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鳥になった俺は、ある女の子に恋をした。  作者: あまね


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7/11

泣くより鳥かご

『記憶喪失少女は、それでも生きていく』番外編。


★☆本編も読んでいただくと、より楽しめます☆★


● 本編はこちら●

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しばらくすると、頭の奥に静かな感覚が流れ込んできた。

水面が揺れるような、不思議な感覚。


『迎えにいく。じっとしていろ』


ジルからの伝言だった。


だが、今の俺では戻っても任務を遂行できない。

むしろ、足手まといになるだけだ。

今の状態で飛び回れば、途中で落ちる危険もある。

この家で治療したほうが安全なはずだ。

鳥の姿なら、完治まで五日ほどかかる見込み。

イリアス隊長たちに伝えるように、俺はジルへ頼んだ。


しばらくすると、再びジルから連絡が届いた。


「了解。気をつけろ」

短い返事だった。


すぐ戻ると言っていたが、あずかはなかなか戻ってこない。

俺は、あずかが準備してくれた水と、細かく切られた野菜を食べていた。


……まずい。

というより、まったく味がしない。

……食べないよりマシか。


太陽が傾いた頃、窓の外から話し声が聞こえた。


……あずかの声だ。

さっきまで胸の奥にあった寂しさが、ふっと軽くなる。

……やっと戻ってきたのか。

……まさか、俺は本当は寂しがり屋……なわけないだろうな。


——タタタタッ!


こちらへ駆けてくる足音が聞こえた。


——ガチャ。


「ソラ!お待たせ!」

あずかは両手いっぱいに荷物を抱えていた。

床に荷物を置くと、俺のそばへやってきた。


「ソラのためにいっぱい買っちゃった〜!」

あずかは嬉しそうに俺の頭を撫でた。

「寂しかった?大丈夫?」


俺は首を縦に振り——かけて、慌てて横に振った。

……俺は、別に寂しくない。


「今……首を縦に振ろうとしてた?」

あずかは首を傾げた。

「まあ、気のせいか」


あずかはもう一度俺の頭を撫でてから、荷物を袋から取り出し始めた。

俺はあずかの荷物へ目を向けた。


大きな黄色の檻。

何かの袋。

複数の小さな容器。

木の棒。

音の鳴る丸い球。

小さな椅子のような形のもの。


……これが合わさったら、どんなものになるだろう。


まったく想像がつかない。


「今、組み立てるから、ちょっと待っててね!」


そう言うと、あずかは荷物の前に座り込み、真剣な顔で組み立て始めた。


「ソラ、見て!このお皿、可愛いでしょう?」


あずかは嬉しそうに皿を見せてきた。

黄色い花柄の小さな容器だった。


「すごくソラに合うと思わない?私ね、これを見た瞬間、『絶対これ!』って思ったの。

ソラの晩ご飯、楽しみだね!」


……晩ご飯?

……な、なぜ、晩ご飯?

晩ご飯と、あの花柄の容器に何の関係があるんだ?

嫌な予感がした。


そして、組み立てが終わった。

……少し大きめの鳥かごだった。

鳥の姿の俺でも、十分飛び回れそうな大きさだ。


……うぅっ……。

……まさか、この俺があの鳥かごに?


この俺が?

俺は、メイソン伯爵家の次期当主だぞ?


しかも、鏡までついている。

そっと鏡を見ると、そこには黄色い鳥の姿が映っていた。


……くそ。


あずかには、俺がこんなふうに見えているのか。

……最悪。

……なぜ、もっと男らしい姿にならなかったんだ?


「ソラ〜、新しいおうちができたよ〜。入って入って〜」

あずかはそっと俺を持ち上げ、鳥かごに入れようとした。


……勘弁してほしい。

俺は全力で左の翼をばたつかせ、あずかの手から逃れようとした。


「はいはい。いい子にしてね〜。おうちに入ろうね〜」

あずかはそう言いながら、逃げないよう優しく俺を包み込み、そのまま鳥かごへ運ぼうとした。


……なんて呑気な子なんだ?


俺はさらに翼をばたつかせた。

すると、あずかは目を見開き、俺を見つめた。


「……もしかして、気に入らなかった……?この色、好きじゃなかったの?」

あずかは肩を落とし、唇をきゅっと結んだ。

今にも泣きそうな顔だった。


……うぅっ。

な、泣くな。

泣きたいのは、俺のほうだぞ。



「……わ、わかった……入るから、泣くな……」

当然、俺の鳴き声など伝わらない。


俺は諦めて、大人しく鳥かごへ踏み込んだ。

派手な黄色の花柄の餌入れ。

同じ色の水入れ。

止まり木。

鏡。

空中に浮いた椅子。

鳥かごの扉についた鈴。

……何とも言えない複雑な気分だった。


「……入ったから、泣くな」

俺はそう言った。


あずかには、鳥の鳴き声にしか聞こえないだろうが。

あずかは目をぱちぱちさせた。


「……鳥かご、嫌じゃなかったの?」


……すげぇ嫌だ。

でも、あずかが泣くよりマシだ。


俺は小さく首を横に振った。


「……気に入ってくれてよかった〜。ずっと一緒にいようね〜」


あずかは満面の笑みで俺の頭を撫でた。

なぜか、胸がぎゅっと締め付けられた。


……本当に、ずっとあずかのそばにいたいと思ってしまった。



晩ご飯までの時間、あずかは本を取り出し、机に向かった。

あずかは鳥かごをベッドの隣の椅子に置いていた。


ここからだと、あまりあずかの顔を見れない。

俺は鳥かごから出て、あずかの足元まで歩いた。


「あれ?どうしたの?」

あずかは俺を持ち上げた。

「もしかして、寂しかった?」


そう言いながら、俺の頭を優しく撫でた。

「明日の授業の予習なの。ちょっと待っててね。後で一緒に遊ぼうね~」


そう言うと、俺を机の上に座らせた。


あずかは俺の頭を撫で、小さな道具の表面を指でなぞった。

すると、そこから音楽が流れ始めた。


……え?


あれほど小さいところに、人間や楽器が入っていたとは思えない。

それなのに、なぜあんなところから音楽が流れる?

音楽とは、演劇場で聴くものではないのか?


……まったく理解できない。


あずかは音楽を聴きながら、小さく頭を揺らして勉強していた。

だが、机へ向かったあずかの表情は真面目だった。


……呑気な子だが、真面目な子なんだな。




俺は机の上から、すぐそばにいるあずかを眺め続けていた。


ここまで読んでくださりありがとうございます!


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