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第05話「殺意①」

これから、私は、【魔物】を殺す。恭介と、冬華と、そして村の皆を守るために。


魔物はそれから数日もしない内に村にやってきた。


村の上空に鎮座する【魔物】は変わった形状をしていた。まるで鳥の様な形をした金属の塊だ。あれは本当に生物なのだろうか。

低い低音をあたりに響かせながら、翼を微動だに動かさず、その下にある丸い筒から何かが噴射しているかの様に聞こえる。サイズ的には蜘蛛よりも小さい。成人男性3人分程だった。


「恭介。あれは、本当に危険な魔物なんです?」


恭介から貰った無線機というものに語り掛ける。遠くの人の声を拾えるという不思議な機械。

耳元に直接声を囁かれる様でなんともこそばゆい


『魔物は例外無く人間を殺すんだ。』

『あれは、間違いなくとても危険な生物だよ』


鳥型の魔物は、屋根の高さ程より少し上あたりを旋回しながらゆっくりと移動する。しかし村から去る気配は無く、まるで何かの合図を待っているかの様だった。


「何も反応が無いなら、今の内に、やっちゃいますよ」


本来生物を殺すという行為は嫌悪するべき事だ。狩りでもなく、恨みがある訳でもない。だが何故だろうか。【魔物】を殺す事に不思議と罪悪感は無かった。


そして私は唱える。


「盾一つ。【魔物】を撃ち落とせ」


瞬間、私の指先に現れた光の壁は、限界まで引き絞った弓矢の様に上空の魔物に向かって打ち出された。どうやら私の魔法は、私の言葉、私の意識に依存した動きをするらしい。


私が持つ力。他の物を口にし、試してみた。どんな言葉を並べても他の形の物を出す事はできなかった。ならば。盾しか出せないなら、盾を投げつければいい。なんて単純なんだと我ながら思う。


魔物に盾か当たる直前。それは起こる。


「わあ。」


間の抜けた声が口から漏れる。


魔物の筒内部で何かが閃光を放ち爆発音とともに、突然加速する。


盾は遥か遠くに飛び、そのまま弾けた様な音と共に消失した。


魔物の動きは、生物のそれとはかけ離れている。滑るように旋回しながら、私の頭上へと移動した


------------------------------------------------------------------------------


目標E-001補足


実験を 開始します


-------------------------------------------------------------------------------


「盾3つ。私を守れ」


魔物の腹部から出てきた丸みを帯びた長い筒が、轟音を打ち鳴らす。その瞬間、凄まじい勢いで叩きつけれる鉄の弾。私の盾はそのすべてを弾き飛ばした。

弾かれた弾が周囲に飛び、壁を破壊する。生身に当たれば確実に死ぬであろう攻撃。明確な殺意。


にも拘わらず、目の前の生物からは、何も感じない。まるで人形の様に無機質で、何を考えているか解らない【意志というものを感じない】

だからこそ私はどうしても、魔物という存在が生き物だとは思えなかった。まるでこれは、誰かのオモチャの様。


3つの盾を維持したまま、更に盾を召喚


「盾2つ、左右から敵を押しつぶせ」


弾を乱射してる魔物は私の盾が左右から近づいた瞬間、背後の筒を爆発させ更に上空へと上昇し盾を回避した。

2枚の盾はそのまま衝突し、そのままゆっくりと落ちながら消失する。少し頭が痛い


高さ的には、2階建ての家程の高さだが私にはそこまで近づく術がない。


魔物は旋回し、再び私の頭上まで移動し、その体を変形させる。それと首が疲れてきた。

もう少しだけ降りてきてもらえないものか


------------------------------------------------------


エネルギー充填率80% 90%


超電導コイル、安定稼働確認


誘導システム稼働確認



【レールガン】発射まで、3秒


-------------------------------------------------------



魔物の腹部が開かれると、内部から小さな光がちらりと見えた。


私は3つの盾を頭上に構え、次の攻撃への防御に備える。


轟音が響き渡った。雷のような衝撃波がまっすぐに降り注ぐ。


しかし、それはただの雷ではなかった。盾が直撃を防いだものの、凄まじいエネルギーの塊が衝撃波として拡散し、周囲の地面へと突き抜ける。大地が悲鳴を上げるように裂け、粉砕された土砂が爆発的に舞い上がる。


「きゃ!!!!」


思わぬ衝撃に驚く間もなく私は簡単に吹き飛ばされ、民家の壁に叩きつけられる。


展開していた盾は私の意識とのリンクが切れた影響か、全部消えてしまう。


私は壁にもたれかかりながら、大きく息を吐いた。ああ、舐めていた。こんなに強い生き物だったのか。

でも、ここで負ける訳にはいかない。


ふと。私の片耳につけられた無線機、というものから、声が聞こえた。


『エリィ!大丈夫!!生きてる!?』


冬華は泣きそうな声で私に呼びかける。エリィ、それが、私の。


頭を強く打ったらしく、少し視界が霞む。血が垂れて、私の片目に垂れて視界を奪う。ぶちまけられた土砂に当てられたせいで全身が痛い。ああでも。【こうすれば、当たるのが解った】


------------------------------------------------------------------------------


第2射発射準備完了


エネルギー充填率80% 90%


超電導コイル、安定稼働確認


誘導システム稼働確認


メインプロセッサ冷却作業率80% 遅延を確認


【レールガン】発射まで、10秒


----------------------------------------------------


再び、魔物の腹部が開かれ小さな光が私に向けられる。



私はゆっくりと立ち上がり、魔物に腕をかざす。


「自己紹介が、まだでした。」


「私の名前は」


-----------------------------------------------------


発射まで、5秒。4秒。3秒。対象のマナ上昇検知。【イージスの盾】発動確認。攻撃中止。回避行動開始


-----------------------------------------------------


「エリィ、なんだそうです。」


私の口は、恐らく少し笑っていたと思う。エリィ、それが、私。


「盾5つ。敵の目前で【弾けて】」


5つの光の壁が魔物に向かって弾丸の様に打ち出される。同時に魔物は爆発音と共に加速し、回避行動をとる。しかし


5つの盾は、エリィの言葉通り空中で破裂し、まるで散弾銃の様に鋭い光の粒を四方へ拡散させた。


逃げ場を失った魔物に、強力な障壁で出来ていた光の破片が不規則に突き刺さる。

金属の軋む音が空へ響き渡る。魔物は、勢いをつけたまま、民家の屋根を吹き飛ばし、地面に激突し、爆散した。


空を見上げると、爆散した光の粒が雨の様に振り注いでいた。


「・・・あ。」


何かが切れる音がした。視界がぼやける。酷いにおいがする。




だが、勝った。皆を、守れた様だ よか った これが  私




そこで私の意識は途切れた。


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