。


「あずか、おはよう」

俺は挨拶を返した。


……もし。

……もし、できることなら。


ずっと、こんなふうにあずかと一緒に過ごしたい。



俺はすぐに首を振った。


馬鹿馬鹿しい。

傷が治れば、俺はここを出て、任務へ戻らなければならない。

ずっとこの世界にいられるわけがない。

俺には、果たすべき役目がある。


……メイソン伯爵家の後継として、生きなければならない。

そう思うと、なぜか胸の奥がぎゅっと握りしめられた。


……あずか。




「じゃあ、ソラ。行ってくるね!」

あずかは、俺の前だというのに、相変わらず平然と服を脱いだ。


……まったく。

男がいるのだから、少しは警戒してほしい。

……こんな姿でも、俺は男なんだぞ。


着替え終えたあずかは、いつもの可愛らしい笑みを浮かべながら、俺の頭を優しく撫でた。

そして、そのまま部屋を出ていった。

これから、学園へ行くらしい。


その制服も、あずかによく似合っていて可愛らしかった。

あずかは十四歳で、今は『ちゅうがくにねんせい』。

俺の世界なら、そろそろ働き始めてもおかしくない年齢だ。

俺は十六歳で騎士団に入団した。

だから、あずかもきっともうすぐ働き始めるのだろう。




俺は鳥かごを出て、左の翼だけで何とか窓際まで飛んでいった。


あずかの父親、兄、そしてあずかは、ちょうど乗り物に乗り込むところだった。

やはり、あの乗り物は異様に速い。

走り出した瞬間、すぐに俺の視界から消えていった。

あの乗り物からは、まったく魔力を感じない。

どうやって動かしているのだろうか。


……あずか。

……学園は、いつ終わるのだろう。


あずかのいない部屋は、静かすぎてつまらない。

やることなく、俺はあずかの部屋を探索した。


本棚には、書物がぎっしり並んでいる。

異界の言葉は聞き取れるが、文字までは読めない。

どんなことが書かれているのか、少し気になった。


……あずかはどんなことに、興味があるのだろう。


本棚の周りには、小さな絵がたくさん飾られていた。

そこには、あずかの姿もあった。


まるで、本物のあずかが、そのまま絵の中へ閉じ込められているようだった。


異界の絵描き師は恐ろしい技術を持っている。


俺の世界の絵描き師では、とても真似できない。



ここまで読んでくださりありがとうございます!


少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

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(ृ´͈ ᵕ ͈ ृ ) (ㅅ´ ˘ )

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