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俺の夢日記  作者: クスクリ
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親父はゾンビ

 今日の夢に久しぶりに2011年1月12日に永眠した親父が出てきた。俺は親父は死んだとばかり思っていたが生きていたようだ。末期の肺癌だというのにしぶとい。まだ俺の心配をしてくれている。


 俺は会社に最後通牒を突き付けられた。中々辞めない高額所得者の俺に業を煮やしたようだ。親父とMB自動車販売到津店長・松田の話が聞こえてきた。


「今度人事異動があります。MB自動車販売・筑豊店への異動です」

「小倉から遠いな。田川に住んどる者を遣るんやろ?」

「今うちの会社に田川に住んでいる者は居ません。小倉から通勤させれば部品便にも使えて会社には好都合だそうです」

 …まさか俺じゃないよな。4月に異動したばかりで結構実績も上げとるしな。そいに、この前リストラ候補に上がったばって頑張って試験凌いだしな…


 二人の話が終わったようだ。

「親父、誰が異動になるん?」

「お前やそうや」


 会社はあからさまに俺に牙を剥いてきた。この前異動させてまだ懲りずに筑豊営業所に行けとは。筑豊に俺の顧客は1人もいない。俺は干上がってしまう。嫌なら辞めろということか。もう抵抗する気力は俺には残ってない。

 俺はがっくりと項垂れて覚悟を決める。

「こうまでされたらもう辞めるしかないわ」


 親父は俺の決意を理解してくれて、「そうか仕方ないな」と言ってくれた。豊前屋を辞めるときは翻意させに仕事を休んで小倉まで飛んで来てくれた親父が。

 とは言ったものの不安に圧し潰される。この歳で果たして再就職できるのか。なぜかその場に居る弟二人に俺は賛同を求める。

「見ての通りじゃ。辞めるしかなかろうもん」

 弟たちは何も言わない。


 ちゃん(息子)にもちゃんと伝えた。あとはクソクリ(嫁)だ。

 ちゃんに、「クソクリはどこに居るんや?」

「買い物に行ったごたるよ」

 仕方ない、クソクリには事後報告や。


「ばって親父、会社がそこまで望むなら辞めてはやるばってんこんままじゃ気が済まん」

「社員でなくなったら一般人じゃ。もう会社に俺の生殺与奪権はねぇ。ならやることは一つ、役員に報復じゃ。殺して下さいと俺に哀願するほどの恐怖味あわせてやる」

 俺は不気味に笑う。


「今から会社に行くんか?」と親父。

「ああ、行って役員名簿手に入れる」

 俺は凶悪な顔付きで歩き出す。佐世保市の猪町から小倉の会社に向けて。


 …夢ちゃほんと支離滅裂じゃ。車で行けばよかろうもん。250キロも義足で歩けるか。そいけん夢ちすぐ分かる。まだ俺は当分B界(小説『夢界の創造主』を読んで貰えば分かる)へは行けねぇようだ。爺さん(小説『夢界の創造主』に出てくるバーチャル仙人)、ご主人様ば放っておくなちゃなぁ…


 親父と並んで歩く。俺の足は大丈夫のようだ。杖もついていない。今親父と二人で歩いているこの道は、猪町の俺の実家から百メートルほどしか離れていない、叔父の住む親父の本家に至る道のようだが、いったい何しに行くんだ?目的地は小倉ではないのか?…まぁ夢のこと、気にしてもしょうがない。


 …ちょっと待てよ。今日は1月3日、確か親父が死んだんは12日よな…

 名簿を何としても手に入れるという俺を手助けするために意気揚々と歩く親父を横目に見て、「申し訳ねぇが親父はあと数日で肺癌で死ぬごとなっとるんやけど…」

「馬鹿なこつ言うな。俺はこん通りぴんぴんしとるわ。医者が癌な小そうなっとるち言うてくれたわ」

「そうや?」と半信半疑の俺だが、真冬だというのになぜか素っ裸の親父にはどす黒い大きな血管が身体中に浮き出ていた。

 目が覚めた俺は、そうか、親父はやっぱりゾンビやったんか!

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