あの頃の先輩に褒めてほしいだけの話
掲載日:2025/05/01
突如、空から先輩が降りてきた。高校の文芸部で一年だけお世話になった。
「お盆だからね。ちょっと来てみたの」
俺が最後に見たときと同じだった。高校の夏服で、背丈や笑った表情も、十年以上前のままだった。
「追い抜かされちゃったね。背丈も学力も。それに年齢も」
「学力には、まだ自信ないですよ」
「大学まで卒業したんでしょ? 私より学歴高いよ」
「先輩だって本当なら東大出てましたよ」
「本当ってなに? 本当の私は、永遠の高校生だよ」
先輩は笑った。
「今日は仕事?」
「はい。休憩中ですけど」
「サンドイッチだけ? お腹減ってないの?」
「なんか、社会人になってから食が細くなったんですよね」
「ふうん。生前の私より食べてないね。あの頃は、君が私のお弁当箱小さいって言ってたのに」
また笑った。
「休憩の邪魔してごめんね。懲りずに来年のお盆もくるかも。またね」
先輩が空へ昇っていった。休憩時間が終わろうとしていた。
先輩、今の俺、頑張れていますか?




