第01話「残りの人生の、最初の一日」
遥か昔作って完成しなかった同人ノベルゲームのシナリオです。このまま世に出ないで消えるよりは、一人でも誰かの目に留まれば、と思い投稿しました。よろしくお願いします。
目を開けて最初に見たものは、果てしなく広がる青空。どこまでも澄み渡り、一片の雲もない。とても静かで、穏やかな波音だけが規則正しく響く。潮が寄せては引き、砂を優しく撫でる音が心地よい。
肌に触れる砂はさらさらとしていて、微かに温かい。潮風が頬を撫で、少ししょっぱい匂いがする。
どうやら私は浜辺で眠っていた様だ。きめ細やかな砂が肌に張り付いて体がチクチクするけど、それらは些細な問題だった。
「私は、誰?」
そんな言葉が口から飛び出した。なぜなら私は何も思い出せなかったから。そして何よりも
「裸?」
全裸だった。全裸で浜辺で眠りこけていたらしい。私は一体、何?
前方には海岸がどこまでも広がっており、後方には森しかない。
遭難したのだろうか。海を泳いでいたら、そのまま波にのまれて流れ着いたのだろうか。何も解らない。
「誰かいますか?」
自分でもびっくりするくらい落ち着いた声で周囲に少し大きな声で呼びかけてみたが、何も反応は無かった。こんな状態で人に会うのもちょっと困ったものだけど。
流石に胸か股間は何かで隠した方が良い気がしたが、丁度いい布切れや衣類として使える様な大きな葉っぱの様な都合が良いものは何もない。とりあえずボサボサになった髪の毛を比較的硬い植物の根っこで結びまとめておく。
海は地平線の向こう側に至るまで何も見えないし、海岸線もどこまでも広がっている。進む場所は森の中しかない。
仕方がない。とにかくどこかに行こう。おそらくここにずっといても何も起こらない。そんな気がしてならなかった。
浜辺から続く森は、まるで誰かが手を加えたように、整った道と鬱蒼とした森林がはっきりと分かれている。
ふと立ち止まり、周囲を見渡すが、生き物の気配はない。鳥の声も虫の羽音も聞こえない。ただ、風が木々を揺らし、葉が微かに擦れ合う音だけが響く。
私はそのまま歩き続けた。裸なのは少し気になるが、どうしようもない。時間を意識することもなく、ただ足を前に出す。
森の奥へ進むにつれ、少しずつ肌に湿った空気がまとわりつくが、それも特に気に留めることはなかった。
どれくらい歩いただろうか。ふと立ち止まり、空を仰ぐ。雲が流れている。それをぼんやり眺めながら、気づく。そういえば、喉が少し乾いている。
そんな事を考え始めた時、唐突にそれは、起きた。
最初は小さな振動。瞬く間に大きな地響きへと変わっていく。まるで巨大な物が練り歩いている様な。
「助けて!!!誰か!!!助けてくれ!!!」
声が聞こえた。ふと声が聞こえた場所へふり返る。少し離れた場所で、若い男女が森を走っていた。男が叫ぶ、手をつかまれ一緒に走る少女は、もう息も絶え絶えという感じだった。
森林から彼らが飛び出した直後、それは現れた。木々をなぎ倒し、咆哮の様な、金属がこすれ合う様な歪な音を上げながら。
大きな浅黒い塊が、硬く冷たい脚を地面に突き刺しながら動く。生き物のような形をしているが、血も肉もない。背に張り付いた無数の管が奇妙な音を立て、何かを吐き出している。金属の破片の雨。
轟音と共に飛び出した小さな塊が木々を貫き、破裂し、爆ぜていく。
巨大な蜘蛛のような形をしているが、その脚はしなやかではなく、無機質に地面を踏み潰していく。冷たい黒い殻。鉄の体。それが今、人を殺そうとしている
私は瞬間的に「助けなきゃ」と思った。そして、巨大な蜘蛛に対して人差し指をかざし、自然にその言葉を口にする
「盾一つ、真っすぐ飛んでゆけ」
瞬間、私の指の先に人間と同程度のサイズの光の壁が現れ、私の言葉通り、それは真っすぐ正面に向かって打ち出された。
横方向から突如私の「盾」をぶつけられた蜘蛛は、そのまま胴体の3分の1程を抉りぬかれ、内部から破裂した。大きな衝撃と共に爆裂する。
「あれ?」
なんでこんな事ができる?私は一体、何。
煙を上げて燃え続ける蜘蛛から視線を外し、追われていた男女の方向に目を向ける。
男女は私を見て、とても驚いた顔をしていた。ああそうか、私は今全裸だった。どうしよう。何て説明すればいいだろう。
そんな事を考えていたが、倒れた蜘蛛の内側から何かの燃料が破裂し、周囲に衝撃が走る。
私は再び蜘蛛を見上げる。すると、蜘蛛はまるで血管に血液を流し込む様に、全身に纏わりついた管に赤い光を纏わせ、咆哮をあげた。
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システム診断開始……
異常発生:メイン魔動炉、
損傷率72% バックアップ魔力供給システム
起動…… ……起動失敗。再試行。
……起動成功、魔力供給率35%に回復。
制御系統、機能低下中――応急処置モードに移行。
戦闘プロトコル:代替アルゴリズムにて再構築開始
実験ヲ 続行しマす 目標 E-001を補足
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沈黙していた巨大な蜘蛛が、再び動き出す。 抉られた頭部から赤い光が漏れ出し、断線した管が火花を散らしながら作動する。 脚を地面へ深く突き刺し、胴体を持ち上げると、無数の管が開き――金属の弾が飛び出した。
「盾3つ。私たちを守れ」
反射的に指を突き出し、光の盾を展開する。 砲弾が盾に弾かれ、轟音が響く。衝撃が腕まで伝わり、指先が痺れる――これが直接当たれば確実に死ぬ。
「大きな盾1つ、上から押しつぶせ」
上空に巨大な光の壁が現れ、勢いを乗せて蜘蛛を押しつぶす。 金属が歪み、悲鳴のような軋み音を上げる。しかし、足が地面を抉るように抵抗し、徐々に潰れながらも動きを止めない。
私は蜘蛛にかざした手を、ゆっくりと手首を下に曲げる、それに反応する様に、光の壁は更に強い力で蜘蛛を押しつぶす、鉄と鉄が歪に軋み合う音、内側で爆発する何らかの動力炉の音が混ざり合い、まるで咆哮の様な叫びが森全体を激しく振動させた。
脚の先端が私へ向かい、ゆっくりと伸びる。鋭い刃のような先端が迫る。が
――それは動かなくなった。
金属の目から光が消え、全身から煙が立ち上る。 蜘蛛は完全に沈黙し、ただの残骸となった。私の眼前まで伸びた腕は力なく地面に落ちる。
今度こそ完全に動かなくなったのを確認した私は、再び彼らへと目線だけでなく、全身を向ける。
男は尻もちをついた状態で私を見上げ、少女はその男の背中に隠れ警戒する様に私を見つめていた。
そして男は口にする
「エルフ・・・・・・?」
エルフ?それは私の名前なのだろうか。何やら知り合いに会えた様だ。とりあえず、話を聞いてもらおう。そして、何か着る物を貸してもらおう
ようやく人と合えた私は胸を撫でおろした。何やら【耳が小さな】人達だった。それが、何も覚えていない私でも何故かとても不思議な感じがした。
小説を書くこと自体初めての経験なので、拙い部分ばかりですが勉強して改善していこうと思います。
読んで頂きありがとうございました。