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以下の小説と連動しております。
宿禰凛一編は「one love」
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兄の宿禰慧一編は「GLORIA」
http://ncode.syosetu.com/n8100h/
凛一の恋人、水川青弥編は「愛しき者へ…」
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10、
「…でさ、聞いてる?紫乃」
「あん?」
三度目…終わってこちらはぐったりだが、啓介はまだ続ける気なのか、俺の中に入れたまま学生時代の話が続く。
…若いってこういうもんなんだろうが、年寄りを少しは労わって欲しいものだ。大体俺は入れられるのは慧一以来なんだからさあ。
「…それで、黒木さんに出会って、俺はまたスポーツの面白さを味わったんだ」
「ああ、啓介はその黒木って奴に惚れたんだな」
「え~っ?どうしてわかるの?」
そんなに驚くな。中のものが動いてたまらなくなる。
それにそんなの誰だってわかるだろ。単純なおまえの顔を見てたら。
「…そう顔に書いてあった」
「紫乃には隠し事は出来ないね。それまで俺は女の子としか付き合ったことなくてさ。ほら、俺、顔良いし、ちょっと有名なジャンパーだったから、可愛い子がわんさか言い寄ってくるわけさ。こっちはジャンプ一筋で恋愛に夢中になる事もなかったけど、暇な時は普通にデートやらなにやらでさ、自分が男に興味あるなんて知らなかった。で、上京して横浜の聖学の入学式の時、サークル勧誘をしてた三年の黒木さんを見てひと目惚れしたの」
「…」
どっかで似たような話が…ま、俺と慧一だけど。
「初めて恋をしたっていうか…顔を見るだけでドキドキしたり、声掛けられたらあたふたしてさ。これが人を好きになるってことかって、思ったよ。俺が教師を目指したんだって、黒木さんが県の高校教師になったからなんだ。もし採用試験に合格したら、いつかどこかの高校で一緒になれるかもって…思った。単純だね」
「自分の将来を決め方なんてそんなもんさ。憧れや成り行きで決めるのは悪い事じゃない。それで、黒木さんとはどうなった?」
「黒木さんは大学を卒業してからも、ずっとサークルの指導をしてくれて、それで、俺の事もすごく可愛がってくれて…思い切って告白しようとしたんだ。でも告白する前に、黒木さんから婚約者がいるって…言われて…」
「…」
「俺の気持ちを察して、傷つかないように自分から言ってくれたんだと思う。見ようによっちゃ俺と黒木さんの友情は壊れずに済んだんだけど、俺は黒木さんと会う度辛くてさ…初めての失恋だね。そんで代わりに良い男がいないかな~ってウロウロしてたら、紫乃に会った」
「…は?」
ちょ、ちょっと待て。と、いう事は…
「紫乃ったら道端で倒れこんで、声かけたらべろんべろんで『けい、好きだ~』って言うんだもん。すげえ綺麗でかわいくて、たまらなくなった」
「ちょっと待ってくれ。もしかしたら…おまえ、男とするのは…俺が初めてなのか?」
「そうだよ」
「…」
力が抜けた。
百戦錬磨の俺が初めての奴に抱かれて、それで啼かされて居ると思うと、さすがに悔しい。つか、腹立たしいわ!
そういう俺の気持ちなんか知ったこともねえ啓介は「紫乃、大好き~。愛してる。ずっとしていたい~」などと減らず口を叩き、俺の身体を揺すぶり続けるのだ。それに反応する自分の身体も悔しいが。
結局解放されたのは三時も過ぎた頃で、裸のまま寝てしまった啓介に布団を着せ、隣りに寄り添うのが精一杯だった。
翌日、朝から露天風呂に引っ張り出されて「気持ち良い~。良い朝だね~」と何度も笑顔を見せる啓介を他所に、俺は風呂の隅っこであちこちの身体の痛みを癒すのに必死。
豪華の朝飯も、だるくてなかなか全部喉に入らない。
そんなことを知った風でもない啓介はいつもの天然だ。
「紫乃、どうしたの?この卵焼きダシが利いてて美味しいよ。もしかしたら疲れてる?どっか痛い?…そうか、昨日は初めてのパラだったから筋肉痛だよ、きっと」
「…」
おめえの所為に決まってんだろっ!何回抜けば気がするんだよ、この体力バかっ!
「パラも慣れたら無駄な筋肉を使わなくてすむから大丈夫だよ。荷物が重かったら、俺が紫乃の分も俺に任せていいからね」
「…よろしくお願いします」
わけのわからぬ敗北感…。なのに啓介を見ていると切なくなったり、嬉しくなったりしてしまう。
帰り道、パラグライダーのフライトルールを詳しく学びながら、次も行こうと約束する。
俺をマンションに送り届けた啓介は、「絶対だよ、紫乃。また一緒に飛ぼうね」と、言う。
「ああ、また誘ってくれ」
「じゃあ、明日学校で」
「さよなら…」
走り去る啓介の車を見送る。
差し込んでいた光を急に失ったみたいで、冷えた空気に身震いする。
ひとりは寂しい。慣れるしかないと、言い聞かせてきた。
俺だけじゃないんだと…
慣れれば孤独も楽し、自由は我が身に…と、鼓舞してきた。
ふたりでいる温かさは知っている。それを失う怖さも…
再びそれを味わい、離れていく悲しみに耐えられるほど、俺は強くないんだよ、啓介…
次のパラグライダーのフライトをする約束はしたものの、十月は学校行事が立て込んで、まともな休みも取れなかった。
実習生の啓介も同じで、中間試験結果の追試や補習など忙しない。それに一大イベントの体育祭が控えている。生徒主導とはいえ、実習生は生徒会に借り出されて、色々な演目に参加することになっている。
「あまり無理するなよ、千葉先生」
「大丈夫ですよ、紫乃先生。俺、体力だけは自信ありますからね」
それは知ってる。気になるのは…
「足は…痛んだりしないのか?」
周りに誰もいないのと見計らって、尋ねる。
「え?…しないよ。寒い冬は時々筋肉が縮んで突っ張ったりするけど、それ以外は大丈夫だから。紫乃、心配してくれてありがとう」
「…」
啓介のくれる笑顔が、近頃は切なくなって困る。
年を取ると感傷が敏感になるって本当だな。
それとも別れが近い所為かな…
体育祭は見事に快晴。
朝一番の準備体操から、啓介は我先にと先頭に立って張り切っている。
プログラムも順調に進み、昼前近く、なんだか保護者の一団が関係者のテントの近くでざわついている。近寄ってみると…貴賓席にあいつらがいた…
「あ、紫乃だ。慧、紫乃が来たよ」
「やあ、紫乃。ご苦労様」
…なにが優雅に「ご苦労様」だ。
確かにおまえらはうちの体育館と教会を建てた建築家だし、貴賓席にデンと居座ろうがおかしい話ではない。が、なんかもう、存在自体がむかつく。
俺のテリトリーに入り込むなって言っておいたはずだろう。
「ね、慧。紫乃は今、教育実習生を指導しているんだよ」
「へえ~」
「その実習生がさ…良い男なんだ。ね、紫乃?」
「別に…普通の大学生だよ」
「是非紹介して欲しいもんだな」
慧一の言葉に血の気が引く思い。
本当に…ロクなことにはならないぞ…
俺はくるっと身を翻して、あわててあいつらから逃げ去った。
逃げたところに啓介の姿が見えた。
「紫乃先生、探してたよ。次のプログラムは出番だから準備してくれって」
「わ、わかった」
「なにかあったの?」
「何にもねえよ」
「あれ?…貴賓席にいる人、宿禰さんじゃない」
「…」
「だからなんか周りがざわついてたんだ。宿禰さんの隣りの人…もしかして、あれが慧一さん?」
もしかしなくてもそうだ。
「すごい…かっこいい。想像してたより遥かにだよ。うわ~ふたり並んでいると、迫力~。あそこだけ別次元だね。神話で言う英雄と女神みたい…」
それを言うなら魔王とメフィストだろう。
「そうだ!挨拶に行ってこよう~と」
「バカ、あんなのに近づくなよ。マジでロクな目には合わない」
「なんで?紫乃の家族みたいなもんだろ?」
「…俺、そんなこと言った?」
「この間の夜、俺にしがみつきながら言ってた。『慧一と凛一はロクでもねえけど、俺の大切な家族なんだよな~』って。あれ、寝言?」
「…」
だから、言ってるじゃねえか。
ロクなもんじゃねええ~
午後の応援団のプログラムにハプニングが起こった。
生徒会役員に押し出され、凛一は昔ここで見せた剣舞を見事に舞った。
その姿に魅了された観客と、同じく見惚れている隣りの啓介を眺めつつ、あいつらが居る限り、俺の心休まる時など、一生来ないんじゃないかと、恨めしく思った。




