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愛され男爵夫人の下克上 〜クラウディア、寂しさあまって神に挑む〜  作者: 奏似
2章 せんかの光明

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2-4

領都、バルテン邸。


ガチャリ。

扉を開けて入ってきたのは小柄な好々爺。

「おや、どうしてここに?」

「貴方がいつも裏口から書斎に直行するからでしょう?」

「いやまぁ、ははは」

「今日はお聞きしたいことがございまして」

「おや珍しい。君が教えを乞うだなんて」

「私もそう思います。でもまぁ、パンはパン職人に焼かせるものでしょう?」

「仰る通り。それで、聞きたいこととは?」

「神の御名。ご存知でしょう?」

「禁忌。知ってるよね?」

「ええ。それで?」

「分かった。分かりました、教えるよ。一息だけ、私にも心の準備をさせておくれ」




開拓村。


防戦一方。

戦線は後退し縮小し、石柱の広間の寸前まで押し込まれた。

お義母さまは遊撃として駆け回っているが、退路を拓くことさえ出来ていない。

絶望的。

それが今の私たちの状況。

戦えない女子供たちは身を寄せ合い、震えて一心に祈っている。神に届かない祈りを。

…私だって祈りたい。

家族の無事を。

戻らないカレナの無事を。

腕の中で震えるツィータの無事を。

カレナンツィーナ様に届ける祈りを。

…でも。

『大丈夫。言ってごらん?』

相変わらずの緊張感のない声。

「カ、カレナ様…」

恐る恐る、名を紡ぐ。

「カレナさま?」

誰にも届かないと思った呟きを拾ったのはツィータ。

淡い光が、泡のように蛍火のように、密やかに浮かび上がる。

「そう、カレナンツィーナ様。私たちをお救いくださる女神様の名前」

「カレナンツィーナさま?おねがいめがみさま、みんなをたすけて!」

光が溢れ出す。

きつく目を閉じ祈りを捧げていた者たちも、瞼を透く光に異変に気付き、見上げる。

言えた。なんで?いや、今はそんなこと!

立ち上がる。

膝が折れそうになるけど、無視!

「皆様、祈りを。我らの守護者たる女神カレナンツィーナ様へ」

明らかな動揺。

神とは唯一絶対の存在。名を知ろうなど畏れ多い。この窮地ですら、人の思考には枷があった。

「神は我らを救いたいと望んでおられる!そのためには名を呼び、祈りを届けるのです!」

動揺は混乱へと変じようとしていた。

…名を呼ぶは禁忌。

…神ならば祈りなどなくとも。

反証が次々に浮かんでいるのが目に見える。

ダメ、かぁ。

「たすけて、カレナさまぁ!」

腕の中のツィータが、喉を枯らして叫んだ。

強い光が大きな泡のように広がり、魔物の勢いを一瞬押しとどめたように見えた。

「カレナ…様?」

「カレナンツィーナ様!」

口々に名が呼ばれる。

光の泡は、次第に溢れるように場を包み、広がっていった。

魔物の吠え声が遠ざかり、兵たちの声に勢いが戻り、そして。

ぱたり。

私の緊張の糸、切れたっぽい。

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