第21話「貴方は、そこにいますか？」
「死ねぇえええええええ！！！！」
使徒エルウッド・バレンタイン。
不死の肉体を持つ炎の竜は格納庫の天井を突き破るような咆哮とともに、鋼の巨人へと突撃を開始した
赤い天使の輪が紫電を更に強め、強く、赤く発光する。
鋼の巨人は即座に反応し、腕部の関節から蒸気を吐きながら腕を構え、迎え撃つ。
二体の巨獣が空間の中心で激突した。
ズガァンッ！！
衝突の余波で格納庫の壁が崩れ、警報が鳴り響く。 エルウッドの尾が唸りを上げて振るわれ、巨人の頭部を薙ぎ払う。 だが、鋼の巨人はその一撃を肩で受け止め、 逆に拳を振り上げてエルウッドの顎に叩き込んだ。
ゴガァッ！！
火花と血飛沫が舞う。 エルウッドは一瞬たじろぐが、すぐに反撃。 前足の爪が巨人の胸部装甲を引き裂き、内部の機構が僅かに露出する。
「ギィイイイイイイ！！！！」
咆哮とともに、エルウッドはそのまま腕を噛み砕こうとするが、 鋼の巨人は膝を突き上げ、竜の腹部に打ち込む。 衝撃でエルウッドの体が浮き上がり、天井に激突。
その隙を逃さず、そのまま落ちてくるエルウッドを巨人は腕を振り上げ、そのまま殴り飛ばした。
ズドォォォン！！！
床が陥没し、鉄骨がねじ切れる。
「舐めんじゃんぇええええ！！！ラムズの玩具風情が！！！！」
瓦礫を体からあふれる炎で消し飛ばし、その勢いで飛び上がる。エルウッドはその巨大な前足で巨人の両手に掴みかかりながら体当たりをする。その勢いで巨人は床に倒れ凄まじい地響きと共に空間が揺れた。いつ崩壊してもおかしくない程に格納庫は元の形を保ってはいなかった。
エルウッドはその巨大な前足で全体重をかけて巨人の両腕を押さえつけ、頭にエネルギーを集中させる
「鉄屑にシテヤラアァアアアアアア！！！！！」
エルウッドの炎の渦が炸裂するかと思われたその次の瞬間
「・・・させんぞ・・！！」
レリックの力を使い姿を消し、機を伺っていたシオンが空間を歪め姿を現す。彼女の左手にはレリック。そして右手には。
エルウッドの落としたデウスの遺産、マルスの剣。
シオンはその剣を後ろ足首に勢いをつけて突き刺した
「・・・こいつもお前には効くんだろう・・！！」
そのままの勢いで足首から先を一閃。両断した。
「ぐ・・！！！ぐあぁああ！！クソ！！いってぇだろうがああ！！」
エルウッドは尻尾を振り上げ、シオンに向かって思い切り叩きつける。だが
しかし全身に銃で穴をあけられた彼女の体力はそこで尽きる
「・・・見たか。化け‥物・・・め・・」
そう口にしたのを最後、口から血を吹き出し、シオンは倒れ、偶然にも尻尾の一撃を回避した。
エルウッドは片足を失った事で体を支え押さえつける力が弱まり、鋼の巨人が再び動き出す。
巨人の腕に装着されたパイルバンカーに、巨大な熱の塊が圧縮されていく。
内部から唸りを上げ、圧縮された熱量がプラズマのように発光を始める。
グシャ！！！！
轟音となって響く程の衝撃。
エルウッドの腹部にその巨大な釘を突き刺した。
「殺す殺す殺す殺す！！！！！ラムズ共ガアアアアアアア！！！！！！」
刺された痛みに構わずエルウッドの頭部に貯めたエネルギーが爆発し、鋼の巨人へと放たれた。
しかし
「シズ君！！！！！！！！」
エルウッドの頭部と鋼の巨人の間に、アイギスの盾が何十にも展開される。
魔力障壁が幾重にも重なり、衝突の瞬間に光の壁が形成される。
巨人と竜の狭い隙間で、膨大なエネルギーが弾ける。 爆発の余波は施設全体を震わせる。
そして
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──魔法装填プロトコル：強制展開──
> 魔導スロット：未対応形式
> 警告：魔法構造体「ロンギヌスの槍」は兵装規格外
> 警告：魔力濃度がパイルバンカーの耐圧限界を超過
> 警告：魔法装填は推奨されません
──強制装填開始──
> 魔力構成式：展開中……
> 魔法核：不安定
> 魔力流入：制御不能
> ノイズ検出：■■■■■■■■■■■■■■■■■■
> 警告：魔力圧縮率 487%
> 警告：供給者の神経系に逆流発生
> 警告：魂核との干渉波が増幅中
──魔法構造体：固定化──
> ロンギヌスの槍：魔力形状確定
> 魔力槍長：12.4m
> 魔力密度：異常値
> 警告：パイルバンカーの射出軸が歪曲
> 警告：装填完了時点で機体構造に致命的損傷の可能性あり
──射出準備──
【死死死】
【殺し-teやrrrrrr】
【エリィ、無事?】
【殺殺殺仇】 【シ使tottttt】
【帰---一緒n】
【痛い】
> パイルバンカー：圧縮完了
> 魔力封鎖：失敗
> 魔力漏出：臨界
> 警告：供給者の脳波が断続的に消失
> 警告：魔力共鳴が空間構造に干渉中
──最終警告──
> 射出は供給者の魂崩壊を伴う可能性があります
> 継続しますか： ➡NO YES
> 継続しますか： ➡NO YES
> 継続しますか： ➡NO YES
> 継続しますか： ➡NO YES
> 継-zzzzzzクしますか： NO⇔YES
⇔
> ⇔ >
> ⇔
⇔
➡➡➡➡
> 継続しますか： NO ➡YES
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格納庫の床が波打ち、瓦礫の残骸が微かに浮き上がるほどの圧力が施設全体に走る。
衝撃と共にロンギヌスの槍がエルウッドの胴体に打ち込まれ
内側から爆裂するようにエルウッドの胴体に風穴が開く
魔力の残光が槍の軌道をなぞり、空間に焼き付けられる。
ロンギヌスの槍。その特性は、【貫通】
肉体の檻の更にその奥、【魂に届く一撃】
戦いの余波で巻き上がった煙が、ゆっくりと晴れていく。
沈黙する二体の巨人の姿が、光と影のコントラストの中に浮かび上がる。
一瞬だが、永遠にも感じられる程に静止した時間。
その静寂を破るのは、歪な音。
ビシ！！！！！
エルウッドの頭で輝いていた天使の輪の発光が止まる。
輪にヒビが入り、光が断続的に点滅しながら小さく縮んでいく。
同時に竜の胴体は灰となって消え、その中心から人間の姿に戻ったエルウッドが現れた。
「ゴフッ」
口から血を吹き出し、床に赤い斑点を作っていく。 その視線は焦点を失い、虚空を彷徨うように朧気だった。
周囲の光を認識しているのかも定かではない。 だが、彼はゆっくりと、フラつきながらも、歩き出す。
「もう一度・・・お前と」
「お前・・に・・・会いたかっ・・・・・」
パリン
ヒビが入った天使の輪が完全に砕け、そのまま正面に倒れこむ。
「デ・・・ウス・・・・・」
その言葉を最後に。
エルウッドの肉体は今度こそ完全に灰となり消えた。
カラン
【赤い結晶体】が灰の中から現れ、床へと転がる。
―使徒エルウッド・バレンタインは滅びを迎えた。
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・・・・・・・・・・・・・・
「・・・ズ君・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「シズ君！！！シズ君！！！！」
声がきこえる
「シズ君！！！！！！」
エリィの声だ。 でも どうしてそんなに。泣いているんだ。
泣かないで。
「どうしてこんな事を・・！！誰か・・・！！誰か助けて！！シズ君が！！！冬華！冬華！ねぇ！どうしよう！どうしたらいいの！？ああ・・・シズ君！！！」
エリィはシズの胸元に縋りつき、震える指先で彼の頬を撫でる。 その肌は冷たく、血の巡りを失った機械のように沈黙していた。
「そんな・・！！助けて！！！シズ君が死んじゃう！！！お願い！！お願いします！！！」
そうか 僕の体は
もう でもいい 彼女が生きてるなら それで
エリィがいたから 寂しくなかった 何も覚えてなくても 知らない場所でも
なにも解らなくても
君が いたから
「シズ君！！嫌！嫌ぁあああ！！！あなたを守るって言ったのに！あなたの幸せを願っていたのに！どうして！！どうして！！！あなたがいないと私は…！！」
エリィの声は震え、涙が頬を伝い、シズの胸元に落ちていく。 彼女の指はシズの手を強く握りしめ、震える肩が彼の体に縋りつくように重なっていた。
泣かないで 君を 守れたんだから それだけで いい
エリィ
「シズ君・・・しず・・・くん・・・・？」
僅かに目を開いたシズは、エリィの目元の涙を拭う。その口元は、少しだけ微笑んでる様。
それを最後に、シズは目を閉じ
涙を拭う手が、糸が切れた様に落ちる。
「シズ君？・・・シズ・・・く・・・」
エリィの中で、何かが弾けた。
「・・駄目・・・・駄目！！！絶対に！！死なせない！！！死なせたくない！！！」
「あなただけは！！！私が！！！！！」
静かで、それでも感じる圧倒的な気配が空間を満たした。
エリィの周囲にアイギスの盾が現れ、二人の周囲を囲む。
そして
エリィの頭上から天使の輪が現れた。
使徒エルウッドの赤く歪な形では無く、洗練された綺麗な青色の輪。
エリィの髪の毛は急速に伸び、蒼い炎の様になって揺らぐ。
その炎は熱を持たず、格納庫の上がった熱気を冷まし、周囲を穏やかな空気へと作り変えていく。
その様子を見たコーネリアは一瞬だけ僅かに肩を震わせ、頭に手を軽く添え、目を見開く
その目に浮かぶのは、涙だった。
「・・・デウス。あなたはそこにもいるのですね。」
エリィは横たわるシズの体を起こし
ゆっくりと口づけをする。
その瞬間、二人の間に大きな青い陣が広がる。
その場の全てを光が満たしていく。
その場の全てが、青い光に包まれていく。
音が消える。
そして、二人は。
