第9話
この話で事実上、まとめますが。
ナポレオン等、大成功した大人物程、その後の切り替えに失敗して、最後は失敗に至ってしまった、という事態が歴史上、稀ではありません。
政治と商売、経済を一緒にするな、と言われかねませんが。
少し古い漫画になりますが、漫画「栄光なき天才たち」で取り上げられた鈴木商店と似たような感じを、織田・豊臣政権について、私は覚えてならないのです。
知る人ぞ知る話になりかねませんが、鈴木商店は明治初期の創業で、日本の発展に伴って、急激な成長を遂げていくことになります。
その中心になったのが、「煙突男」等の異名をとった大番頭の金子直吉です。
(本来から言えば、鈴木商店は最終的には株式会社になっているので、大番頭というのはいないのですが、金子直吉は本当に大番頭としか形容の仕様がない人物でした)
鈴木商店は、その絶頂期の1919年には、それこそ当時の日本の国民総生産の1割を超える売り上げを誇る等の世界規模の超大企業群、鈴木財閥と謳われる存在にまで成長しますが。
第一次世界大戦終結に伴う反動不況、更には関東大震災、金融恐慌等の嵐の前に、1927年に完全な事業停止、清算にまで鈴木商店は追い込まれることになります。
それこそ絶頂から、僅か10年も経たない内に、鈴木商店は崩壊に至ったのです。
何故に鈴木商店は崩壊したのか。
色々と言われますが、私が見る限り、金子直吉が、ひたすら積極攻勢を執ることで成功を続けてしまった結果、いわゆる退き時を見極められなくなっていたのが最大では、と考えます。
不況なのだから、赤字経営部門を畳んで、又、一部の事業を整理して、ということを行なえば、鈴木商店は充分に存続できたでしょうが。
金子直吉は、これまでの様々な成功体験から、不況下の中でこそ、新規事業を展開することで、更なる成功を鈴木商店は収めることが出来る、と考えての行動を止めませんでした。
更に言えば、金子直吉を諫めて押し止めることができた総支配人の西川文蔵が、第一次世界大戦後に亡くなったことから、金子直吉を鈴木商店内では誰も押し止められなくなってしまっていたのです。
(それこそ豊臣秀長死後の豊臣秀吉のような存在に、金子直吉はなってしまったのです)
その結果が、1927年の鈴木商店の完全な事業停止、清算です。
では、どうすれば鈴木商店の崩壊は防げたのか。
西川文蔵が長命していれば、と考える一方で。
積極攻勢を執ることで成功し続けていた金子直吉が、鈴木商店の舵を握っている以上、鈴木商店が退くという経営判断を下せただろうか。
それこそ急激に成功拡大したベンチャー企業が、その成功体験に上の経営陣から末端の従業員まで染まって、成功体験を否定する経営判断が出来ずに、倒産に至った例があることからすれば。
それから考える限り、鈴木商店の破綻は、金子直吉が存命であっては、何れは必然の気が私はします。
それと同じような臭いを、私は織田・豊臣政権について感じざるを得ないのです。
これまでの成功体験から、金子直吉が退くという経営判断を下せなかったように、豊臣秀吉も日本国内で満足するという政治判断を下せなかった。
それと同様に、織田信長も日本を再統一した後、日本国内で満足は出来ず、これまでの成功体験から、朝鮮半島へ、更には明(中国)本土へと進軍して行くのではないか。
更には、史実の秀吉の「朝鮮出兵」と五十歩百歩の結果になって、日本国内で不満が爆発して、内部対立が火を噴くことになって、史実で徳川幕府が最終的に成立したように、織田・豊臣政権も存続できないか、存続できても、全く違う政治体制を最後は築くことになるのでは、と私は考えるのです。
これで、事実上は完結して、明日、余談を投稿して、本当に完結させます。
御感想等をお待ちしています。




