36 リノア
アリシエラが俺の顔面に飛ばしまくったツバを拭いながら自室への道をとぼとぼ歩む。
部屋に着いたらベッドへ倒れ込んだ。
アリシエラの話の内容を受け止めて落ち込んでいるとノックの音が聞こえた。
無視していたら誰か入ってきた。
うつ伏せの俺の頭を撫でる優しい感触は間違いなくリノアさん。
「俺、どうしたら良いか分からないんです」
「今までひとりで生きてきたからみんながいなくなるのが怖くて」
「私はずっと一緒にいますよ」
「ありがとう、でもみんなは」
「みんなが大好きなんですよね、あんなに良い娘ばかりだもの」
「失いたくない」
「私はあなたと出会えていっぱい幸せをもらえました」
「あの娘たちもきっと素敵な人と出会えますよ」
「俺はもういらないんだ」
「それを決めるのはあの娘たちなの」
「助けてって言われたら今までみたいに助けてあげて」
「一緒に冒険したいって言われたら冒険するの」
「もし旅に出たいって言われたら、笑顔で送り出してあげて」
「素敵な人を見つけてきたら、ふたりを抱きしめて祝福してあげるの」
「俺にできるかな」
「今、私とあなたが感じている幸せを、未来のあの娘たちが見つける手助けをしましょう」
「もしあの娘たちがずっと俺と一緒にいたいって言ったら」
「幸せにしてあげて」
「リノアさんはそれで構わないの」
「構わないわ、みんなよりもっと構ってもらえるようがんばるから」
「リノアさんは強いです」
「みんなのおかあさんですから」
「あした、みんなに話してみます」
「じゃあそれまで独り占めね」
あとがき
リヴァイスという世界は、ひとりの少年がプレイしている仮想現実ゲームです。
彼は長い時間この世界を旅するうちに『鏡の賢者』と呼ばれる存在になりました。
お供のメイドさんは『伝説のメイド』と呼ばれております。
ここで暮らしている人々はいわゆるAIですが、それなりに大変なこの世界を楽しく生きているみたいです。
リヴァイスの物語は、そういう人々のあれやこれやを短編として紹介するものとなりそうです。
iPadのメモ帳につらつら溜め込んでいたショートストーリーや小ネタをひとつの世界にまとめようとしたら、こういう設定になりました。
整合性や何やらいろいろアレですが、お話しがまとまり次第投稿したいと思っております。
楽しんでいただけたら幸いです。