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ぷろろーぐ①

「ーー旦那様!! 旦那様はわたくしと仕事、いったいどちらが大切なのですか!?」

「すまないクラウディア。大事な任務なんだ、分かっておくれ」

「そう言って婚礼翌日に出立して、昨日やっっっと半年ぶりに帰ってきたばかりではないですか!!」

「いや、本当にすまないと思っているんだ。どうか信じてほしい。……だが、私が行かないことには隊が立ち行かないのだよ」

「そうですか分かりました、旦那様はわたくしより仕事が大切なのですね」

「そうは言うが、お前だって今の何不自由のない暮らしを失いたくはないだろう?寂しい思いをさせるのは私も心苦しいが、その寂しさを埋めるために爵位を捨て衣食にも窮する生活をお前にさせるなど、私には耐えられん」

「…………」

「それに、自分で言うのもなんだが、私は騎士団の中でも特に評価されていてだな。功績を挙げれば更なる栄達も決して夢物語ではない。お前も喜ばしいだろう?」

プツン。

「寂しいけれど贅沢な暮らしと、寂しくないけれど困窮した生活のどちらがいいかと、そういうお話ですか?」

「え、ちょ、待、クラウディア?」

「どうしてなのですか?」

「……どうして、とは?」

「なぜその2択なのですか?中間はないのですか?困窮を望むところとは言いませんが、高い地位も贅沢も私は欲しておりません。それなりの地位、旦那様とこれから授かるであろう子供たちに囲まれた穏やかな暮らし、それがあればわたくしは充分幸せですのに」

「待ちなさいクラウディア、滅多なことを言うものではない」

「は?」

「お前ともあろう者が神の教えを忘れた訳ではないだろう?神は勤勉をこそ尊ばれる。成せるを為さぬは悪徳である、と。聡明なお前ならばしかと理解しているはずだろうに、寂しさの故とはいえ、そのような不心得を言うものではない」

「あ……」



ーーぁああ、あああああああっ!!



「こ、ん、の、ドアホ神ぃ!!」

「ちょ、落ち着いてクーちゃん」

「クーちゃん言うな!! エセ創造神!!」

「エセ違う、僕悪いことしてない」

「じゃあなんだってあんなブラック宗教が蔓延ってるってのよ」

「ブラックて。えーと、ほら、勤勉なのは悪いことじゃないじゃない?」

「程度ってモンがあるでしょうが、程度ってモンが」

「仰る通り」

「だったらさっさとあのブラック教義撤回してきなさいよ!」

「さらっと軽く凄いこと言うなぁ……。とは言ってもねー。僕が言っても聞かないよ、あの子たち」

「はぁ?」

「あの子たちが信仰してるのはあくまでも僕の眷属神だし」

「ならそいつと話するから連れてきなさいよ」

「連れてくるも何も、さっきからずっとそこで土下座してるんだけど」

「あん?」

「ももももも申し訳ありませんクラウディア様!!」

「ペットの仔犬じゃなかったのねこの子……謝罪とかいいから、教義をどうにかしてくれませんか眷属神様」

「ももももも申し訳ーー」

「それはいいってば」

「この子もね、あれはさすがに行き過ぎだと思って程々にするように呼びかけてきたんだよ、今までにも」

「え?だったら」

「悪魔の囁きって言われたって」

「マ・ジ・か」

「えぐえぐ……私ほんとに神様なのに、信じて貰えなかったんです……」

「あ、えーと、なんかごめん。ガチ泣きやめよ?ね?」

「ぐす……はい、すみません……」

「てゆーか、神様なんだからなんか信じさせる方法あったんじゃないの?バチ当てるとか色々」

「悪魔呼ばわりはさすがに酷いと思って、神聖魔法封じたりしました……」

「ちょ」

「クーちゃん聞いた事ない?苦難の季節」

「え、あれおとぎ話…………じゃないの?」

「治癒術とか結界術とかがいきなり使えなくなって、さくっと人類滅びかけたんだよねー」

「うぅ……本末転倒と思って慌てて元に戻したんですが、そしたら神(私)が悪魔(私)を駆逐したのだー、とか言われて。わた、私、もうホントにどうしたらいいか分からなくなってしまって……」

「超ウケるよねー」

「うわーーーーーーん!!」

「泣ーかーなーいーでー!! てか煽るなバカ!!」

「クーちゃん怖いー。てか、ねぇねぇクーちゃん」

「なによ」

「旦那さん心配してるから、そろそろ戻った方が良くない?」

「…………ここって、時間が止まってるとかゆっくりになるとかそーゆー仕様じゃないの?」

「そうして欲しいならそう言ってもらわないとー」

「あんた、後で絶対説教するから覚えときなさいよ!」

「やだー、クーちゃんマジ怖いー」

「あと、眷属神様ちゃんと慰めたげなさいよ!!」

「うわ優しー。…………やっぱ面白いなぁ、クーちゃん」



「ーーディア、クラウディア!?」

「……あ、旦那様。申し訳ありません、寂しさのあまり、神様にすがりついてしまいました」

「あ、いや、無事ならよいのだが。信心深いのはいいことだが、呼吸も忘れるほど祈りに没頭するのは勘弁してくれ。こちらの心臓がもたない」

「あら、心配してくださったのですか?」

「クラウディア……」

「冗談ですよ。無闇に心配をおかけしないよう気をつけます」

「そうしてくれ、寿命が縮む」

「お家のためにも長生きしていただかないと困りますもの、このようなことは二度としないとお約束いたしますわ」

「……全く、このお姫様は」

「ひゃあ!?旦那様、いきなり抱えあげないでくださいませ」

「目を離すと何をしでかすか分からないから、しっかり捕まえておかないとな。それに、出立まで僅かばかりとはいえ、夫婦水入らずの時間を過ごしたいのだ。許せ」

「…………もう……」



「で、何もなかったと。ED?」

「うっさいわ!!」

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