表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/41

09 物件


 ベッドでまどろんでいると何者かの気配を感じる。


 さすがに慣れてきたもので気配に向かって毛布をがばっと広げ、くるんで抱き上げようとしたらなぜか想定より抱き心地が良すぎる。


 おそるおそる毛布をめくると、真っ赤になったリノアさんと目があった。


 頭を床に擦り付けながらひたすら謝った。


 無言で小部屋を出て行くリノアさん。


 物件探しに行く気まんまんだったのに、今はこの部屋から出たくない気持ちでいっぱいです。



 身支度を整え勢いよく扉を開け朝食不要ですと声をかけて逃げるように部屋から出た。


 まあ実際逃げだしたわけですが。


 冒険者ギルドに討伐報酬を受け取りに行ったら、午後にまた来てくださいと言われる。



 今日は何もかも上手くいかない。


 物件を探して不動産屋を巡る。


 良い物件を見つけられないままうろうろして気付けばお昼過ぎ。


 足取り重くギルドへ向かう。



 ジエルが手招きしてきたので応接室へ。


 まずは昨日の自分の態度を詫びる。


 急だったとはいえ私らのやり方もまずかったと深々と頭を下げるジエルだが、顔を上げるとにやけている。


「あんだけ怒ったってことは今度は本気なんだな」


「俺はいつだって本気なんだがなぜか相手に伝わらない」


「いつものにやけ面を見せなきゃイケるって」


「残念ながらとっくに見られてる」


 顔を見合わせて笑うとあの頃が思い出されて、ここにいないもうひとりのことが頭に浮かんだ。



 盗賊討伐の報奨金は予想以上の金額。


 大物だったのかと聞くと、察しろと顔を背けたジエル。


 ギルドと衛兵隊の双方のメンツとか、ジエルも相当ストレスが溜まっていそうだ。


 毒針使いの仲間はテイマーだそうだが使役している魔物は主に何だと尋ねたが、無言でこちらをにらむのみ。


 これ以上つつくと爆発しそうなので、話を変えて物件について聞くとニンマリ笑って書類を差し出してきた。


 図面も何もない文字だけの書類には、物件の来歴が簡潔に書かれていた。



 とある老貴族、表舞台を去って隠居生活を始めたいが現役時代に周囲の恨みを買いすぎた。


 疑心暗鬼が過ぎて護衛も警備兵も信用出来なくなり、ひとりでも安全に暮らせる屋敷を設計させた。


 注文主のダメ出し続きで設計も工事も遅れて、やっと完成した頃には老貴族は病の床で引っ越す前に亡くなった。


 多くの貴族たち、建築業者、不動産屋など各方面から恨みを買ったその屋敷は呪われた曰く付きの物件として放置されているという。



「大体理解できたが呪いは勘弁な」と言うと、

「とりあえず一見の価値ありだぜ」と引っ張り出された。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ