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証拠

挿絵(By みてみん)


ジョニーに金貨を盗まれた後、ビーフは高価な装備品を数点

「情報提供料だ」

と言って持ち去った。


トラウトの方はジョニーに盗られた金貨とビーフに持ち去られた装備品以外の品々の目録を作っていた。


その後も報告が入り続けたが

「なんだと!『人魚の涙』が見つからないだと!ふざけんな!」

とトラウトは怒り狂った。


何もかも思い通りにならない。

ジョニーの活躍はジワジワ悪党にストレスを与えている。


「くそ!」

トラウトが証拠品を並べたデスクを叩いていると

「あの…」

と声を掛けられた。


「なんだ!」

トラウトが怒鳴るように返事をすると

「容疑者がトイレに行きたいと言ってるんですが、行かせて良いでしょうか?」

と女性職員が怯えたように訊いてきた。


「行かせて良いが、個室の中までちゃんと付き添って監視しろ!」

トラウトの答えを想定してたかのように

「男性職員が出払ってるので男性の容疑者に女性職員がつく事になりますが?」

と女性職員が尋ねた。


「…はぁ、なら俺が中まで付き添って監視する。それで文句はないな?」


「はい。ありがとうございます」


尋問官も書記官も女性職員だったのだ。

ダンとジンはイケメンだったお陰で厳しい取り調べを受けずに済んだ。

お茶を飲みながら談話していた程度の感覚だった。


しかし尋問官も書記官も年齢的に三十路前の行き遅れ女性達。

臭そうなオッサンなどが容疑者だった場合とイケメンが容疑者だった場合の対応格差は凄まじいものがある。


女性達の二重人格的対応格差など想像もできないジンは無邪気に

「尋問官が良い人で良かったぁ」

と喜んでいた。


トラウトはダンとジンと一緒に男性用トイレへと行った。

狭い個室に男3人で入って、男の排泄シーンを見せつけられるのだ。

一気に気が滅入った。


ーーと、その時


「キャァァァァーッ!!!!!」

と悲鳴が響き渡った。


トラウトとダンとジンは顔を見合わせて

「「「………」」」

無言のまま暗黙の了解を得たかのように、揃って男性用トイレから飛び出して廊下へ出た。


「なんなの!なんでこんなものがこんな所にあるの!!!」

女性の声は女性用トイレから聞こえてきた。


駐在所内に残っていた女性職員達がわらわら集まって来ていた。


「ま、まさか」

「いやっ!気持ち悪い」

「ポークのハンカチよ!」

と女性達の声が聞こえる。


「なんなんだ一体!」

トラウトが苛ついて尋ねると


「『人魚の涙』が見つかりました!ポークのハンカチと一緒に!」

と女性警備兵が答えた。


「なんだと!」

トラウトは絶句しながらも

「確認する」

と言って女性用トイレの中へ足を踏み込んだ。


「おい!お前!ちゃんとソイツらを見張っておけよ!」

と女性事務員へ怒鳴る事も忘れないのがトラウトらしい。


「ここです!」

そう言われて見ると確かに便槽の中に『人魚の涙』のイミテーションとハンカチが見える。


「あのハンカチはポークのものか?」

トラウトの質問に


女性警備兵は

「そうです」

とキッパリ答えた。


「そうか…」

とアッサリ納得する所がダンとジンの目には異様に映ったが


一見普通に見えて実は精神的に病んでる人間は全く同じデザインの服やハンカチを何枚も揃えて、いつも同じ格好をしていたりするのだ。

ポークもそういう人物で、全く同じデザインのハンカチを長く愛用していた事もあり、彼を知る人間なら彼がハンカチで汚い汗を拭う所を目撃した事が何度となくあったのだ。


何故ポークのハンカチが女性用トイレにあったのか…

(ジョニーが勝手に宝石と一緒に便槽に落としたのだが、元々女性用トイレ内にあった)

事情は当人にしか分からないだろうが、とにかくダンとジンには関係ない話だ。


皆が

「ポーク、あのクズ!」

「豚みたいな顔のくせに」

「よくも女子トイレに」

「死ねば良いのに」

とポークの悪口を言い出した中


「ポークのハンカチと『人魚の涙』が一緒に見つかったという事は、泥棒はポークなんじゃないですか?」

女性尋問官が鋭い質問をトラウトに浴びせた。


「いや、泥棒はそこの冒険者兄弟だ」


「彼らは一度もこの女子トイレに来てませんでしたよ」


「こっそり忍び込んでたんだろう」


「こじつけ、苦しくないですか?この状況だと誰がどう見ても取り調べられるべき泥棒はポークですよね?」


「確実なタレコミがあった。泥棒はソイツらだ」


「そのタレコミって怪しいんじゃないですか?」


「情報源に関しては黙秘義務がある」


「情報源はどうせ名前も出せない裏社会の住人さんとかでしょ?良い加減情報源の身元を明らかにしてくれませんか?それともトラウトさん、あなたポークに弱みでも握られてるんですか?」

女性尋問官は強気である。


この女性尋問官。気の強さが災いして婚約破棄された経験が三度ある元男爵令嬢だ。

元からポークの事が嫌いだったし、ダンと対面して対話するうちにすっかり気に入っていた。


(ポークこそが真犯人だって事にした方が都合が良い)

と思ったのだ。

いざとなれば実家の権力を使ってポーク真犯人説をゴリ押ししても良い。


女性尋問官がトラウトを睨むと

「…今回の情報源は借金取り立て人のビーフだ」

とトラウトが白状した。


「ビーフ。詐欺師で有名よね?それこそ騙しておびき寄せて恐喝して金を出させるクズじゃない。ポークとビーフの共犯って事で調書を仕上げておくわ。ダン君とジン君はこの場で釈放よ」


「…分かった」

トラウトは女性尋問官の言葉に一応従うようだが、目付きは悪い。

ダンとジンを呪うような目で見ている。


ブサイクなトラウトにはダンとジンが面食い女性を籠絡したように思えたのだ。


衝動的に

(イケメン死ね!!!!!)

と掴みかかって殴りたくなったが、辛うじて堪えたのだ…。




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