ドリームコントロール
久し振りに夢日記に書きたい夢を見た。俺の故郷・猪町の昔は、北の猪町小学校校区と南の歌ヶ浦小学校校区に分かれていて、前者は五つの部落から構成されていた。上から深江・御堂・北猪町・口ノ里・南猪町だ。俺の所属は御堂で、学校行事は全てこの部落を単位として行われる。
深江部落は隣街・江迎町と接する。北松浦半島を貫く国鉄・松浦線の江迎駅を利用するときは、猪町町にただ一本の県道から行かず深江の裏道から線路を跨いで駅舎に入る。
炭鉱盛んなりし頃、石炭の積出港・大加勢まで引き込み線が伸びていた名残で、猪町川が流れ込む江迎湾の海水と真水の端境に龍神橋と並んで鉄橋の橋脚が残っていた。
子供の頃は江迎駅から伸びる廃線を歩いて遊んだ。沿線の製材所のおが屑を掘ってカブトムシを獲り、畑に忍んでスイカを盗んだ。
猪町には幹線が一本しかない。県道18号線だ。国道は通ってない。県道は口の里だけ避けて、深江・御堂・北猪町・南猪町を貫く。
俺は夢の中で北猪町の県道をとぼとぼ歩いていた。何故だかこの部落が巨峰の名産地になっていて、それぞれの葡萄園には良い具合に熟した葡萄がたわわに実っている。
本当に旨そうで食いたくて食いたくで堪らずじっと眺めていたら…、
驚き!
粒がどんどん大きくなってバスケットボール大にもなった。益々食いたくなった俺だが、理性に呪縛されて眼前にある巨峰に全く手を付けない。
『夢界の創造主』でも述べたが、俺にはそれが夢だと分かっている筈なのに、盗むという行為を良心が許さない。片っ端から食い捲って持ち主に袋叩きにされてたとえ殺されたとしても、所詮夢なんだから目が覚めればそれで終わりと分かっているのに何故か善人なのだ。
ドリームコントロールが全く出来ない。エルム街の悪夢じゃないんだから、フレディに夢で殺されて現実でも死んでしまうという訳ではないのに。
葡萄を食うのを諦めた俺は、またとぼとぼと県道を歩いて、猪町校区を外れて歌ヶ浦校区の船の村(お袋の実家がある)に至る。だが、ここで行き止まりだ。そこは断崖、俺は茂みから下を覗く。どうも数日前にお客さんと話した足摺岬が脳に残っていたようだ。