06 ジエル
朝、身体が妙に重い。
目を開けると俺の体の上でにこにこしているアイネちゃんと目が合った。
素早く毛布で梱包して、大部屋で鏡台に向かっているリノアさんへと返品。
リノアさんはいつもきれいだが、薄化粧姿はさらに綺麗。
首飾りによる変身状態でも慣れるとここまで綺麗に化粧出来るのだなと感心。
出かける支度をしている俺に「朝食は」と聞くリノアさん。
「ギルドに顔を出してきます」
毛布に巻かれてころころ転がっているアイネちゃんに「おみやげ何が良い」と聞くと「ご本」との元気なお返事。
「夕方には戻ります」と言って部屋を出る。
冒険者ギルドに到着し、リノアさんの署名を確認してから保険金の受け取り証明書を提出。
副責任者のジエルへの面会を申請すると、すぐに部屋に案内される。
書類の山に囲まれていたが相変わらず元気そうだ。
「紙の山を全部魔法で燃やしてやりてぇ」と物騒なことを言っているが、無視して近況報告。
リノアさんたちの実情を聞いたら口数が少なくなった。
もちろん秘密にすべきことは言わない。
リノアさんの許可が無ければ、たとえこいつにでも話す事はできない。
毒針使いのくだりには興奮してもらえたようだ。
「そういう小細工してくる初見殺しの陰険野郎は苦手だぜ」
「ギルドに討伐依頼は」
「来てたっちゃ来てたけど、なんせ目撃者が少ねーし被害者のお残しも滅多に見つかんねーし」
「情報が少なすぎる」
「悪い、それに関しちゃ申し開きでねぇ」
「あいつの仲間は」
「分かってんのはテイマーひとりだけ、他にもいるのかは分かんね」
「しばらくあの宿で暮らすとなると、金がいくらあっても足りない」
「せめて生け捕りだったらな」
「ごめん、二人を守りながらだと無理だった」
「いや、戦闘職じゃねーのにいっつも無茶させてわりぃ」
「あとひとつだけ、三人が安全に暮らせる家に心当たりは無いか」
「おう、全力で探すぜ、せっかくあんたが身を固める決心してくれたんだしな」
「いや、娘さんが懐いちゃってな、毒針使いとの戦いを見せて怖がらせちゃったし」
「いんじゃねーの、後で娘の方とくっついても」
「リノアさんに泣かれちゃうよ」
「相手の名前を覚えないことじゃ定評あるあんたが名前呼びってことだろ」
「そういうんじゃないって」
結局大した情報も無いまま、ジエルを連れて詰め所へ