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第19話「使徒殲滅戦③」


エルウッドは構えをとらず、腕をだらりと下げたまま、剣を床に引きずるようにして突進する。

刀身が金属床を擦り、甲高い音を響かせながら、青い残光を軌跡として残していく。


エリィは両の手を前に翳し、魔力を集中させる。

周囲を回転する無数のアイギスの盾が、軌道を描きながら高速で展開される。


盾が弾丸の如くエルウッドへと放たれた。


だが


盾がエルウッドを粉砕するその直前。


「おらあああああぁぁぁあああ!!!!!!」



エルウッドはマルスの剣をアイギスの盾に叩きつける。青く不思議な残光を輝かせながら、盾に触れる瞬間、剣は怪しく光を放つ




盾に亀裂が入り、アイギスの盾は粉々に粉砕された




「・・っそんな!!!」




これまで、盾を無効化された事はあったが、【壊された】のは初めての経験だった。


エリィは一瞬怯み一歩下がる。しかしその場で踏みとどまり、倒すべき敵に向けて再び手を翳す。


無数のアイギスの盾がエルウッドへと弾丸の様に放たれた。



「お前の【アイギス】と【マルス】は元々デウスの野郎の遺物だ!!同じ出力なら、こいつだけが唯一、てめぇの壁をぶち壊せる!!ラムズの地で唯一使える魔力の塊だ!!ヒヒ!!!」


次々と投げつけられる盾を全て躱し、盾に抉り吹き飛ぶ床の上に跳躍しつつ、時には盾を割りつつエルウッドは距離を詰める


「お前みたいな小娘じゃあその魔法の力が引き出しきれねぇ!脆い!弱い!手に余る!!!だからなぁ!」


「寄越せ!!!寄越せ寄越せ寄越せ!!!その心臓を!!俺にぃいいいい!!!!!!」


叫びが格納庫全体に響き渡り、天使の輪が激しく発光する


「嫌です!!!私はここで死ぬわけにはいかないんです!!!あなた達の目的なんてどうでもいい!あなたはシズ君を・・・、皆を傷つけた!!私はあなたを許さない!!!!ここであなたを倒します!!!必ず!!!」


エリィは自分を奮い立たせる様に、皆を守るためにエルウッドの威圧に耐え、吠える


これまでに見たことが無い程の数のアイギスの盾が次々と生成されエリィの周囲に展開され、格納庫が光の軌跡で埋め尽くされる。


いくつもの障壁がエルウッドを潰す為に降り注ぎ、手が吹き飛び、頭は潰され、時には足が潰れる。それでも尚彼は止まらない。再生を繰り返し、迫りくる盾を時には砕き、少しずつエリィへと前進を続けた



その様子を壁に背を預け、コーネリアはただ見ていた。

アイギスの盾の美しい輝きを。マルスの剣の青く輝く軌跡を


「デウス。死して尚あなたの魂、あなたの鼓動を感じます。あれから、もう何年経ったでしょう」


一本の刀がコーネリアに向けて投げつけられる。

剣は首元の壁に突き刺さるが、彼女にはかすりもしない。



「・・・何故貴様がここにいる・・・コーネリア・・!!」



息も絶え絶えのシオンが、コーネリアを睨みつける



「お前たち反戦派の【教会の使徒】が【デウス派】の狂信者と何故一緒に行動・・している・・我々を裏切ったのか・・!」


コーネリアは片目を開き、シオンの眼を覗き込む。


「裏切ったのは貴方達でしょう?」


痛みと焦りで冷や汗を流しつつシオンは睨み返す。

だが、この件に関しては何も言い返す事ができない。


「【デウスの心臓】を盗み出したアトリ達との交戦の最中、アゾスは心臓を持ち去った。あまつさえそれをラムズの器と混ぜ、彼女を作った。教会への報告も届いておりません・・・気付いていなかったとでも?」


ふふっと口元に手を当て、コーネリアは笑う。


「・・・それ自体は手違いだった様ですが」


「あなた(アゾス)は神の奇跡をゾハール大陸の外に持ち込もうとした。そうすれば、万が一、教会(私達)があなた達を見捨てても戦う為の備えができる。そんな所でしょうか」


「デウスを再び起こせば。我々教会の気が少しでも変われば。あなた達、人の世は終わる。ですが安心してください。我々にその意思はありません。しかし」


「デウスの遺体、デウスの遺産を求めるという点でアトリと今回は目的が一致しています」

「純粋な魔導士ではラムズ(人間達)の地で戦う事はできない。


教会に余分な戦力は無い。そこで一時的に彼らと協定を結んだのですよ」


「私達(使徒)であれば、ラムズの地であっても最低限の戦闘行動は可能です」


「機械仕掛けの神(デウス-エクス-マキナ)の技術提供は教会にとっては無くてはならないもの。アゾスとの協定を切るつもりはありませんが」


「この場においては、あなた達が死んでもエルウッドが滅んでも。教会としてはどちらでもよい。」


ギリッ!と歯を食いしばりシオンは黙る


「ですが、今は気が変わりました」


コーネリアは、エルウッドの猛攻を必死に防ぐエリィへと視線を向ける。


「私はあの子に興味があります。捨て子のラムズ(地上人)でも無く、ゾハールの民でさえ無く、何者でもない。私たちの理の外にいる存在」



「彼女が【神の器】になりえるか。それを見届けさせてください」



「貴方達の未来は、それ次第」



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「はぁっ・・・はっ・・・冬華・・・生きてる・・・?」


冬華は肩からの出血で顔色は青白く、呼吸も浅い。だが不思議と彼の声を正確に捉えた。


「シズ君・・・?」


シズは続けて声をかけ続ける。


「このままじゃみんな死んでしまう・・だ・・から・・・僕に考えがある・・・・だから・・教えて・・ほしい・・・・どうすれば、【使えるのか】」



その内容に冬華は驚愕する。



「駄目だシズ君・・・・何が起こるか・・わからない・・それに、シズ君自身が・・次はどうなるか解らない・・

君にまた・・・あんな思いをさせるなんて・・・できない・・それに今度は・・・・死んでしまうかもしれない・・・駄目。シズ君。それは駄目・・!」



「それでも僕はみんなが生き残るチャンスに賭けたい!!」



その言葉と同時に、僕は両手で床を押さえ、ゆっくりと立ち上がる。 あばらの激痛が全身に走り、視界が霞む。 頭がおかしくなりそうだ。だけど、それでも——


「僕は・・・どうなってもいい!!!・・それに・・今何かしないと、きっと彼女は傷つく!!だから!!」


膝が震え、呼吸が荒くなる。


それでも


「僕が・・・やる・・・!!!」




使徒を殺すために。


彼女を守るために。




これで  最後だ



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