表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/37

番外編 「シズ君。お買い物に行きませんか?」

12月2日追記

話が全く意図していない方向性に行ってしまって、ものすごく悩んだのですが2章をリスタートしようと思います。最新話まで追ってくれている方は本当に申し訳ございません。

未読の方向けに説明すると、7話分程がお蔵入りになりました。

少しプロットを練り直して2章の再筆をしようと思います。今後この様な事が無い様に精進しますので、よろしくお願いします。重ねて本当に申し訳ございませんでした。 


「シズ君。お洋服を買いに行きましょう」


昼下がり。カーテン越しの陽光が、リビングの淡い色のソファーを温めていた。

その上で寝転がり本を読んでいた僕に、唐突にエリィが宣言する。


「嫌」


僕は目だけでエリィの方を一瞬見るが、すぐに視線を本へと戻す。


「行きましょう」


エリィは胸の前で両手の拳を握り、再度提案する。

しかし、僕はゴロンと寝返りをうち、エリィに背を向けて再度拒否する


「嫌」


エリィは僕の体をゆっさゆっさと揺らす


「行きましょうシズ君!!行きましょう!!」


揺らしが激しくなり、読書する所では無くなる。僕はガバ!!っと起き上がり、叫ぶ


「あーもう!!!どうしたんだよ急に!服はたくさんあるだろ!」


エリィはジト目になり、それでも僕に対して食い下がる。


「だってシズ君、いつも真っ黒なパーカー着てるだけなんですもん」


エリィの長い耳がしゅん・・と垂れ下がる


「せっかく可愛い顔してるんです。可愛い洋服買わないと勿体ないじゃないですか」


可愛いって思われてたのか。褒められたんだろうけど何故だか腹が立つ。

僕は本をぱたんと閉じて立ち上がる


「シズ君?」


「行くなら早く行こ。なるべくなら外には出たくないんだ」


思った以上に日本という国の人間は僕達に注目しないが、目立ってる事には変わりない。

特にエリィは、その。なんというか、異性の目を引く。外に出て彼女に視線が集まるのはなんとも気に入らない


「やったー!すぐ準備しますから!待っててください!」


エリィはドタバタとタンスを漁り、嬉しそうに準備を始める。

そんな彼女の様子を見ていると、自然に笑みがこぼれてしまう。


「まぁ。たまにはいいか」


僕は大きく溜息をつき、窓の外へと眼を向ける


今日はとても陽ざしが高く、風も気持ちよさそうな、良い天気だ



----------------------------------------------------------------------


「~―♪」


エリィは謎の鼻歌を歌いながら昼下がりの商店を歩く。長い髪の先端で結ばれたリボンが彼女のスキップに合わせてゆらゆらと動いていた。僕はなんとなく彼女の髪の先端を眺めながらのんびりと後に続く。


「シズ君、見てください。猫がいます!猫ですよ!」


彼女が指を指す先の、電柱の影にいる黒猫とふと目があった


「猫だね」


「こっちにおいで。にやー。にやー!」


エリィは下手くそな猫の物まねをしながら電柱の隅でこちらを見つめる黒猫へと手を伸ばす。しかし

黒猫は迫るエリィの手をビシっとビンタではじき返す。


「・・・何故です!?」


見たことの無い表情でエリィは固まった。そして


僕の足元へと黒猫はすり寄り、にゃあ、と鳴いた


「ガーン・・・・」


「よしよし。いい子だね」


抱えて頭を撫でると、黒猫はとても気持ちよさそうに目を細めた。


「どうしてシズ君だけ!」


「・・・エリィが無遠慮だから猫も嫌だったんじゃない?・・・すぐに人の事撫でまわすじゃん」


普段やられっぱなしの腹いせにうんざりした口調で僕は吐き捨てた。距離が近すぎる事は正直反省してほしい


「シズ君しか撫でませんよ?」


彼女は首を傾げ、さも当たり前の事を言うみたいな口調で言い放つ


「そういう所!!!」


そういう所だよ本当に。


「そういえば。この黒猫シズ君に似てますね」


「シズ君も猫みたいですし」


「どこがだよ・・・」


エリィは手を背中で組んで、シズへと距離を詰める。


「な、なに?」


エリィは微笑んだまま、じーーーーーっと僕の傍で顔を覗き込む。


耐えられなくなった僕は、猫を抱えたままたまらず距離を取り、顔を反らした


「ほら。猫みたいですよ」


あはは、と笑う彼女に何も言い返せない僕だったが、代わりに猫がフシャー!とエリィに吠える。

僕の腕の中から降りると、猫は一度だけこちらを振り返り、走り去った。


「はぁ・・・早く行こ、エリィ。洋服買いに行くんだろ?」



「あはは・・・そうでした」



----------------------------------------------------------------------------


それから向かう途中2度程エリィが変な奴らにナンパされ僕が撃退したり

洋服屋に着いた矢先に店員にエルフのコスプレだ何だと色々と質問攻めされたりしたがそこは割愛しよう。


問題はその後だ


エリィは僕の肩幅に合わせて色々な洋服を合わせてはうんうんと唸っている


「どれも一緒じゃない?」


「いえ・・・シズ君・・・これを・・是非とも・・・!!!」


彼女が次に僕に渡したのは、猫耳がついた黒いフードパーカーだった。誰か助けてくれ。


「嫌だ」


僕はロボットみたいに固まった表情で断固拒否する。


「是非とも」


「嫌」


一体、今日一日で何度僕は嫌だ、と言ったんだろう


「うぐぐ・・・では・・・!!私もシズ君が選んだお洋服着ますから!!!」


「え」


その提案に僕の理性がほんの少しだけ揺らぐ。いや。別にその、なんだ。

彼女に似合う服をプレゼントするのは、やぶさかではない。しかし・・・・


真剣な表情で僕達はジト目でにらみ合い、そして


「・・・・解ったよ」


僕が折れる。一体何度目だろう。僕は彼女を甘やかしてばかりだ。

決して彼女の服を選ぶという餌につられた訳ではない。断じて





そして僕は試着室で猫耳フードを装備する。

なんともいえないフワッとした質感ですごく着心地がいいのが逆にはらただしい

試着を終え、姿を現した瞬間、エリィは僕の姿を見るや否や、歓声をあげた。



「わああああ!!!シズ君・・・!!!可愛いです!!!!すごく可愛いです!!!!!!」



過去一キラキラした目で彼女は僕の痴態を眺める。こんなに嬉しそうな彼女は初めて見たかもしれない。

僕はすべてを諦めた表情で猫耳フード姿を衆目に晒し、エリィはそんな僕の周囲をグルグル回りなら手元の端末で撮影してる様だ。無理矢理服を着せられたペットもこんな気分なんだろうか。とぼんやりと考える


一通り満足したのか、コホンと咳払いすると、エリィは腰に手を当てて僕に指令を言い渡す


「次はシズ君の番です!!!」


「・・・・本当にやるの?」


「はい!シズ君が選んだお洋服を私に着せてください!!!」


女性に服を選んだ経験は僕には無い。一体どうすればいいのやら。


僕は店内を歩き回り、洋服を見て回る。そしてマネキンに着せてる一着の服に目が留まる。


胸元に赤いリボンが巻かれた白いワンピース。初めて会った時のエリィはこんな服を着ていた。

あちらは長袖だがこちらはノースリーブで肩が大きく露出しており、スカートの部分にかわいらしいフリルが付いてる


エリィが着たら、可愛いだろうな


「シズ君のお勧めは、このお洋服ですか?」


マネキンの背後からにゅっとエリィが姿を現す


「あ。いや・・・」


唐突に現れた彼女に何も言えずに固まってしまう。まるで心の声を見透かされた様で恥ずかしい


「その・・・・」


「わぁ。可愛いですね。これが似合うって、そう思ってくれたんですか?」


口ごもる僕を他所に、彼女はワンピースの記事を軽く撫でて嬉しそうな顔で僕の顔を覗き込む。



「・・・・いいんじゃない。これで」


それしか言えなかった。しかし


「ふふ。解りましたじゃあこれにします」


彼女は同じ洋服を棚から取り、試着室へ。





試着を終えた彼女が姿を現すと、僕は小さく息を飲む。


長い金の髪と、清楚な白いワンピースの愛称は抜群で、肩が大きく露出してるのも合わせて非常に、その


綺麗だった。顔が熱くなり、彼女を直視できない


「シズ君。どうですか?」


エリィは両手を広げ、くるっと回って微笑む。僕は言葉に詰まりながらも、正直な感想を口にする


「・・・・・・似合って・・・ると・・・思う・・・・」


それだけ言うのが精いっぱいだが、彼女はそんな僕の頭を優しく撫でる



「このまま買って、着たまま帰っちゃいます」


「シズ君が選んでくれたお洋服で、すぐにお出かけしたいから」


心なしか彼女の頬も赤くなっている様に見える。気のせいかもしれないが


「・・・そっか」


「それじゃあお会計にいってきます。待っててくださいねシズ君」


「あ、エリィ」


僕は思わずエリィを呼び止め、手に持っていた洋服を手渡す


「その、エリィが選んでくれたこれも・・・買うよ」


エリィが見たことない表情で喜んでいた猫耳フードパーカーだ


「本当ですか!!!」


ガッツポーズを取ったまま、彼女はぴょんと跳ねる


「なんでそんなに嬉しそうなんだよ!」


「だってすごく可愛かったので・・・」


また可愛いって言われた。彼女にとって僕は、かっこいい存在ではないらしい。


「はぁー・・・もう・・・外には着ていかないと思うけど・・・着心地が良かったし。パジャマにでもするよ」


「うーんちょっと名残惜しいですけど」


「寝る時に可愛いシズ君を見れるなら、よしとしましょう!」



そう、満足げにエリィは微笑む。そんな彼女を見ながら、僕は溜息をついて肩を落とす。



少し釈然としない部分もあるが。こういう日も、悪くはない。そう、思った


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ