07 詰め所
詰め所に行くと、偉そうな男がにたにた笑いながら出迎える。
俺とローブをかぶった女の二人だけなのを見た副長と呼ばれるその男。
「ひとり足らんようだが」と不満そうだ。
「体調を崩して宿で休ませてます」
「大事な身体だから養生せんとな」とにたつく副長様。
詳しい話を聞きたいので自分の屋敷に来いと言い出す。
「謹んでお断りします」
俺に逆らうのかと怒鳴り散らすのがいいかげん鬱陶しいので、のんきしている後ろの女のローブをひっぺがした。
ジエルを見て驚いた副長様だが、態度は変わらず。
「ギルドがどうした、そもそも盗賊を放置してたお前らにとやかく言われる筋合いは無い」
貴族の依頼であるとか言って、俺でも知ってるようなお偉いさん連中の名前をつらつら喋り出した。
「聞いたかじいさん」ジエルが叫ぶと、入り口から入ってきたのは年配の大男。
「衛兵長がどうして」
「おう、部隊にウジが湧いたみたいで臭くてな、掃除の頃合いだ」
にらむ衛兵長を見て、副長様が暴れ出す。
切りかかってきた副長の両手首と股間から血飛沫。
両手首は衛兵長、股間は俺。
「ちくしょう、私の魔法には狭すぎんだよなこの部屋」
「尋問官の楽しみを奪ってはいかんな」と俺に苦笑を見せる衛兵長。
「申し訳ありません」衛兵長に礼。
ジエルと衛兵長のじいさんに話を聞く。
街へと旅立って連絡が取れなくなった家族・知人の捜索依頼の増加
奴隷商人の裏取り引き多数
一部の衛兵たちの不審な行動
実行犯だけでなく組織ごと一掃したいと、信頼のおける人員のみで極秘に進められていた捜査。
「要は囮にされたということか」
無言で頭を下げる二人。
さっきまで、一緒にパーティーを組んでいた頃の気安さで接していたジエルへの不信感。
「貸しだからな」
無性に腹が立って、引き止めるジエルを無視して詰め所を出る。
商店街へと歩いているうちに少しずつ頭が冷めていく。
俺が甘えすぎていたのか。
お気楽ソロ冒険者がたった二人の保護対象を得ただけでがちがちの保護者気取りになるくらいだ。
街を守る立場のジエルたちの責任の重さは俺なんかでは測れない。
そもそも、優先すべきはあの親子の安全。
わだかまりを残したせいで後悔する羽目になるくらいなら、あの二人に協力させ続けるために俺の軽い頭で良いならいくらだって下げる。
明日ギルドに謝りに行こう。
それにしても、こういうでっかい面倒ごとが起こるとギルドに余計な仕事が増えてジエルも思うように動けないだろう。
やはり物件探しは自分でも動いた方が良さそうだ。




