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05 宿屋


 夜明け前に街に着けた。


 門番の衛兵に旅の途中で怪しい男に襲われたと伝える。


 事情聴取で詰め所に連れて行かれたが、夜通し馬車を走らせたので女たちを休ませてくれと頼む。



 詰め所の隅で毛布をまとって身を寄せ合う母娘。


 門番が偉そうな男を呼んできたので事情を説明する。



 村から街への徒歩の旅の途中で馬車の男に襲われた

 毒針使いの男は倒したけど仲間を呼ぼうとしたのでとどめを刺して馬車で逃げてきた



 偉そうな男はリノアさんに話しかけて俺の話を確認、無言でうなずくリノアさんを舐めまわすように見てから詰め所を出て行った。


 リノアさんの側に行くと俺の手を握りしめてきた。


 毛布に包まれたアイネちゃんの寝息を確認、手を繋いだままリノアさんに寄り添う。


 昨日はみんなで楽しく手を繋げていたのにと考えていたら怒りが湧いてきたが、リノアさんのぬくもりが落ち着かせてくれた。


 しばらくそのままでいると若い衛兵が書類を持ってきた。


 聴取と書類の内容に齟齬がないことを確認し署名してから、アイネちゃんを起こさないようにそっと背負う。


 これで解放するが街を出る時は必ずこの詰め所に来るように、と言われた。


 盗賊の仲間について尋ねると、討伐報酬があるかもしれないので三日後に冒険者ギルドに行って詳しいことはその時に聞け、と詰め所を追い出された。


 乗ってきた馬車は置いていけと言われたので、いつも俺が使っている街中央の安宿ではなく近くにある高級な宿屋に向かった。



 勝手に泊まる宿を決めてすみませんとリノアさんに謝ってから宿屋へ。


 受け付けで昨日の出来事を話し、怖い目に遭ったから一番安全な部屋を頼むと急かすと一番上の階の部屋を勧められたので三泊分を前払いした。


 案内された十分な広さの部屋にはベッドがふたつ、独立した小部屋にもうひとつ。


 広い部屋のベッドにアイネちゃんを寝かせる。


 簡単な調理台と冷蔵魔法付与の食材保管庫、驚いたことに浴室まであり広めの浴槽といつでもお湯が出せる魔導具付き。


 さすがにお高いだけのことはある。


 ベッドに腰掛けたリノアさんが、寝ているアイネちゃんの髪を撫でながら小声で話し掛けてきた。


「ありがとうございます。 これまでの分も返せていないのにまた恩が増えてしまいました」


 何か思い悩むような態度のリノアさんの心配ごとを増やしたくないけど気になる点を忠告。


「あの盗賊の仲間が気になるので、しばらくはできるだけ外出を控えてください」

「この部屋にも宿の人以外は極力入れないように」

「特に先ほど詰め所で見た衛兵たちは要注意で」


「そこまで警戒を」眉をひそめるリノアさん。


「根拠は俺の勘だけですが、あの御者を盗賊と見破ったのも勘なので」


 リノアさんが「信じます」と言ってくれたのがうれしい。


「アイネちゃんにしばらく街を案内できないのは残念ですが」


「子どもじゃないから我慢できる」と起きてたアイネちゃん。


「俺は子どもだからお腹が空いたのを我慢できそうにない」


 ほっぺたを膨らませたアイネちゃんのほっぺを指で押そうとしたら毛布の奥へと潜られた。


 その様子を見ていたリノアさんは「お食事を部屋まで持ってきてもらえるかしら」と思案顔。


 宿の人に聞いてきますと言って部屋を出る。



 受け付けに尋ねるとメニューを見せくれた。


 部屋にも同じものがあるので備え付けの紙に欲しいものを書いてここに持ってきてください。


 食事をとりたい時間の指定もできますが早朝深夜はNG、ほかにも欲しいものがあればお気軽に。


 入室手続きを急かしたせいで二度手間になって申し訳ないと受け付けに謝罪。


 一階に落ち着いた雰囲気のレストランもあるそうだが、滞在中の食事は全て部屋でとお願いする。



 部屋に戻ってみんなでメニューを確認、それぞれに食べたいものを選んで受け付けへ行くと言伝を預かっていますと書面を渡される。


『詮議のため明日正午に全員詰め所まで来るように』


 絶対に二人を行かせたくないので明日は俺だけ行くことにする。


 心配そうな二人に助っ人を呼ぶことを説明する。



 俺と相棒ともう一人で若い頃にパーティーを組んで冒険していた。


 名うての魔法使いだったそいつは結婚して冒険者を辞めた。


 今はこの街の冒険者ギルドで副責任者をしている。


「すごい人なんですね」と感心した様子のリノアさん。


「街の衛兵長にも顔が効くのでうってつけの助っ人です」


「強い人?」とアイネちゃん。


「昔この街が空を飛ぶでっかい魔物に襲われたとき、俺たちは何もできなかったけどそいつが雷魔法で飛んでる魔物を倒したんだ」


「すごーい」アイネちゃん大興奮。


「普段はかっこいいお姉さんだけど怒るとギルドマスターより怖いよ」



 ノックの音が聞こえて料理が運び込まれる。


「お母さんのと同じくらい美味しい」


 頬張るアイネちゃんと笑顔のリノアさん。



 その後、豪華な夕食も済んでお風呂の時間。


 三人で一緒に入ろうと駄々をこねるアイネちゃんを慌てて抱き上げてお風呂に向かうリノアさん。



 小部屋の扉を閉めてベッドに横になっていたらいつの間にか眠ってしまった。


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