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第16話「使徒殲滅戦 序章」

地下20階住居区域


僕はエリィに会って話をする為に、施設の廊下を冬華と二人で歩いていた


しばらく歩いてると、冬華はぽつりと僕に言った


「ごめんねシズ君」


「冬華、さっきも謝ってただろ。僕は大丈夫だから気にしないで」


冬華は足を止めて、床へと目を落とす。その表情は暗く、罪悪感に満ちていた。


「さっき言った言葉、私自身に対して言ってた事でもあるんだ」


「あの子を外の世界に逃がして、でもそれ以上に何もしてあげる事ができなくて」


声はどんどん暗く、沈んでいく。


「いつかアゾスに戻るしかないんだって、解ってたのに」


「エリィにどんな顔して会えばいいのか、解らなかったんだ」


冬華は顔を上げ、自嘲気味に笑いながら壁に背を預けた。


「だから、君のとこに来たの・・・・臆病だな。私」


シズは冬華の眼を真っすぐに見ながら、言葉をかける。


「・・・エリィもきっと似たこと考えてたんだろうな」


「どんな顔して会えばいいのか、解らないって言ってた。冬華と同じだよ」


「だからさ、一緒に行こう冬華。どんな結果になってもさ」


冬華が教えてくれたんだ。勇気を出さないと。言いたい事は、ちゃんと伝えないとって。だから


「何も言わないで別れるのは、駄目なんでしょ?」


「うん・・・うん!そうだねシズ君。」



その時



遠くで大きな音が鳴り、施設全体へと響き渡る。


照明が落とされ、辺りは暗闇に包まれた。


「何?どうしたの?」


冬華は素早く手元の端末を取り出し、施設の状況を確認する。


「メインの電源が落ちてる・・・?」



すぐに非常灯が点灯し、赤い光が壁を染める。だが、安堵する間もなく

地下施設全体に断続的な振動が走り、胸の奥に嫌な予感を加速させる。



これは・・・事故じゃない。



「何かが変だ」


冬華はその言葉と同時に、小走りに駆け出した。そして振り返りながらシズに告げる。



「シズ君はここで待ってて。私、上まで様子を見てくるから」



「冬華、待って」


慌てて彼女の腕を思わず掴む。


「一人じゃ危ない。僕も行くよ」


胸騒ぎが、言葉よりも先に体を動かしていた。


何だか嫌な予感がする。このまま一人で行かせたら、きっと駄目だ。


冬華は少しだけ笑った後、ふう。とため息をついて真剣な顔で頷く


「うん。行こっ」



----------------------------------------------------------


地下50階 転移空間時計塔エリア


「どうした?何があった」


『て、敵-す!!地上1階--エレベーター付近は制--圧され、現--地下--12階で交戦中!至---応援を・・!』


無線が乱れていて声が聞きづらいが、その奥で銃声の様な物が響いていた。


敵?敵だって?


「どういう事だ。何故この場所が解った?」


いや、今はそんな事よりも


「敵の数は?武装は?どういう連中だ。簡潔に話せ」





『敵は・・・・使徒です!し、使徒がきました!!』





シオンの目が見開かれる。



使徒――ゾハール大陸の外へ? 危険を顧みずに? ここ数百年、使徒が地上に現れた記録は存在しない。


なぜ“ねぐら”の位置が漏れた? 規模は? 【どの使徒】が来た? 考えるべきことが多すぎる。


煙草の箱を手に取り、一本を口に咥える。だが火をつけずにシオンは思考を巡らせる・


頭の中で、優先すべき行動を冷静に整理する。


現在、開発区画で整備中の無人活動型デウス・エクス・マキナは、魔動機の搭載が未完了で、稼働には至っていない。

そもそも、デウス・エクス・マキナは大規模戦闘用兵器であり、入り組んだ通路ではその性能を発揮できない。



さらに、上島冬華が創り出した3体の完成形マキナは、数か月前にエリィの手によって破壊されている。




対魔導士第3課の部隊は、大規模な作戦行動中で現在ゾハール大陸から動けない。

・・・それ自体が誘導だった可能性は0では無い。




このタイミングでの襲撃――あまりにも“都合が良すぎる”



「聞こえるか。可能な限り時間を稼げ」


「それも無理なら逃げろ」


『り---了k--あ--!!!--るぞ!!---で---逃げ--!!!!----!!!!!!!』



無線からはノイズしか聞こえなくなる。


シオンは歯を食いしばり、煙草の箱を握り潰した。


現状、使徒を滅ぼせるのは自分と、自らが保持する対人用マキナ、レリックのみ。


いや――


エリィへと振り返る。


狙いは恐らく・・・しかし、現状の戦力ではどうしようも無い。



「敵だ。お前の力を貸せ」


「上には、シズ君が!!!!」


彼女が叫ぶ。


「ここはアゾスの最奥だ。迅速に上に向かうぞ。準備しろ」


彼女の力をこんなに早く頼ることになろうとは


・・・最悪の場合、この場所ごと破壊して敵を道連れにするしかない。


だが、そんな結末は可能な限り避けたい。




薄汚い使徒共め




彼女はレリックの収められたアタッシュケースを手に取り、ありったけの殺意を籠め呪いの言葉を吐き出した。




「滅ぼしてやる」




彼女は速足に上層へと昇るエレベーターへと乗り込み、


エリィもそれに続く。冷や汗を浮かべつつも、エリィは気丈に宣言する


「私が、皆を守ります。シズ君も。・・あなた達も」


まるで、自身に言い聞かせる様に宣言する。


自分の手の震えに。エリィは気付いていなかった。



明日も更新します。よろしくお願いします。

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