2:墓場での出来事
この仕事をしていると、ときに不思議な出来事や特異な事に
遭遇する事があります。
数年前の夏の日のお話です。
ある寺院より直接、ご年配の使いの方が私の勤めている会社へお越しになり
「8月10日から16日までの間、墓場の警備をしてほしい」
という依頼をお持ちしました。警備時間を聞くと
「夜の10時から朝の5時まで」との事。まさに真夜中の警備でした。
早速、寺院と墓場を地図で確認すると、なかなかの広さがあり
北側の出入口は住宅街、南側の出入口は林に囲まれていた為、北と南に
一人ずつ配置し、何かあった場合は無線を飛ばす事にしました。
私は南の警備を担当する事になったのですが、小さな街灯が一つあるだけで
薄暗く、カビの生えた古い大門と、七体のお地蔵様が独特な雰囲気を
醸し出していました。
(あー、ラジオだけでも聞けたらいいのになぁ)などと考えていると
突然、墓場の方から ジャリ、ジャリ、ガサッと雑音が聞こえてきました。
ビクッとしながらも私は懐中電灯の明かりを雑音の聞こえた方角へ
照らしながら走っていったのですが、辺りに人影はありません。
しかし明らかに人のいた気配を感じたので、北側の警備をしている相方に
無線を飛ばしたのですが擬音が鳴るだけで繋がりません。
すると後ろの方から、ジャリ、ジャリ、ガサッと雑音が聞こえました。
私は勇気を振り絞って懐中電灯の明かりを消し、いざという時の為に
警棒を抜けるようにしながら、目を数秒つぶって暗闇に慣らし、相手に見つからないようゆっくりと雑音の聞こえた方へ近づいて行きました。
すると、お墓の前でしゃがみ込んで何かをしている人がいました。また、もう一人お墓を挟んだ通路側に頭がスーッと移動しているのが見えました。
意を決して明かりを点けようとしたその時、林の中で炎が揺らいでいるのが
見えました。もう何が何だかわかりませんが、林の方へ走っていくとそこには
一斗缶でたき火をしているホームレスの方々がおり、周りにはワンカップ
スナック菓子、くだもの、まんじゅうなどなど、お供え物が散乱して
いました。また、墓場からビニール袋をいっぱいにした2人のホームレスが「大漁!大漁!」などと言いながら入ってきました。
私はガクッとなり膝が地面に着きそうになりました。笑い話に聞こえるかも
しれませんが、その時は真剣だったのです。
ホームレス曰く「お盆の間はご馳走にありつける。また、お彼岸の時期も
楽しみにしている。」そうです。
みなさんには火の始末をして、退去してもらいました。
まさか真夜中の墓場でこんな事が起こっているとは・・・。
この時まで知りませんでした。しかし無線機が使えなくなったのは
今でも謎です。




